2012年03月23日

TD124 鉄製プラッター

TD124の鉄製プラッターは濃緑色と若草色の二種類がありますが、形も重量も殆ど変りません。 濃緑色のものは、TD124初期型から25000番台あたりまでと推測されますが、30000番台以上に乗っていたりMk.2に取り付けられていることもあり、謎の一つです。 恐らくTD124が販売される時、本体とプラッターが別梱包で販売代理店に送られ、現地で組み立てられたのでしょう。 RIMG0535濃緑色から若草色にチェンジする時代に代理店側の在庫状態やトーレンス社の製造の都合でプラッターが先に送られた場合もあったとするならば、25000番台後半からのバラつきも判ります。 初期型・プラスティック・スピンドル仕様のTD124には若草色のものは見かけませんから。 初期にはTD124本体と鉄製プラッターの製造は同じスピードで作られ、若草色の時代はそれぞれ別のスピードで制作されていたと推測されます。 そのズレは回転系パーツの混入という形で現れることにもなった。 さらにそれ以外の30000番台以降の濃緑色と若草色それぞれの混入の原因は、販売店や輸入業者、あるいはインターネット売り手によって、適当あるいは意図的に(二個一三個一の要領で)行われた可能性があります。 当時新品を購入したオーナーがチェンジした可能性については、まずないと思います。 仮に交換するなら同じ鉄製ではなく、アルミ製プラッターを選ぶはずです。 こうした事例は40000〜50000番台の後期Mk.1に時々アルミ製プラッターが組み込まれているという事実が物語っています。 この鉄製プラッターの見かけ上は同じ鉄製で塗装の色が違うだけと思われるでしょうが、実は音色の面でかなり差があります。 濃緑色のものは、全体に鳴きが重く、共振周波数が低いものが多いです。 それに対して若草色のものは、やや軽く響き、残響も濃緑色のものより明るくフェードアウトして行きます。 基本的に濃緑色のものは、プラスティック・スピンドル仕様のTD124のために、若草色はメタルスピンドル仕様のためのものと考えることが出来ます。 従ってMk.2等にこの濃緑色のプラッターが乗せられていると場合によっては、再生音が頭を押さえられた様な感じになることもあります。 その逆に少々音が薄く、重厚さが欠けるようなMk.2では適度な重さが得られ、安定した音に変化するという良い結果が得られることもあります。 
Mk.1の30000番台あたりではあまり差は感じられませんが、TD124の出来によって低域が詰まり気味になったり、高音域が早く落ちるといった現象が時々見られます。 それらはTD124の個体差によって変化します。 40000〜50000番台は、基本的に若草色のものが乗っていますが、濃緑色が取り付けられていると、良くなるか悪くなるかはっきり分かれます。 再生される周波数レンジの範囲とフォルテッシモにかけての駆け上がりの伸びに差が現れるのです。 この現象は、この番台のTD124が周波数レインジ自体はフラットなのですが、その最低音域と最高音域の限界点がすっぱりと切れているために発生します。 つまり可聴外まであたかも伸びている感覚を聴く人にあまり感じさせず、特性としてありのままといった感じの再生の仕方をするため、プラッターの差が直接出やすいのです。 では20000〜30000番台頃までのメタルスピンドルのTD124はどうか。 ステップ・プーリーが旧型の皿型がもたらす音色が決め手となり、濃緑色のプラッターが乗ったものはプラスティック・スピンドル寄りの音色とハイライト的に金属の光沢が乗った独特の音色が得られ、若草色の場合はいかにも当時のHiFiを思わせる厚みのある重厚な音が出ます。 しかし初期型のプラスティック・スピンドル仕様のものに若草色が入っているとやや音が軽くなってしまい、初期型の特徴である堂々としたプレゼンスが少し落ちたような感じになります。 濃緑色と若草色のプラッターの音質の差がこれだけなら良いのですが、この二種類のプラッターには上部に同心円状に細かいミゾが切られているものがあり、これが音質、特に周波数の拡張に影響することがあります。 これは少々困った問題なのです。 このミゾは割合深めな若草色と目に見えないくらいの濃緑色ですが、これは結構再生音に差がでます。 ミゾの役割は、スピーカーのコーン紙のコルゲーションと同じ効果があると考えるとわかりやすく、深く切ってある若草色は叩いてみると共振の減衰が溝ナシと比べてやや早く、濃緑色は減衰スピードより共振の質に関係しており、再生音がフラットなものに比べるとやや軽くなる傾向があります。 しかしこのミゾの本当の働きはTD124の再生音にある、リズムの明確さとなって現れてきますが、良いか悪いかはプレイヤー自体の固有の力によって変化します。 全体的にはこのタイプのプラッターはリズムが良く弾み、高音域のスピードが平面のものに比べ早くなる特長があり、それは一見効果的のようですが、低音部が置いていかれる傾向が時々あり、ステレオ再生においてバランスが取りにくくなります。 これも40000〜50000番台になると低音域がやや軽く音離れが良くなって来ますので、高音域のスピード感と同調性の点で合致してきます。 これらを考察すると、このミゾはステレオ再生で高音域における音離れの向上にあり、ステレオレコードの発達とともに高音域のセパレーション特性を重視して刻まれたものであり、40000〜50000番台にこのタイプが多いのもそのためと考えられます。 
このように鉄製プラッターの特長について書かれたことはありませんでした。 鉄製プラッターの音質、音色の変化を正しく定めるにはTD124が完全に初期性能に復帰しているか、それ以上の性能を獲得した上でなければ知ることが出来ません。 これまでTD124の音質についてはせいぜい駆動電圧の値(100Vが良いとか220Vが良いとか)をもってあれこれ言うことしか出来なかったのが実情でした。 このように完全調整済のTD124でいくつものプラッターを乗せ換えて見ない限り、鉄製のプラッターの是非を問う等は誰も言い出せないからです。 
RIMG0540

若草色プラッターの溝 クリックすると見えます

RIMG0538

深緑プラッターの溝 クリックすると見えます
つづく
以上T氏



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