2010年07月27日

英COLLARO社製4T200型プレイヤーその2

レストアとキャビネット
英国から到着した時は、不動品でモーターも回りませんでした。 手は加えられた跡もなく、時間をかけていけば初期性能まで回復すると直感しました。 モーター底部をすべて分解しクリーニングと研磨、そして再組み立ての工程に入ります。 ローター軸下シャフトを研磨し、モーター上部は少し錆びがあり、動作させたあとベンジンを注入して錆びを浮かせ、オイルを注入してあたりが出るまで待つことにしました。 そんなわけで本機が完全にその機能を取り戻すまで一カ月ほどかかり、その間はひたすらオイルを注入し続けて初期性能まで復帰します。 センタースピンドルはベアリングを抜き取り、クリーニングと研磨を施します。 長い期間回していなかったため、金属アク出なくなるまでに3カ月程かかりました。 もちろん、その間クリーニングと研磨を繰りかえします。 キャビネットに組み込むこむため長いボルトを加工して取り付けネジを作成します。 このネジにスプリングコイルをはめ込みシャシーをキャビネットから浮かせオリジナルと同じ構造で取り付けます。 本機のようなフォノモーターは、英国ではコンソールに組み込まれているのが通例で、独立して使うにはそれなりの工夫が必要です。 考案したキャビネットは、基本的にはガラード301やコニサークラフツマン用のものと同じコンセプトですが、本機の場合はあまりダンピングファクターをかけない方が良いので、そのあたりを念入りに考慮してキャビネットを製作しました。 基本パーツは6点で構成され、一番上のトッププレートは桐の集成材、その下に15mmのMDFをすべてネジ止めで取り付け、小さなL金具で外板と連結、共振のピーク化を防いでいます。 P4110569MDFからボルトとコイルによって最下部の棒状のサブシャシーに連結していますが、この部品は振動の速度をコントロールし、可変する目的で用いられています。 外板は桐集成材で内側、外側ともオイルステン仕上げで振動の制御と湿気を防止、サブシャシーには底板が取り付けられ、キャビネット全体の振動可変力を高めています。 敷板は本機のために特別設計製作したもので、4つのパーツを連結した構造は、外部からの振動による影響とキャビネットのアースとしての働きを行っています。 P4170586本キャビネットでは、音質に変わる振動可変で逆アースとして働いており、通常の箱型キャビネットとは違う振動アース形式を採用しています。 この4T200型を通常のキャビネットに載せると、モーターの振動やアームの共振はトッププレートを通じて外側の板に流され、一方で外部からのノイズ成分を同時に引き込んでしまうことになります。 アース的には正相と言えますが、コラロに関して言えば、いつもうまく働くとは限りません。 モーターノイズが絶えず変化し、同時にアースの共振もプログラムソースによって変化するからです。 プレイヤーキャビネットは振動可変力が不安定となり、音色が安定しにくい現象が起こります。 これを逆アースにすると、フォノモーターの振動とアームの共振をいったん内部に導いて、その後外側の板材に流すのです。 こうすればトッププレートの振動の直進性は可変され、外部ノイズとの連動性は無くなります。 それを可能にするには、トッププレートが外側の正相アース体と絶縁しなければならず、本キャビネットはトッププレートが外側に接触していないのです。 逆アースにすると正相アースのようにダイレクトにキャビネットの足を通して振動を逃がすことは難しくなります。 P4170584それは振動の方向性が逆転しているからで、逆アース体の吸収体として外側の板が働き、もろもろのノイズ成分が常に残留していることになります。 それを解消するのが底板の存在で、外板の逆アース振動成分を速やかに吸収しコントロールしているのです。 これだけでは充分ではなく、底板とペアで働く専用の敷板です。 今まで作った様々な敷板のすべて形が違うのはそのためです。 逆アース構造の長所は、外板との接合により、さまざまなダンピングコントロールが行え、組み込まれるフォノモーターに色々適用できる点です。 欠点と言えば、手間がかかり作りにくいこと、レコードプレイヤー・キャビネットケースは一生ものと考えれば、問題ありませんが。 古典的なアイドラープレイヤーにとっては、この逆アースキャビネットが良質な再生に適していると思います。 つづく
以上T氏




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