2010年04月22日
ハイ・フィデリティ
我国のオーディオ界では創生期から今日に至るまでHi-Fiについていろいろと論じられてきました。 それはいつもHi-Fiのあるべき形とはについての言及に留まり、本質について書かれたことは一度もなかったと思います。 いつもHi-Fiの姿、形は明らかにするけれど、誰も本質を覆っているカバーを取り去って白日のもとにすることはありませんでした。 まるで眠っているライオンを棒で突いて反応を伺うようなもので、目覚め、吠え、走るというライオン本来の姿を恐れて見ようとはしなかったのです。 時々それに言及しようとすると、その本質的なことに近づくにつれ、自然にブレーキがかかり論点は曖昧となり、過去の事例や文献が持ち出され、解答は読み手側に委ねられる、ということになるのです。 その結果、読み手側は個人の見識にもとづいてHi-Fiの何たるかを解釈しなければなりません。
そして必然的に混乱が生じます。 何しろHi-Fiに対する定義が人それぞれで、誰しも自分の考えが一番正しいと思っているのですから。 本格的なオーディオ創生期からすでに40年以上が経っているのに、このような有様です。 その原因はひとえに我国のオーディオ界がHi-Fiというものに統一的な定義を確立出来なかったからと言えます。 しかしながらそれも無理からぬことでもありました。 なぜなら我国にはHi-Fiオーディオ、などというものが、もともと存在しなかったからです。 今日に到るまでオーディオファンやマニアの方々が言及してきたオーディオHi-Fiなるものは、本来の意味とは違い、ただのリニア再生の追求でしかなく、リニア(電気的追従性)とは本来のHi-Fi分野では目的を達成するための手段にすぎません。 あくまで音楽そのものを高度な忠実性を持って再現するために必要な道具なのです。 それを第一の重要なものと思い込んだか、みんなで示し合って暗黙の了解ゴトにしまったのです。
ここまで書けば、すでにHi-Fiライオンの正体がだんだん見えてきたはずです。 Hi-Fiライオンの実体は、ハイフィデリティ(高忠実度再生)であり、グッドリプロダクション(心地良い再生音)そのものです。 我国のオーディオ界がこの二つの本質について決定的なことを言わなかったのは、これについて言及し続けると論理的に導かれた結論自体、我国のHi-Fiがその本質においてハイフィデリティではなく、電気的追従性を重視したリニア再生であることを証明してしまうからです。 しかしながら、オーディオ界に新たに参入したデジタルCDによってライオンは目覚めつつあります。 CDの出現は、それまで我国が行ってきたステレオ・サウンドリニア再生を完全に否定してしまいました。 アナログ・オーディオHi-Fiは今まで最大の武器であったリニア再生をCDに奪われてしまったのです。 リニアであることに敗北したアナログ・オーディオは今度は何を武器にデジタルに立ち向かうか。 アナログ独特の味という曖昧なものでは、残念なことにあまり強力な説得力はありません。
アナログに味があるなら、CDにも独特の味があり、味という点では甘いか、しょっぱいかの差異でしかないからです。 アナログレコードの味わいと言われると、今までリニア一本やりできておいてなにを今更、少し虫が良すぎるような気がするのです。 もちろんCD側にも悩みはあります。 CDの音質が向上するにつれ音楽が生きてこないという現象が起こりがちで、特にレコード時代の音源を新しくマスタリングすればするほど音自体クリアーにはなりますが、何かしら大切な物が欠落していることに気付くのです。 CDもまた、リニアティの罠に落ちたと言えるかもしれません。 リニアティという最大の武器を手放したアナログ・オーディオとリニアティの罠に落ちたCDが今後目指すべきものは何か。 それはハイフィデリティであり、グッドリプロダクションであると思います。 なぜなら、今日リニアティだけでは解決できないところまで来ているからで、袋小路に陥ったアナログ・オーディオとCDは何としてもハイフィデリティとグッドリプロダクションの力が必要になってくるからです。 ライオンはすでに目覚めつつあります。それはライオン自らが望んだことではなく、時代の要請により目覚めるのです。 つづく 以上T氏
ここまで書けば、すでにHi-Fiライオンの正体がだんだん見えてきたはずです。 Hi-Fiライオンの実体は、ハイフィデリティ(高忠実度再生)であり、グッドリプロダクション(心地良い再生音)そのものです。 我国のオーディオ界がこの二つの本質について決定的なことを言わなかったのは、これについて言及し続けると論理的に導かれた結論自体、我国のHi-Fiがその本質においてハイフィデリティではなく、電気的追従性を重視したリニア再生であることを証明してしまうからです。 しかしながら、オーディオ界に新たに参入したデジタルCDによってライオンは目覚めつつあります。 CDの出現は、それまで我国が行ってきたステレオ・サウンドリニア再生を完全に否定してしまいました。 アナログ・オーディオHi-Fiは今まで最大の武器であったリニア再生をCDに奪われてしまったのです。 リニアであることに敗北したアナログ・オーディオは今度は何を武器にデジタルに立ち向かうか。 アナログ独特の味という曖昧なものでは、残念なことにあまり強力な説得力はありません。