2010年04月23日

ハイ・フィデリティ 2

ハイフィデリティという思想はいつ頃から在ったのでしょう。 戦前の78回転電気式蓄音機の時代からすでに始まっており、本格的に言われ始めたのは1948年LPレコード発売時の頃であり、50年代半ばには次第にHi-Fiという言葉にとって代わるようになりました。 しかし、ハイフィデリティがHi-Fiと表記されるにあたってハイフィデリティと書くのが長すぎて面倒だからHi-Fiにしたのではありません。 IMG_0813この時代に行なわれた数々の実験的な試みによりハイフィデリティ(高忠実度再生)の何たるかが既に定義されており、その定義に則ってさらに高音質化をはかったのがHi-Fiであり、Hi-Fiとはハイフィデリティが進化したものです。 当時のオーディオカタログには自社製品のアピールに堂々とHi-Fiというオーディオ用語が表記されているのであり、オーディオマニアにとってHi-Fiとはスタイリッシュで最先端をいくものでした。 本質的にはHi-Fiもハイフィデリティも同じであり、双方ともその再生のモットーは忠実でしたし、音というものが音楽から乖離するものではなかったのです。 変質が始まったのは、モノーラルレコードがステレオレコードに移行する頃からであり、ステレオレコードが主流になってくるにつれ、音場による音遊びが流行り始め、次第にモノーラル時代のハイフィデリティの特長であった音だけでなく音楽にも忠実という考え方は古い時代のものとなっていきます。 それが、そのまま我国のオーディオ界に引き継がれて行くことになります。 その原因として、オーディオにおけるハイフィデリティの宗主国であった英国の国力低下による経済力減衰に加えて、アメリカ合衆国のオーディオ離れ、ベトナム戦争の影響が挙げられます。 この様な状況にも屈せず1960年代まで様々なステレオオーディオ機器や優れたレコードを作り続けた英国の底力、その影にはポップス、ロック界の数々のスター達の努力もあったのです。 中でもビートルズは最大の功労者で英国レコード界に多大な収益をもたらしたのですが、ビートルズの解散と共に英国のオーディオ界は急速に力を失い、1970年代に入ると目ぼしいオーディオ機器は消えていきます。 対するアメリカは複雑な様相を呈しており、混乱期を迎えて、1970年代に入ると我国へのアメリカ製品の輸入が活発となります。 思うに日本への大々的進出はアメリカのオーディオ界を多分に助けたのではないでしょうか。 例えばJBLのモータースピーカーやマークレビンソンのアンプ等、当時100万円もするプリアンプを買える国が世界中でどこにあったかを考えればわかると思います。 しかしこれらの製品はハイフィデリティやHi-Fiやグットリプロダクションとは無縁のものであり、リニア的再生音の追求に重きを置いたリニア指向の怪物だったのです。 音が全てを語ると言うのがこの時代のアメリカ製品であり、もはやハイフィデリティは過去のものに、この時代以後、我国のオーディオマニアはリニア再生の追求に財力と労力を費やして邁進していきます。 もちろん、これは過去のことであり、これ以上語っても何ら意味のないことです。 すでに一部のオーディオマニアはその愚かさに気付きはじめ、ライオンは目覚めつつあります。 IMG_0860ハイフィデリティがどのように考案され、実現されていったかを知ることが必要です。 その過程に起こった様々な事柄の真の意味を知ることこそ未来におけるアナログオーディオのカギとなるからです。 それを知るには過去に遡る必要があり、天体望遠鏡で遠くの銀河を眺めるに似て恐ろしく遠くおぼろげですが、そこまでいかないとハイフィデリティの本質を求めることは出来ません。 このことを今まで行かずにいたのが、こん日のHi-Fiの統一的な思想の欠落の原因であり、歴史を全く無視した結果発生したことなのです。 何人もの先祖があって今が在るのに、オーディオは全く先祖のことを考えずに今を説くというのも道理に合いません。 それではライオンの言葉をたどって過去へ、まずは電蓄の時代から探っていくことにします。 つづく 
以上T氏


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