2013年03月22日

レコードとCD

レコードとCD。 CDが登場した頃、いろいろとありました。 大方の意見は鮮明さという点でCDが優り、ふくよかさや自然さという点でレコードに分があるというものでした。 今となってはああそう、と信じるわけにはいきません。 CDが出始めたころを思い出してみてください。 CD用に録音されたものか、アナログ用のテープからの転用なのかで評価は異なりますし、末期を迎えたレコードの音質水準は史上最低のシロモノだったことも考慮しなければなりません。 
いきさつはどうあれ、今日においてはCDとレコードの関係を公平な立場で見ることができます。 しかし、論理的な思考に基づいた意見がほとんど無いのが不思議です。 レコードとCD、優劣ばかりに走らないで、CDディジタルという新しい選択肢が出来たことを喜ぶべきで、シンプルに便利さを享受すればよいのです。 間違った認識を持っているからCDというものに誤解が生じているのです。 もともとCDというフォーマットは商品として発案されたものであり、商品であるからには製造者側は売らなければなりません。 売れなければ商品ではないからです。 売れてこそ商品なのです。 商品というものを売るために製造者はなんでもします。 発売してしばらくはレコードをこきおろしたり、CDの長所を必要以上に吹聴したりもしました。 もちろん評論家たちも協力しました。 これまで所蔵していたレコードを全部処分してCDに鞍替えしたと宣言した評論家もいたくらいです。 CDディジタルを売る側にとってはレコードは一刻も早く市場から退場願いたいと思っていたことでしょう。 カートリッヂの生産も大部分は終了し、交換針ももう供給されないというデマがオーディオ市場に流れました。 情報はコントロールされ一般のひとたちはそれを信じるようになりました。  ユーザーに選択のチャンスはほとんどなかったのです。  レコードは過去のものとなったのです。 あれから何十年とたちました。 しかし、彼らの思惑とは裏腹にレコードを聴く人がいなくなることはありませんでした。 先日の報道によれば昨年のレコード販売量は前年の二倍増とのことです。 この数字は団塊の世代がレコードに戻ってきたアナクロニズムだけでは割り切れない事実であり、遠方にもかかわらずグレイを訪れる方には30代40代の愛好家も少なからずいらっしゃるというのも考え合わせるとレコードとCDは共存し始めたのかもしれません。 優劣を論じる時代は過ぎたのかもしれません。 事実若い人たちと一緒に音楽を聴いていると、彼らの耳は先入観に固まったベテランの耳よりもみずみずしく音に接しているのが良くわかります。 レコードは古いフォーマットかも知れません、でも若者たちをふりむかせるだけの力を十分に具えています。 若い人たちがレコードに親しむのを妨害する方たちもいます。 ほかならぬベテランのオーディオマニアたちです。 オーディオに対して誤った知識にまみれ、本質を見ることをせずただただ経験の年数を誇って、短絡的に答えを導き出してしまうひとたち。 若い人たちに対し、こうした伝え方は絶対あってはなりません。 音楽を楽しむのにCDもレコードもないのです。 CDを痛烈にこき下ろす方に限って、肝心のアナログをやかましく歪みだらけで再生していたりします。 良質なアナログ再生を果たしているひとはCDの音を悪くは言わないものです。 
CDがアナログレコードと違う点がひとつ思い当ります。 百年以上前のレコード誕生期を語るときに欠かせないこと、制作者側の熱い動機です。 何としても家庭で音楽を好きな時に聴きたい、という切なる欲求です。 その後レコードが大量に生産される体制に入っても、ポピュラー音楽分野で莫大な利益が上がる一方、クラシック部門についてはほとんどのレコード会社は儲け度外視で制作を続けました。 どれだけ儲かるかなどと考えていては何もないところから何かを創りだすことなど出来ません。 CDはどうでしょう。 レコードが誕生した時のような清冽な欲求はどこにもありません。 志のあるや無しや、その差がレコードとCDの一番大きな違いではないでしょうか。 CDが世に出たとき、レコードより長時間収録可能というのがウリでした。 LPでは到底不可能なくらいの曲数が収録されていたものです。 今、そんなCDはオペラくらいしかありません。 ポップスCDはかえってかってのLPより収録曲が少ないくらいです。 レコードを駆逐した長所だった長時間収録はいつの間にか減りました。 平気でこんなことをするのです。  商売優先で音楽を捉えている、その志の低さがCD最大の弱点だと、つねづね思っています。 DECCAもEMIもすでにDECCAでもEMIでもないのです。 再生音楽も容赦のない時代に入っていきます。
以上T氏




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