2013年04月23日
ステレオ効果って???
世の中のステレオ至上主義(ステレオでなければオーディオではない主義)を信奉する方々の頭の固さにはつくづく辟易します。 二つのスピーカの二等辺三角形の頂点に座りたがり、そこから動こうとしない。 音場が固定されているから自らも定められた場所から動くことは許されないと思い込んでいるのです。 つまり二台のスピーカの合到点において明確な音場が出現するのである問いことであり、空間に音が固定化されたということになります。 そうならなおさら、聞き手が動いても、音場はそこに存在するはずです。 それが出来ないというならば、ステレオの空間定位力はたいしたものではないことになります。 こうした二等辺三角形の聴き方はヘッドフォンのように使っているとしか思えないのです。 ステレオ効果には、ヘッドフォン的聴き方とは別にもっと広い音場を体験するという目的があるはずです。 せっかくスピーカが二つあるのだから、モノーラル一発よりもずっと広大な音場をつくりだすのは簡単でしょう。
ここでちょいと頭を動かして、別の角度から見てみると、音の合到点で聴くということは、音が固まった状態で聴くということではないでしょうか。 固まった状態とは限りなくモノーラルに近い。 ということはステレオとは2つのスピーカを使用してモノーラル音場を作り出すことになります。 理由のひとつは、演奏家が動かずにいるからでしょう。 こんな風に想像してみてください。百人編成のオーケストラ奏者たちが椅子に座らずに動きまわっていたとしたら、ハーモニクスはめちゃくちゃになるし、音楽はぐちゃぐちゃです。 だから演奏者があまり動き回るとステレオ効果にとってはあまり好ましい状態ではなくなるのです。 たとえばモータウン歌手オーティス・レディング。 彼のライヴ映像を見ると、マイクロフォンの前にきっちり立ってウタってはいません。 左右に体をくねらせ動き回る、そのためにステレオ録音の時はしばしば録音エリアから外れてしまうのです。 小さいスピーカで再生するときはまだ良いけれど、大型業務用スピーカに類するものではその空間定位力の強さがあだとなってオーティスの音場がゆらゆらと揺れてしまい、音酔いしそうになることがしばしばあります。 ステレオ的に演奏者がアクション過多であるとそうした現象が起きてしまいます。 これがオペラの場合、おおむね左右の動きより奥行きで解決を図ることが多く、そこには人間の聴覚に配慮した知恵があります。 人間の聴覚にある音との距離感と方向性に対する絶妙の扱いです。 音の距離感にたいする認識はまず音の大きさがかかわっており、通常私たちは大きな音は近くに聞こえるし、小さな音は遠く感じることが多いのです。しかし、これは何も音量のみで判断されることはありません。 残響音により、距離感は判断されてもいるのです。ある程度大きな音でも、その音に距離感を示す値の残響が付いていればその値から距離を感じ取れるし、残響なしの音であると距離感は感知しにくいのは明白です。 つまり、ステレオ録音は残響によるマジックであるということで、仮にレコードに含まれるすべての音から残響をとってしまうと平板な音のカタログになってしまいます。 つづく
以上T氏

以上T氏