2011年04月24日

田舎芝居の女剣士

臙脂のヴェルヴェットの緞帳を背景に、オーケストラがひとしきり満ちてきて引ききると、静寂からヴァイオリンソロが登場する。 こてこての見得を切って中空の闇に浮かび上がる。 オオーッとのけぞるまで音が伸びる。 圧倒するソリストの存在。 若き韋駄天女イーダ・ヘンデル。 IMG_0570悪趣味ぎりぎりまでにこぶしを利かせながらも、音色にある格調を貶める事はなく、どこまでも揺さぶり、遠くに連れて行ってしまう魔法をふりかけてくる。 もう、どうなってもいいや。 目にも止まらぬ指板を綱渡りする指使いのしなやかなこと、体一杯に上下させる弓の練られた運動は剣さばきの見事さ。 正気を逸した音の表情が次から次へと繰り出されていく。 踊る、歌う、目線を切る。 P1010195
背景に英HMVの音場に格調があってこそ、ヴァイオリニストから放たれる脂粉プンプンの輝きの共感してしまう(これはマイケル・ラビンの英コロムビア録音にもつながっている)。 芸術とはまた異なる濡れる『芸』があった時代の面白さ。  他のレコード会社が制作していたら、ただのチャンバラになってしまったかもしれない。 レコードを趣味から見ると、再生音の性格の格は音楽の性根を変えてしまいかねないくらいに大切なもの。 P1010117
今回使用した再生装置で、感心したのはJames Worden社製木製トーンアーム(1962)とBarker-Duode社製12インチスピーカーをT氏が製作したキャビネットに収めたシステム。 おかげで、一枚のレコードがこころをずいぶんとうごかしてしまうことになる。 『こする』という人間の行為はこんなにもうつくしい。

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このアームはすごい能力を内包している。 リニアトラッキング、そして軽量アームボディとシェルは中空で、しかも木材でできているのだからして、木質の響きが伸びてゆくのは快感。 ShureM44でこれだけの音が出てしまうのだ。 韋駄ヘンデル繰り出ところの魔性の調べに耳がトロけてしまいそう。




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