2011年05月12日

こんなの作っちゃいました 弐

アーク型エンクロージャーのモノコック構造
本機のモノコック構造の真の意味する所、それは過去から現在に到る、エンクロージャーの設計思想の全否定であります。 読者の皆様はスピーカーエンクロージャーとは、全てがっちりと強固に作るべきだと思われているかもしれませんが、世に言われる、名器といわれるスピーカーユニットを使う場合、この思想は過ちです。 この思想が流布した理由は簡単です。 がっちりと強固に作った方が作りやすいからです。 本機の例を上げれば9mmと言う板厚は、釘もネジも効きません。 P1061045
幸いフィニッシュという便利な機械があるので作り上げることが出来ましたが、当時は大変な作業だったろうと思います。 これがこのエンクローシャーがあまり作られなかった理由でもあるのです。 製作の面倒くささと難易度はかなりのもので、GRFやオートグラフの方がずっと作りやすいとも言えるほどです。 何しろ組み上げているにしても、頼るべき骨格が無く、板を空中で組み上げなければならないのですから。 従って製作中は全力で手を抜くという、相反する技術が要求されます。 さてエンクロージャーも完成し、いよいよユニットを組み込む段に行く前に、本機に入れるアキシオム80の云われについて述べておくことに致します。 一個は1948年〜9年に発売された最初のモデルであり、これは前の持ち主がブリッグス氏の勧めにより購入したもの、もう一個はステレオ時代1958年にステレオ化するため買ったもの、これら二個は夏のバカンスのためのスウェーデンのサマーハウスに置かれていたそうです。 いずれも状態の良いもので、個々10年間の開きがありますが、初期型の方がやや音が低音に寄っている位のもので、この位はユニットの個体差の許容範囲にあります。 
再生音について
本機の再生音は、天衣無放の一言です。 何処にもストレスが掛らず、伸びやかに軽々となり刺激的な音が全く出ません。 特にパイプオルガンは室内全体の空気を揺する位のエネルギーを持ち合わせています。 パイプオルガンとオーケストラ、合唱という、オーディオ装置にとって最も手ごわい宗教曲を再生すると、濁らず明確かつ精澄な音が出るのには驚かされます。 ボーカルの立体感からソリストの人間性や音楽に対する取り組み方まであらわにしてしまいます。 ジャズを再生してみると、品格という言葉が最も形となって現れたかのような再生音が得られますが、この様な曲の場合、ユニット開発者の若さが出てきて、リズムの弾みが推進力を生み、重さを感じさせません。 
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ガーシュウィンのラプソディインブルー等の生命力あふれる表現力は大変素晴らしいものです。 この様な再生音が可能なのは、ひとえにエンクロージャー内の空気が共鳴しているからで、その振動面積は、エレクトロボイスの30w(76cmウーファ)に匹敵するのではと私は思いました。 さらに本機の再生音を聴いて気付くことは、時々クォードのコンデンサー型スピーカーと似た音が出ると言うことです。 だがこの様な音の傾向は、後述する英サウンドセールス社のスピーカーユニットや、バーカー・デュオドでも聴くことが出来ます。 そうすると我々がコンデンサースピーカーに対する認識が、改められなければならないかもしれません。 すなわちクォードのコンデンサースピーカーを固有のものと認識するのが定説でしたが、実はこうした音の好みは古き英国人の中に脈々とながれていたように思えるのです。 クォード社はそうした好みを明確に表すため、コンデンサースピーカーを開発したのではないか? こう考えればアキシム80や、サウンドセールス社やデュオド、或いはプレッシー社のユニットがきちんとした英国風の流儀にのっとって再生すると、上質なコンデンサースピーカーと共通項にある再生音として出現する理由も判ります。 
アキシオム80の都市伝説
アキシオム80は以前に高名な評論家が、一生苦労したければ使えとか、キャンつくキーキー言ってまるで音にならず、昔はこんな音を良いとしつつ聴いていた等と述べておられるが、こうした記述については兼ねてより私は疑問に思っていました。 これらの方々の言われるように、本当にアキシオム80はその様な品であるか? そうではないはずです。 まずアキシオム80は他のスピーカーユニットと形はやや異なっているけれど、サウンドセールス社のユニットやデュオド程にはヘンテコリンな形状ではありません。 いや、それらと比べるとオーソドクスにさえ見えてきます。 繰り返しますが、アキシオム80はただのダイナミック型フルレンジスピーカーであります。 強固な磁気回路とフラフラコーンを採用してはいるが、これが理由で鳴らないと言うのであれば、JBLやアルテックのコンプレッションドライバーはさらに鳴らないことになる。 P1010085そんなはずは無い。 原因としてはどうしようもないコンディションのアキシオム80を掴まされたか、又はレコードプレイヤーやアンプリファイアがひっかからないものを使っていたからです。 おそらく後者が原因ではないかと私は考えておりますが、アキシオム80を鳴らすには、まず最上級のレコードプレイヤーを用いなければなりません。 EMT等を持ってきたら、アキシオム80はとたんに機嫌を損ねます。 ベルトドライブやダイレクトドライブも不的確で、TD124又は英国コニサー社のプレイヤーを持ってこなければ実力を発揮させることは出来ません。 アンプリファイアも又然りで、アメリカ製のマッキントッシュやマランツではアキシオム80はひきつけを起こしてしまいます。 6L6やKT88等の球を作ったアンプリファイアも出力的にも音楽的にもマッチしません。 英国のしかるべき小出力アンプでドライブするのがベストであります。 良いプレイヤーとアンプリファイア(欧州製)があれば、アキシオム80は勝手に鳴ってくれます。 アキシオム80は、繊細なユニットですが決してエキセントリックではなく、大変自然な音色を持つスピーカーユニットなのです。 つづく
以上T氏


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