2010年05月30日

TD135のコンセプト

TD135について、T氏はまだまだ言いたい事があるようだ。 説明過剰ともいえるくらい。 レストアしながら、感じたこと・・・、多分彼はたくさんの音楽が聞こえていたのだと思う、TD124とはまた違う感触がここまで熱中させている。 今、単なる修理ではなく、音楽を産み出す機械と対話しながらレストアを楽しんでいる男がいる、という証しでもあるので、彼の言いたい事をさえぎることなしに続けようと思う。 以下T氏

TD135がどのような目的で製造されたか、発売された年代が一つのヒントになります。 TD124が発売されたあと、もう少し安価で操作性のよいものをユーザーが希望したとの説がありますが、トーレンス社にはオートチェンジャープレイヤーという分野があり、同時代にあったガラード社のRC80系オートチェンジャーのライバルとしてステレオ時代に対応すべく、作り出したのがTD135ではとも考えられます。 TD135の発売からさかのぼって1953年頃D43型センターギアドライブ・オートチェンジャープレイヤーが発売されており、これらを比較すればD43型センターギアドライブ特有のメカニカルノイズはステレオ再生で必ずしも良いものではなかったはずで、動作ノイズではガラード80系のオートチェンジャーの方が良好な結果をもたらしたはずです。  DSC_0017トーレンス社としては恐らくTD124の発売と共にこれらを一気に改善し、この分野でのシェアを万全なものにしたかったと考えた方が自然だと思います。 事実ガラードRC80の発展型であった4HFとTD135を比べればその差は歴然であり、TD135がステレオ再生において完全に勝っています。 TD135の目指したステレオ再生とは、TD124が目指した再生音と相関的な位置関係にあり、モノーラルLPがステレオLPに移行した時期にTD124が発売され、大きなスピーカーと小さなアンプの組み合わせが主流でしたが、TD135が発売された頃から出力の大きなアンプと小型スピーカーの組み合わせに移行しつつあり、トーレンス社でもホームユースの一般的な再生を行うには、TD124ほど強力な低音信号を送らなくても、もっと軽い信号を送れば実用として充分だと考えたと思います。 スピーカーの小型化とはいえ現代の私たちからみれば充分大きく、これらの事柄を考慮すれば、TD135の限界点も見えてきます。 DSC_0053TD135は、オートグラフやパトリシアン、ハーツフィールド、パラゴン、オリンパス等を鳴らすためのものではなく、タンノイのレクタンギュラー ヨーク、ARクラスの中型スピーカーを駆動するためのものであり、TD124とTD135はクラス別に分けられてユーザーに提供された製品だったと推測されるのです。 TD135がTD124に比べ劣っているのではなく、TD124ほどマニアックな再生を求めない人々に最良の再生音を提供するため、意図的にある客層に的を絞ったと考えられます。 そのためTD135は、ほんの少し改良すればさらに性能が向上するポイントがあるにもかかわらず、意図的に歯止めをかけたと思われるところがレストアにおいて見ることができます。
TD135のウイークポイント
最大のウイークポイントは、何と言っても制式に製作された良いキャビネットが無いことに尽きます。 アメリカから輸入されたTD135には、時折現地で作られた合板製キャビネットが付いていますが、このキャビネットを用いて再生すると、TD135特有の切れ込みのあるシャープな音が完全に失われてしまいます。 これは、シャシーが鉄板プレス製なために、厚みのあるアルミ鋳物シャシー製のTD124が持つシャシー自体の固有の力が少ないので、再生音のクオリティを向上させるためにはキャビネットによる音響的な働きの協力が是非とも必要になるのです。DSC_0043TD135が専用のオリジナルキャビネットが無いのは、コンソールに組み込まれることが比較的多かったためと思われます。 この場合もコンソールの構造や素材により音質が変化することは充分に推測できますが、アンプリファイアーにリーク社製のものを用いスピーカーにタンノイ或いはワーフェデールを組み合わせれば、ステレオデコラに匹敵する装置が出来上がるかも知れません。



トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔