2012年04月16日
TD124アイドラー研磨と再生音
アイドラー接触面の研磨効果が真っ先に現われるのは回転の安定性です。 それはストロボパターンには出ない種類のもので、物理特性より音色、定位、分解能と言った音楽再生における分野で発揮されます。 アイドラーの接触面の凹凸や荒れが改善されれば当然アイドラーの回転時ノイズは減少するし、SN比も上がります。 しかし、ノイズの面からみればステップドプーリーとメインプラッターからのノイズは思ったほどの効果はありません。 この部分は構造(仕様)がステッププーリーの接触面はフラットですが、メインプラッター側接地面には細かなミゾが切られていて、アイドラーは両方(ザラザラとツルツル)と接しなければなりません。 プラッター側にミゾがないフラットなものであれば機能的には良くなるはずですし、ノイズも減少するはずなのですがトーレンス社の技術者があえてそうしなかったのはミゾを切った方が音は良かったからでしょう。 またメインプラッター側の接触面をツルツルにすると汚れや異物から発生するノイズがダイレクトにステッププーリーやモーターに伝わってしまい、音質的に好ましくない現象の発生を避けたとも思われます。 この構造、つまりザラザラとツルツル方式では案外にゴムから出る吹出物による汚れが付着しづらくなるから不思議です。 アイドラーを適切に研磨すると何よりステップドプーリーとメインプラッターへのアイドラーの接触面の当たり個所が安定して、ある一点できちんと設定されるようになり、歯車がきっちり合わさるように動作し始めます。 そればかりではありません、アイドラーの0ポイント点、つまりアイドラーの回転に伴う回転エネルギーの消失ポイント位置の確定がされることにより、アイドラー自体の振動の流れが整えられてくる。 こうしてアイドラー中心部の三角運動が安定し、回転軸部のシャフトとアイドラー内径の金属リングがある接点できちんと当たるようになるのです。 未研磨時に見られた接点のランダム性は無くなり、この部分の回転に伴うノイズが急速に減衰するのです。 そうして回転が聴覚的にもそれとわかるぐらい良くなっていきます。
アイドラー研磨が完了したら、アイドラー軸受け穴も入念に研磨しなければなりません。 ここが滑らかであればあるほどノイズは目に見えて減ってきます。 さらにアイドラーの状態が良くなってくると、アイドラー本体をのせているコの字金具をコントロールするカム(指定回転数選択用)接触部やこの金具をシャシーに止めている金属リング内部の研磨とシャフト棒の研磨と注油が音質に大きな影響を及ぼしていることがわかってきます。
これらはアイドラーを最適位置にコントロールする部位であり、アイドラーの回転によってステッププーリーとメインプラッターに伝送される回転エネルギーとそのキックバック現象(ステッププーリーとメインプラッターの共振とアイドラーの振動)が合流し、ここを介してシャシーに流れ込んで行きます。 つまりこの部位はアイドラー振動のアース的な役割をはたしていることになり、構造的にアイドラーの0ポイント地点と密接な位置にあり、アイドラーの振動はコの字金具の中央でその流れを変えてアースされます。 これによって振動はすみやかにアイドラー本体から流れ出ていくのです。 こうした理由からアイドラーのみでなくアイドラー周り部位のきちんとした研磨は大切であり、再生音における透明感が格段に向上します。 アイドラーをTD124動力伝送機構のファイナル段の歯車として位置づけるなら、その研磨は歯車の噛み合わせをより正確なものにします。
その正確な動作がいかに音楽再生表現力の奥深いところで係わっているかを次に説明しましょう。 アイドラーが歯車としての働きをきちんとするようになると、回転エネルギーを伝えるメインプラッターに対しては回転そのものに定格性を与え、かつステッププーリーに対しては回転に伴う反発が解消されます。 こうしてステッププーリーは不規則なエネルギーを受けなくなり、結果としてベルトで結ばれているモータープーリーを安定した円運動に近い動作をさせることが可能になります。 その結果モーター内部の電磁界部のローターへの磁力がきっちりとホールドされ、ローターは一層安定して回転することが出来る。 こうしてTD124特有のモーターによる整流作用が効果的に働き、再生音にTD124特有の澄みを生みだすことになる。 ここまでがアイドラーの研磨におけるTD124のメカニズムへの影響についての記述です。 これほどまでに不必要に細かく書いたのは、今日ヴィンテージのレストア作業において物事をあまり考えず、ただ良いから、効果があるから、と安易に変えてしまう人達があまりにも多く、そのことに危惧の念を覚えているからです。 ヴィンテージ時代の技術者は今日の私達が及びもつかないほど知恵のある人達でした。 時には私たちから見れば欠陥ではないかと思われる構造の機器もあります。 そのような構造をとるのは、それなりの理由があるからです。 それらを思い測らねば、ただこうした方が良いという浅はかな知識によって改良と言えば聞こえは良いが、事実は改悪を施しています。 今回のアイドラーの研磨でも同じことが言えます。 ただ良いから行うのではあまりにイージーであり、その働きと構造の意味を計らったのちに行なわれるべきものです。 TD124は絶妙なバランスで成り立っているレコードプレイヤーであり、ただアイドラーを研磨したからといって、それだけで性能が上がるものではありません。 すべての回転系が整わなければ、TD124の真の力は現われてはこないのです。 この項おわり 以上T氏
アイドラー研磨が完了したら、アイドラー軸受け穴も入念に研磨しなければなりません。 ここが滑らかであればあるほどノイズは目に見えて減ってきます。 さらにアイドラーの状態が良くなってくると、アイドラー本体をのせているコの字金具をコントロールするカム(指定回転数選択用)接触部やこの金具をシャシーに止めている金属リング内部の研磨とシャフト棒の研磨と注油が音質に大きな影響を及ぼしていることがわかってきます。
これらはアイドラーを最適位置にコントロールする部位であり、アイドラーの回転によってステッププーリーとメインプラッターに伝送される回転エネルギーとそのキックバック現象(ステッププーリーとメインプラッターの共振とアイドラーの振動)が合流し、ここを介してシャシーに流れ込んで行きます。 つまりこの部位はアイドラー振動のアース的な役割をはたしていることになり、構造的にアイドラーの0ポイント地点と密接な位置にあり、アイドラーの振動はコの字金具の中央でその流れを変えてアースされます。 これによって振動はすみやかにアイドラー本体から流れ出ていくのです。 こうした理由からアイドラーのみでなくアイドラー周り部位のきちんとした研磨は大切であり、再生音における透明感が格段に向上します。 アイドラーをTD124動力伝送機構のファイナル段の歯車として位置づけるなら、その研磨は歯車の噛み合わせをより正確なものにします。
その正確な動作がいかに音楽再生表現力の奥深いところで係わっているかを次に説明しましょう。 アイドラーが歯車としての働きをきちんとするようになると、回転エネルギーを伝えるメインプラッターに対しては回転そのものに定格性を与え、かつステッププーリーに対しては回転に伴う反発が解消されます。 こうしてステッププーリーは不規則なエネルギーを受けなくなり、結果としてベルトで結ばれているモータープーリーを安定した円運動に近い動作をさせることが可能になります。 その結果モーター内部の電磁界部のローターへの磁力がきっちりとホールドされ、ローターは一層安定して回転することが出来る。 こうしてTD124特有のモーターによる整流作用が効果的に働き、再生音にTD124特有の澄みを生みだすことになる。 ここまでがアイドラーの研磨におけるTD124のメカニズムへの影響についての記述です。 これほどまでに不必要に細かく書いたのは、今日ヴィンテージのレストア作業において物事をあまり考えず、ただ良いから、効果があるから、と安易に変えてしまう人達があまりにも多く、そのことに危惧の念を覚えているからです。 ヴィンテージ時代の技術者は今日の私達が及びもつかないほど知恵のある人達でした。 時には私たちから見れば欠陥ではないかと思われる構造の機器もあります。 そのような構造をとるのは、それなりの理由があるからです。 それらを思い測らねば、ただこうした方が良いという浅はかな知識によって改良と言えば聞こえは良いが、事実は改悪を施しています。 今回のアイドラーの研磨でも同じことが言えます。 ただ良いから行うのではあまりにイージーであり、その働きと構造の意味を計らったのちに行なわれるべきものです。 TD124は絶妙なバランスで成り立っているレコードプレイヤーであり、ただアイドラーを研磨したからといって、それだけで性能が上がるものではありません。 すべての回転系が整わなければ、TD124の真の力は現われてはこないのです。 この項おわり 以上T氏