2013年01月28日

TD124の姉妹機たち

まずお読みになる前に、これまでTD135、134、184について雑誌などで書かれてきたことはすべて忘れていただきたい。 それらは実際現物を調べ使ってみたことのない人が書いたものであるからです。
さて、TD135が発売されたのは、1961年あたりと言われています。 RIMG0682この年代はTD124の初期型モデルが生産を終え、中期型モーターとステッププーリーが組み込まれたものに移行しており、TD135もそれらと同じモーターとステッププーリーが入っています。 つまりTD135はTD124の中期モデルのパーツが取り付けられているということです。 再生音もフラットでレンジが広いものになっていますが、シャシーが鉄板プレスであることとTD124の速度変換カムなどの大型パーツが省略され、TD135専用のものに変えられています。 そのためTD124のような音の厚みはどうしても不足してしまいますが、よりシャープに音が切れ込んで小回りが利く音になっています。 従って米国の超大型フロアスピーカーEVのパトリシアン・ハーツフィールド・クリップシュホーン等を鳴らすには少し力が足りない。 もっと小型の(と言っても私たちの感覚では大型フロアー型ですが)スピーカーのためのものです。 オーディオ的クラスで言えば、ミドルクラスになりますが、ミドル級をナメてはいけません。 この階級こそ、本来オーディオ市場では主流であって充実もしていたのです。 ボクシングでもミドル級のチャンピオンになるのは大変なことです。 何しろ競争相手が多い、TD135も然りでライバルとしてはガラード社のオートチェンジャーやレコカット等挙げられますが、これ以外にも様々なレコードプレイヤーが米国にあったはずです。 これらの競争相手の連中とTD135が決定的に違うのはTD135が単なるインストルメンタル用ではなく、Hi-Fi的な再生に焦点を当てた製品であったことでしょう。 つまり、現在の私たちが持っているHi-Fiのイメージに最も近いのがTD135の音なのです。 TD135は時代を先取りしたレコードプレイヤーと言えるかもしれません。 標準装備のシュアーM55やM44を取り付ければ、音のキレとスピード感が抜群なのです。 この効果が得られるのはTD135に搭載されたBTD12 および TP-14アーム(TD135Mk.2 1966年)の力によるところが大です。 thorens_btd-12sthorens_tp14
現在、市場にあるこのアームのほとんどは軸受回転部のベアリングや支点部に経年劣化と腐食が見られ、スムーズな動きが出来ないものがほとんどという現状ですが、これもきちんとレストアしてやると驚くべき感度の良さを示してくれますが、それは動作においてだけではなく音にも大きく向上をもたらします。 これらのアーム、鉄板プレスシャシーのTD135に使えば全体的にHi上りになります。 TD135の高域を押さえ低域を持ち上げないとどうしてもバランスが上かぶりしてしまう。 レストア、その後の調整において周波数バランスを取るのが難しくなるのです。 この傾向はTD135の能力が上がれば上がるほど出てくるのは何故でしょう。 1961年より、という時期を考察すると理由が判ってきます。 トランジスターアンプの登場です。 低域の物足りなさはアンプリファイアーの強力なダンピングファクターによる制動力で補えば良くなったからです。 また真空管アンプの場合、例えばマッキントッシュ等は少々低域が増強されるようなものになっていてバランスがとりやすい。 こう考えるとTD135というレコードプレイヤーはトランジスターアンプと真空管アンプの双方へ二段構えで対応していることになります。 それゆえ現代において使っても充分な働きをすることが出来るのです。 
それより前の機種、TD134とTD184は1958〜59年ごろからリリースされた機種で、製造を終えたのが1965年あたりとされていますが、1965年にはTD124Mk.2とベルトドライブ型TD150が発売されています。 TD135にはMk.2がありますが、134にはそれらしいものが今のところ確認できていません。 従って134は7年くらい同じ型で売られていたと考えられます。 だが、134には最初の頃TD124初期型と同じモーター、ステッププーリーが組み込まれており、その後モーターが135と同じものに移行します。 ステッププーリーは旧型のままです。

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TD134 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・TD184

134には135にはないものがあります。 それはTD124のセンタースピンドル軸受け部をそのままスケールダウンしたものです。 このすごく手の込んだスピンドル軸受けこそ134が135には決して劣らない品である証しです。 これも135が発売された1961年あたりになると135と同じスピンドル軸受けに移行します。 そうなると134と135の差というのはBL104とTP-14のトーンアームの違いとプラッターのサイズだけになってしまいます。 だがその音質の差は大きく、135に組み入れられたTP-14アームはHi-Fi仕様で音は明確に立ち上がり、音によって音楽の姿を現すタイプであり、134に用いられたBL104はどちらかと言えばHi-Fiというより音楽愛好家仕様でありTP-14のように微に入り細に入り音を拾うようなことをしない。 BL104はまず音楽の全体像をつかみ、音を有機的に配置する。 それによって音楽を表現するような再生の仕方をしてくれます。 BL104は見かけはオールドファッション的で、現代の感覚から見れば少々オモチャっぽく見えるでしょうが、それは間違っています。 このアームにはトーレンス社の技術がふんだんに盛り込まれているのです。 


TD184は1958年に発売とされていますが、そうだとするとTD124の初期型モデルの発売された時にはすでに生産を始めていたことになります。 そのためか現在グレイにある184にはTD 124のプラスティック軸受けを小型にダウンサイズした軸受けが入っています。 この個体にはアイドラーに1959年とゴム印があります。 またグレイでレストア中の10000万番台少し過ぎたシリアル番号を刻印されたTD124初期モデルには1960年と記された紙製シールが貼ってあります。 TD124初期型プラスティック軸受け仕様は18000番台が最も遅いモデルで1961年前半あたりのものであると推測されます。 そうなるとTD184も1958〜61年の3年間に作られたものがプラスティックスピンドル仕様であると推測されます。 またTD184というプレイヤーはTD224というオートマチックプレイヤーの先駆けとなったモデルではないかと考えています。 つまりTD224はTD184をさらに進化させたものであり、それゆえTD224の発売された1962〜3年にはTD184は生産をクローズさせてしまっています。 TD184の構造と動作はたしかに複雑ですが、思ったよりずっと使いやすいプレイヤーであることは確かで、たとえばTD134はレコードをかけ終わるとスイッチが切れ自動停止しますし、TD184は演奏終了と同時にアームがポップアップします。 その再生音については、柔らかく力強い音が出てきます。 135や134では少々荷の重い大型ホーンスピーカーもTD124初期型ほどの制動力はないが、不足するほどのものではありません。 そして鉄板プレスシャシーせいか中高音域がTD124よりずっと華やかな音が出ます。 このクラスのものでは出色のモデルではないかと思われます。 つづく
以上T氏


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