2011年06月20日

試聴と試作の繰り返し

工業製品としてスピーカーキャビネットを均一の品質で大量に生産するのと、町のキャビネット工場で寸法どおりに製造するのと、趣味性の高いものを1台1台意思をもって製作するのとでは、おのずと違う。
このところ英国製の趣味性の高いスピーカーユニットを取り付けたシステムを少しずつ作り出している。 ユニット自体凝りに凝った構造のものばかりで、もちろんメーカー推奨キャビネットなどは存在しない。 ユニットをにらみ、音を聴き込み、それから組み込むエンクロージャの構想を練っていく。 
エンクロージャはぱっと見て、あ、これは、というものが、やはりいい音がする。 カタチとしてのバランス、質感、品性などからくる見映え、立ち姿がすっとしているものが、良いということ。
英SOUND SALES社製のユニットでモノーラルシステムを試作している。
T氏がユニットを聴き、意思をもって板を選び、素材の秋冬、春夏の方向を見て、木口の角度を削り、ネジの材質とネジ頭の大きさと長さを選び、板を叩きながら組み上げていく。 出来上がる前からユニットが彼の頭のなかでは動作している。 出来上がったばかりのエンクロージャをT氏がオフィスに持ち込んだ時、素人の僕でさえ、『もう、鳴っている』と感じてしまう。

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たった2個のユニットのために4つのエンクロージャに4個の異なるイコライザーを作る。 一見無駄なように見えて、実は僕等にとっては全然ムダではない。 聴きわけなけらなならないのは、ソノリティだから。 
真ん中の支柱からベークライトのカンチレバーが何本も出てコーン紙を支持しているエッジレススピーカーで、今回は1930年代製造の初期モデルを取り付けていろいろ始めて半年になる。 見かけはAXIOM80の叔父さんのようでもあるが、ユニットを裸で聴いて、『タダモノでは無い』と直感したから、ここまで入れ込んで作っているのは確か。
ユニットそのものが持つエネルギー、周波数特性はもちろん、音色やボディと影の割合などが、ひとつひとつのユニットで性格が異なるので、それにあわせてエンクロージャをカスタマイズしていく。 今月に入って、スピーカーの前面に嵌め込むイコライザー(三本の縦方向の桟)をいろいろとやっている。 

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T氏が作り、二人で聴き、率直に正直に意見を交換して、やり直す。 それが今回で4回目のイコライザーになる。 これが無いと、このユニットは音が拡散されてまとまらず、旨みがでないまま音を放り出している状態で聴くことになる。 もっとも、それでも、大概のスピーカーでは太刀打ちできない音質を具えているが。 T氏が今回作ってきたものは、ユニット前面の音の飽和感が消えて音場が静かになって、音源に焦点が合い、音色をふんだんにまとって、スッと立ってに再生されている。 よりエロティックな音になってきている。 イコライザーは音をコントロールしすぎてもいけないし、ユニットの素の音ばかりが透過されていてもいけない。 イコライザーをこしらえてきたT氏に、僕はこれまで3回ほど難癖をつけてきた。 その度にT氏は涼しい顔をして違うものをこしらえて持ってくる。 『これで、キマリ』と僕は満足して言った。 そしたら、『まだ気に入らねえ』とT氏は5種類目のイコライザーを作るつもりで帰っていった。 思ったとおりに出来れば苦労はしない。 やり始めたら、気に入るまで、徹底的にやる。 出来上がってからが本番だ。
『職人は結果がすべて』というのがT氏の口癖。

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PYE HF5/8 (5Watt EL90 Push pull) で試聴


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