2010年05月22日

Thorens TD135 Mk.2 スーパー仕様

DSC_0063私が特別にレストアを施したTD135 Mk.2 です。 従来のTD135の限界を超えた再生音を得る目的で制作されたモデルです。 TD135が世評ではTD124の普及モデルなのに、フルチューンする必要があるのか疑問に思われるかもしれません。しかし、TD135は全く別物であると考えた方が良く、再生のあり方も異なっており、TD135の本当の力がどのようなものであるか解明したくなりました。 今回入荷したTD135   Mk.2の状態が大変良く、相当良い音が出るのではと思ったからです。
TD135Mk.1とMk.2の相違
TD135Mk.1は1961年に発売され、その再生音はTD124の30000番台の音と似たところがあり、こなれた音が出ます。 TD135 Mk.2は、その仕様こそTD124Mk.2と共通点がありますが、再生における鋭さという点ではどの時代のTD124モデルとも共通点はありませんし、TD135 Mk.2モデルをもって、真に独立した一つの種としての存在を確実にしています。 それほどこのTD135 Mk.2は魅力的な音です。 通常の仕様のTD135 Mk.2では恐らく今回の様な音はまず出せないと思います。  TD135はTD124とは異なった、DSC_0031もっと小型のアンプやスピーカーを組み合わせて使用することを前提に分をわきまえた再生を行うように作られたモデルであり、ホームユースで過不足無く音楽を楽しむことができます。 そのためレストア、チューニングもTD124とは異なった手法が要求され、わきまえた分を外すということは一歩間違えば再生音のバランスを崩すことにもなるからです。 DSC_0066TD135 Mk.2モデルは外装のペイント色と回転レバーはTD124Mk.2と共通でシャシーが鉄板ということもあり塗装ののりも良く、    TD124Mk.2よりきれいに仕上がっています。 モーター、ステッププーリー、アイドラーはTD124Mk.2と共通で、プラッター、スピンドル部がTD135専用のものとなっています。 TD135Mk.1との相違は、何より鉄板シャシー、トランスポート部の素材が固く作られているのが特長で、アームがレコードの内周でストップする際の動作音も軽く、アナログカメラのシャッター音を思わせる軽快な音がします。 BTD12S型モデルが配線がいったん軸受け外部に出された後、シャシ内部に引き込まれる仕様であるのに対して、本機に搭載されたTP14型アームではリード線は直接シャシ内部に入る構造であり、TD135Mk.1に起こりがちな配線材の経年変化による硬化もみられず、動作が大変スムーズなことも重要で、アーム自体の感度も著しく向上しています。 これはカートリッヂの軽針圧化に対応したと考えられますが、シュアのM44から繊細な、俗に言われるバタ臭い音を一切出さないのには驚かされます。 アームの降下スイッチ部はTD135Mk.1がレバー状のものであるのに対し円形ツマミになっているのも特長で、動作も大変スムーズ。 全体として比較すると洗練された動作がTD135Mk.2モデルの良さです。
レストア、チューニングの問題点
TD135 Mk.2はレストア、チューニングにあたっての最大の問題はシャシーとトランスミッション部の共振点が高いことです。 つまり鳴きやすく、これはモーターがTD124Mk.2と同様に軽く回り共振点が高めであることを前提としたためであると考えられます。 DSC_0069 この鳴きがTD135 Mk.2モデルの固有の音色を特長づけていることは充分推測できますが、これをそのままにしておいてはTD135 Mk.2の再生限界を押し広げることはできません。 TD124Mk.2ではアルミ鋳物シャシーの質量がモーターの振動の共振点の高さを補ってくれ、ある特定のくせを防いでいますが、鉄板でそれを望むことは無理があります。 DSC_0037それではどうすれば良いか。 答えはひとつ。 モーターの振動周波数をできるだけ低くして、鉄板シャシーの共振を無力化しエディカレント機構のダンピングファクター力をできるだけ高めるのが最善の方法だと思います。 この方法はTD124Mk.2では使えません。 ある程度以上の共振レベルの降下はかえって音色の艶をなくしてしまい、極端なモーターの共振f0を低くするのはTD135 Mk.2でしか機能しません。 モーターと鉄板シャシーの振動周波数帯を異なる帯域に分離することにより、アイソレートしていると考えれば良いと思います。 モーター共振波とシャシー自体の持つ固有の共振点がずれ、見た目モーターが動作していてもシャシーは振動からフロートしていることになります。 アームはカートリッヂの発電振動のみを可変すれば良くなりますし、シャシーが今度はアームの共振のアース体として働きSN比が良好となります。 さらにこの効果を高めるためモーターブッシュゴム内にスプリングコイルを入れ、モーターの振動を分散させ、シャシーに伝わるモーター振動の伝達スピードを可変しています。 この手法はあくまで低ノイズ、低f0振動モーターでなければ使えない手法で、通常のモーターのような共振モードではかえって振動が増大してしまいます。 DSC_0014センタースピンドル底部にはTD124用のプラスティック板を加工して組みこんでいます。 TD135のスピンドルはTD124のように独立せず、シャシーと一体化しており、その構造も薄い金属円筒型のチープなもので、スピンドルシャフトに組み込まれたベアリングが底部の平らな面に直接当たって、かなりのノイズを発生させてしまい、本機の場合は決して好ましいものではないからです。 なぜTD135がこの様な構造になっているかは、シャシーが鉄板になっていること、再生音にある種の華やかさを演出するためと考えられます。 TD135独特の味をトーレンス社は考えたのでしょう。 この手法も再生音のバランスを考えれば、いたずらにセンタースピンドルケースの底部にプラスティック・スラストパッドを挿入したからといって、良くなるものでもありません。 本機には、SCHOPPER社製アイドラー・ノイズリダクション・パーツを組み込んでいますが、理由としてTD124の場合はあくまで再生音時のクオリティの向上が主目的で、今回のTD135 Mk.2モデルの場合完全な振動のアイソレートが目的であり、アイドラーを受ける金物部の振動がシャシーに伝わるのを極力回避するのが本当の狙いです。 このようにしないと鉄板シャシーのアームに対するアース効果が半減するからです。
つづく 以上T氏



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