2013年03月20日

仏ピエール・クレマン社製小型プレイヤ

この数年来、仏ピエール・クレマン社製レコードプレイヤの存在は名器として認められつつあるようです。 ただ、その実力となると本当に知られているとは言いがたいのです。 というのは現状動いてはいても調子を落としているのがほとんどに違いなく、特にモーターはダイナミックバランスがくずれていて、ローターが不規則な振動を発生しているのです。 これは分解して回転部を研磨してその後時間をかけて調整します。 RIMG0432このモーターは大変精密に出来ており、本当に正確に回転させるには毎日5時間ほどエイジングをしなければなりません。 満足できる、いわゆる完調といえる状態になるまでは半年はかかります。 しかし、このような適切なレストレイションをピエール・クレマンに施すオーディオ店はどこにもないはずです。 したがって世に出回っているクレマン社製プレイヤはそのほとんどが不調であると、考えたほうが良いでしょう、これはTD124と同様のことですが。
さらに見落としてはいけないのはカートリッヂとアームです。 このアーム、シンプルな見かけとは違い内部構造が独創性に富んでおり、今日その本領を発揮させようとするならば完全分解クリーニングと回転部シャフトの精密研磨を施さなければなりません。 カートリッヂにしても同様です。 適切な修理調整を本国に依頼しないと、甲高いギスギスした音が勝ちます。 クレマン特有の輝きに満ちたキレのある高域、それに香しさも入念な調整があってこそのことです。
今回紹介するプレイヤはいつもの業務用ではなく、今でもヴィンテージ市場には時々出てくるものです。 この小型プレイヤ、以前はあまり良い評価をしておりませんでしたが、ちょっと本気でレストア調整してみることにしました。 RIMG0087理由は、業務より小さいとはいえモーターはほとんど変わらず、アームもショートタイプですが基本は業務用と同じでありながら、業務用とはれっきとして音の差がある。 これは何なのかを確かめたくなったからです。 レストアはまずアームから始めました。 分解してみると軸受け部に汚れとわずかな錆び皮膜が発生しており、これによりスムーズな動作が妨げられています。 これでは音の荒れは出て当然です。 次にモーターを再調整し、回転中のノイズを極限まで減少させると同時に回転の質を上げていきました。 キャビネットは以前製作したものを仕立て直したもので、構造はダンピングファクター帰還型であり、フィードバック量は通常より弱めにかけてあります。
音質についてはフィリップスの回路によりオランダの友人が作製したプリアンプとB&O社製スタジオ仕様モノブロックを組み合わせて試聴しました。 スピーカーは独シーメンス・コアキシアルと英フェランティM1です。 コアキシアルで聴くと切れ込みのある音と低音部にあるソリッド感がバランスよく再生され、フェランティでは切れ込みよりも全体に力強さがみなぎった音に高貴さが具わって聞きほれてしまいます。RIMG0475 いずれにもクレマン一流の明快さに香りが添えられています。 試聴後、モーターの気になる部分を再調整しましたら、わずかに残っていた歪っぽさはほとんど聞き取れないほどまでになり、調整を完了しました。 クレマンのカートリッヂはフランスの放送局だけではなく、Pathe/Ducretet Thomson/Discofil Francaise/Versailles社等ほとんどのフランスにあるレコード会社に納入されただけあってフランス音楽に対する反応力の高さは抜群ですが、EMTのようにただダイレクトに輪郭の濃い再生音でもなく、レコードに積極的に何かを加えて聞かせようというくくりのカートリッヂでもありません。 ですのでレコード自体の不出来はカバーしてくれません。 しかし、ものは考えようで、このカートリッヂを使用していれば、自然に良い出来のレコードばかりをコレクションに加えるようになりますので、コレクターにとっては愛聴するレコードの格が知らず知らずのうちに上がって、喜ばしい結果になるのではないでしょうか。
キャビネットの製作図とバラした写真を載せますので、ご参照ください。 

EPSON004RIMG0422

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以上T氏



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