2012年03月24日
TD124Mk.2 アルミ製プラッターの謎を探る
TD124Mk.2には、オプションとしてアルミ製のプラッターがあります。 私たちがTD124に関わる以前は、これを非磁性体プラッターと紹介されていたこともありました。 このアルミ製プラッターがオプションとは何をさすのか、いつ作られたのか、目的は等々の疑問には諸説ありますが、謎が多く本当のところ定かではありません。 そこで私なりに書いてみたいと思います。
オプションということについては、TD124の購入者がチョイス出来たということですが、それはMk.2の場合であってMk.1の場合はプラッターと専用スペーサーを揃える必要があります。 まあオプションと言えばオプションですが、少々意味が違ってきます。 作られた時期についても常識的にMk.2発売時かそれ以降ですが、Mk.2初期モデルにアルミ製が取り付けられていない場合が多いことを考え併せると、発売の翌年あたりかもしれません。 その目的については、前の二つの事例とTD124全体が係わってくるので、今度は問題が大きくなってきます。 アルミ製プラッターが開発された経緯については、一部の強力なマグネットを持つカートリッジ(ほとんどがMC型)の鉄製プラッターへの吸着現象による歪みの発生をなくすためというのが一般的な説です。 何故それがMk.2でしかも1965年まで待つ必要があったのか。
Mk.1が発売された1950年代末にすでに強力なマグネットを持つカートリッジが存在しており、この時点で既にオプションとして販売されていてもおかしくありません。 何しろTD124プロトタイプには、すでにアルミ製のものがありますし、Mk.1が発売されたすぐ後のTD135にアルミ製プラッターが装備されていたのを見ても、トーレンス社がアルミ製プラッターを作れなかったとは考えられません。 つまり、作ろうと思えばいつでも作ることが出来たのに作らなかった。 なぜか? TD124の鉄製プラッターのもたらす音質、音色が何物にも代えがたいものであったと考えるしかありません。 そして、世の中のレコードプレイヤーをみれば、およそトランスクリプションと名乗るターンテーブルの中で、鉄製プラッター装備のものはTD124以外にはありませんでした。 TD135もTD121やその他のモデルでさえ鉄製プラッターではもはやなく、鉄製プラッターはTD124のためだけに製造されていたのです。 カートリッジの吸着という問題にしても、1965年当時どれだけこの現象を引き起こすカートリッジがあったのか1950年代とたいした差はなかったはずです。 問題があるとすれば、英国で使われていた事情が考えられます。 英国では圧倒的な磁力を有するDECCAカートリッジの存在がみのがせません。 あれほど強い吸着力であると、いかにアッパープラッターで浮かせたとしても鉄製プラッターでは望ましい結果は得られなかったはずです。TD124が本格的に英国に進出したのはMk.2になってからで、英国で売ろうとすれば当然、吸着の問題を解決しなければなりませんでした。
当時英国にはガラード301、401があり、コニサー社、コラロ、BSR、レンコ社も存在しました。 価格的にもTD124はダントツに高額(ガラード301の二倍からそれ以上)だったはずで、とてもカンガン売れる状況ではなかったはずです。 Mk.2の音を聴いてみると、本当の目的は吸着現象の解決というよりステレオ効果を高めるためだったという思いがします。 アルミ製プラッターの音は鉄製プラッターと比べると、ステレオ的なセパレーションと音の分解力が高く、再生音が映画のスクリーンの様に空間に放出され、音楽が立体的な絵画のように展開され、まさにステレオここにありきといった感覚を覚えます。 和声が分散和音化するきらいがありますが、それさえ発生しなければステレオ効果という面では鉄製プラッターに一歩先んじたといえましょう。 この様なことから推測すれば、Mk.2におけるアルミ製プラッターはステレオのためのものであり、これを裏付けるかのようにアルミ製プラッターには33回転用のストロボパターンしか付いていません。 SP再生は考えていないということです。 本当にMk.1の発売時にアルミ製プラッターがなかったのか、TD135用の生産ラインを少し変更すれば容易に作れたのにとまだまだ謎は残ります。 つづく
以上T氏



以上T氏