2013年04月06日

別格90000番台Mk.2 完結編

90000番台Mk.2 について書いてからもう一年が経ちました。
昨年書いた3つの文をもう一度読んでいただければ幸いです。

別格TD124 Mk.2 90000番台を検証する
別格90000番台Mk.2最終形態
別格Mk.2専用敷板の製作

今回はその後Mk.2がどのような道をたどったかを書いてみます。
この個体のために専用敷板を製作して試聴してみると、キャビネットを専用のものにしないと敷板との整合が取れないことに気付きました。 そこでキャビネットを製作していましたら、買い手が決まってしまいました。 結局とことんまでこのMk.2の実力を引き出してやろうというわけで、取り付け予定であるSME3012専用アームボードも作らざるを得なくなりました。
前にも書きましたが、このMk.2は他のものとはダンピングファクタの働き方が異なりますので、キャビネット構造は特殊なものになります。 重量からして1Kgあるかないかの至極軽量にしました。 このプレイヤにとってはキャビネットの質量が何の意味も持たないと結論に至ったからです。 
ただ、働きのみあれば良い。

RIMG0696


そのためにはキャビネットの振動を素早く流すことが肝要でした。 また振動を一旦外に出してコントロールするとうまくいくのではないかと、考えました。 写真にあるとおりキャビネット下にアルミ板がわたされ、両端に金物とネジを付けました。 ネジをキャビネットに接触させるとバランス、浮かせるとアンバランス状態になりギターでいえば開放弦です。 それをコントロールするためにアルミ板の中央にコイルバネがネジのまわりに仕込んであります。 締めていくとと振動が少しずつ抑えられ、弛めれば振動が開放されていく仕組みです。 これを四辺に取り付け、音を聴きながら調整していきます。 どこを締め、どこを開放するか、どの程度締めるか、どの程度弛めるかで振動の調整は無段階に可能になりますが、同時にユーザーの度量も試されるのです。
アームボードはヒノキ材に人工漆を塗って鏡面仕上げとしました。 形状が少し変わっています。 TD124にロングアームを取り付けた時の弱点であるアーム本体がプレイヤのシャシー振動の島の外に置かれてしまうのを避けるために、このような形状にたどりついたのです。 アームボードは上面と下面がどこでも平行にならないように滑らかな段をつけています。 振動が揃わないようにするためです。 さらにボードには風変わりな金属板を取り付けました。 アームボードが持つフィードバックの働きをコントロールするためのものでテコの原理で成り立っています。 茶色の三角体は鉛で出来ており回転することが出来ます。 これを回して和声の響きの構成を変えることが出来ます。 その他にも調整する箇所を設け、定位や音響ハーモニクスを変化してユーザーの好みに近づけることが可能です。 
このキャビネット、反応力のカタマリであり、どこをどういぢっても音が変化します、もちろん。 RIMG0682数えてみると30か所ほどいぢる箇所がありました。 これらをすべて調整して音を変えていくわけですが、30か所がどれも連動して働くといったい何通りの組み合わせが出来るのか、それもすべて無段階なのですから、考えただけでノイローゼになってしまいます。 
本体のMk.2ですがあれから2回モーターを分解調整しました。 もっと良い音が出るはずと考えたからです。 1カ月ほどあれこれやって、どうやらキャビネットの可変力に敏感に反応するモーターに仕上げることができました。 
例によって、シュアM44の現行品を取り付けて視聴しました。 一聴して、初めて聴いた時と今では鳴り方が変わってしまいました。 基調にあるアポロ性、地中海サウンドはそのままなのに。 しかし、音に影が無い、芯もない、それでいて明快そのもの、はっきりしたまぼろしを見る音です。 まぼろしはあちこちの可変箇所をいぢると空間に現れては消えてしまう。 初期型エンポリウムシリーズに聴く実態そのものの持つ怖さとは別の、否それよりもっとコワイ音です。 しかし、このプレイヤから湧き出る音はまぎれも無くコンサートホールで聴く音にちかい。 形もなく、香りもない、しかし、実在する。 そんな音が出てしまっているのです。
繰り返しますが、相当ヤバイプレイヤです。 ただのマニア だと途方に暮れてしまうのは目に見えています。 何しろちょっとネジを動かすだけで音がコロコロ変わる、ミリ単位の調整が必要になるのです。 しかも、変わる前の音を記憶していないと調整はどの方向に向かっているのかわからなくなる。 レコード再生における極限の機械式ミキシングコンソールのようなものです。 
こんな性格のプレイヤですから、お客様にご来訪いただき聴いてから判断していただきました。 さいわいにも気に入ってくれて、直ちに車に積んで家路に急がれました。 その毎夜長い時間を調整に費やしておられるとのこと、作った方も相当ビョーキですが使う方はそれ以上のビョーキだとしか言葉が見つかりません。 この項おわり
以上T氏
RIMG0704

読んで見ていただいたとおり、こうなると機械式プリアンプだ。 低域・高域をコントロールすると言うよりも、もっと高い次元、ハーモニクスとかソノリティを司る装置として捉えられる位置にプレイヤは存在する。 伸びのある音を出さない限り、アナログの面白さは半減する。 良いプレイヤを良い状態にして出力をコントロールする。 振動のアンプリフィケイション、自然に素直に奏でられる音楽に包まれる。 アンプとスピーカーで音をねじ伏せようとするとダイレクト感からどんどん離れていくのを、すでに皆さんは知っているはずだ。




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