2010年05月01日
ハイ・フィデリティの源流を探る
1948年米国コロムビア社よりLPレコードが発売されたことは、レコードファンにとっては大きな福音でしたが、オーディオ機器製作側となると数多くの難問をクリアーしなければなりませんでした。 特にカートリッジやフォノモーターはLPの再生にあたりSP時代のものとは異なった工夫が必要で、LP及びSPの再生も同時に行なわねばなりませんでした。 LPが発売されたからと言っても、英国などでは1955年あたりまでは、まだまだSPが主流であり、どちらも良質な再生が不可欠でした。 レコードプレイヤーやその他の再生機器も再生音的に整合性を持たなければなりません。 その目安としてハイフィデリティという言葉が用いられることになったのです。 SPであれLPであれハイフィデリティという再生における中心軸的な観念が存在し、並び立つことが出来たのです。 事実この時代に製造された円熟期SPの音質の素晴らしさは特筆すべきで、なかにはLPを凌駕するものさえありました。 我国ではこの時代ナニが起きていたのでしょうか? 残念ながら、オーディオの歴史認識はこの時代の事がすっぽり抜け落ちており、初めてLPレコードが世に出たという革新的な出来事があったにもかかわらず、我が国にはどの様な機器が存在し、どの様な再生が行われていたのかほとんど記録にありませんし、言及もされていません。 それゆえに先祖知らずのHi-Fiステレオサウンド化を招き、結局大枚を叩いてオーディオ機器を購入しても満足した音を出すことが出来なかった、というのが我が国の実情だったのではないでしょうか。
LP誕生時代のオーディオの再生音がどのようなものであったか知ることは、有意義であり本質を見極めることになります。 これから一つのオーディオ機器を用いて再生を行った結果を記述して行くことにしましょう。
「オートチェンジャープレイヤーの考案」
我国オーディオ界では、オートチェンジャープレイヤーは安物で、マニアルプレイヤーこそHi-Fiステレオサウンドの王道とされてきましたが、私は違うように思います。 1960年代頃までの好く出来たオートチェンジャーであれば、通常のHi-Fiステレオサウンドにも充分対応できたはずです。 この時代、LPレコードの最も良い時代でもあり、そのような時代に発売されたことを考えれば、その音質がマニュアルプレイヤーに決して劣るとは思えません。 例えばチェンジャー機能を持つレコードプレイヤーが1970年代もなお、本家の英国でBSRやガラード社により発売していたことから理解できます。 音質的にマニュアルプレイヤーに劣っていれば決して発売され続けることはなかったはずです。 欧米のレコードファンはそれなりの良さを知っていたのでしょう。 しかしなぜ、我国のオーディオファンはオートチェンジャーをマニュアルプレイヤーと比べて一段落ちる性能と思ってしまったのか? 製作者側の思惑で思い込まされていたのかもしれません。 古いオートチェンジャープレイヤーをレストアしてみるとわかりますが、マニュアルプレイヤーより圧倒的に部品数が多く、精度も高くないとちゃんと機能しません。 また製造会社にしてみれば、相当な設備投資と広いマーケットが必要となります。 つまり米国市場をターゲットに含まない限り採算が合わなかったと考えられます。 メイド・イン・ジャパンが蔑みの対象だった当時、我国の製品ではそこまでの世界市場を確保することは難しかったために、オートチェンジャーを大量生産に踏み切ることはどこのメーカーもできなかったのでしょう。 音の良いものは余程のノウハウが無いと無理で、チープな物は簡単に作れたのですが、安物然とした再生音しか出すことができません。 我国ではそのような品でしか無く、オーディオファンとしてはマニアルプレイヤーへ到る初歩的な価値しかありませんでした。

もうひとつ欧米と我国のライフスタイルの違いが上げられます。 我国のHi-Fiステレオは個人のものであり、マイ・サウンドを構築するのが、基本スタイルです。 欧米のオーディオは一般に家族の共有財産であり、個室ではなくリビング等に設置されることが多く、半公共的で、再生におけるハイフィデリティも家族や友人達と共に楽しめるものでした。 この様な場所で用いられるには、オートチェンジャー機能を持つレコードプレイヤーは大変役に立ったに違いありません。 ラジオと同様に、レコード音楽を家族全員がそれぞれに楽しむ。 ホームオーディオは、音楽を楽しむためのオーディオでした。 彼らが、音楽を楽しむためのコンシューマーユース機器と音を作り出すプロフェッショナルユース機器をはっきり分けたのは、プロユース機器をそのままの形でコンシューマーユースに用いることは許し難かったからです。この事柄を考えてみると、我国のオーディオ界がなぜプロフェッショナルユース機器の参入を許してしまったか見えてきます。 我国ではホームオーディオと言うものが結局定着せず、ホームオーディオはラジオからテレビジョンに推移し、結局オーディオというものが個室に閉じこもったHi-Fiステレオサウンドに集中することになったのです。 こうなるとオートチェンジャープレイヤーは無用であり、何ら価値のない二級品として取り扱われます。 私たちは、この時代(1945〜60年)のオートチェンジャーや小出力のアンプリファイアー、家具としてのデザインのスピーカーで、決して会話の邪魔にならず、良質な再生をしてくれる製品たちに、フルレストアを施しています。 私たちのオフィスでは、その小さな装置たちの再生音が何たるかを聴くことができるようになりました。 たしかにこの再生音には大いに考えさせられるものがあります。 以上T氏

オートチェンジャーをレストアして,初期性能にまで戻して出てきた再生音にはT氏のみならず、オフィスの皆でビックリ。 LP初期の盤などは、大型の装置で聞くよりも音楽に浸れるのが、なんとも不思議だった。 あれから半年、適切なアンプやスピーカーも揃ってきたので、近々興味のある方にお譲りする予定。
LP誕生時代のオーディオの再生音がどのようなものであったか知ることは、有意義であり本質を見極めることになります。 これから一つのオーディオ機器を用いて再生を行った結果を記述して行くことにしましょう。
「オートチェンジャープレイヤーの考案」
我国オーディオ界では、オートチェンジャープレイヤーは安物で、マニアルプレイヤーこそHi-Fiステレオサウンドの王道とされてきましたが、私は違うように思います。 1960年代頃までの好く出来たオートチェンジャーであれば、通常のHi-Fiステレオサウンドにも充分対応できたはずです。 この時代、LPレコードの最も良い時代でもあり、そのような時代に発売されたことを考えれば、その音質がマニュアルプレイヤーに決して劣るとは思えません。 例えばチェンジャー機能を持つレコードプレイヤーが1970年代もなお、本家の英国でBSRやガラード社により発売していたことから理解できます。 音質的にマニュアルプレイヤーに劣っていれば決して発売され続けることはなかったはずです。 欧米のレコードファンはそれなりの良さを知っていたのでしょう。 しかしなぜ、我国のオーディオファンはオートチェンジャーをマニュアルプレイヤーと比べて一段落ちる性能と思ってしまったのか? 製作者側の思惑で思い込まされていたのかもしれません。 古いオートチェンジャープレイヤーをレストアしてみるとわかりますが、マニュアルプレイヤーより圧倒的に部品数が多く、精度も高くないとちゃんと機能しません。 また製造会社にしてみれば、相当な設備投資と広いマーケットが必要となります。 つまり米国市場をターゲットに含まない限り採算が合わなかったと考えられます。 メイド・イン・ジャパンが蔑みの対象だった当時、我国の製品ではそこまでの世界市場を確保することは難しかったために、オートチェンジャーを大量生産に踏み切ることはどこのメーカーもできなかったのでしょう。 音の良いものは余程のノウハウが無いと無理で、チープな物は簡単に作れたのですが、安物然とした再生音しか出すことができません。 我国ではそのような品でしか無く、オーディオファンとしてはマニアルプレイヤーへ到る初歩的な価値しかありませんでした。
もうひとつ欧米と我国のライフスタイルの違いが上げられます。 我国のHi-Fiステレオは個人のものであり、マイ・サウンドを構築するのが、基本スタイルです。 欧米のオーディオは一般に家族の共有財産であり、個室ではなくリビング等に設置されることが多く、半公共的で、再生におけるハイフィデリティも家族や友人達と共に楽しめるものでした。 この様な場所で用いられるには、オートチェンジャー機能を持つレコードプレイヤーは大変役に立ったに違いありません。 ラジオと同様に、レコード音楽を家族全員がそれぞれに楽しむ。 ホームオーディオは、音楽を楽しむためのオーディオでした。 彼らが、音楽を楽しむためのコンシューマーユース機器と音を作り出すプロフェッショナルユース機器をはっきり分けたのは、プロユース機器をそのままの形でコンシューマーユースに用いることは許し難かったからです。この事柄を考えてみると、我国のオーディオ界がなぜプロフェッショナルユース機器の参入を許してしまったか見えてきます。 我国ではホームオーディオと言うものが結局定着せず、ホームオーディオはラジオからテレビジョンに推移し、結局オーディオというものが個室に閉じこもったHi-Fiステレオサウンドに集中することになったのです。 こうなるとオートチェンジャープレイヤーは無用であり、何ら価値のない二級品として取り扱われます。 私たちは、この時代(1945〜60年)のオートチェンジャーや小出力のアンプリファイアー、家具としてのデザインのスピーカーで、決して会話の邪魔にならず、良質な再生をしてくれる製品たちに、フルレストアを施しています。 私たちのオフィスでは、その小さな装置たちの再生音が何たるかを聴くことができるようになりました。 たしかにこの再生音には大いに考えさせられるものがあります。 以上T氏
オートチェンジャーをレストアして,初期性能にまで戻して出てきた再生音にはT氏のみならず、オフィスの皆でビックリ。 LP初期の盤などは、大型の装置で聞くよりも音楽に浸れるのが、なんとも不思議だった。 あれから半年、適切なアンプやスピーカーも揃ってきたので、近々興味のある方にお譲りする予定。