2013年04月28日
ステレオ効果って 最終回
ここまで書けばお気づきでしょう。 響きに重きを置く英国製コーナーシステムを使用しての再生法は、ステレオ再生で最も有効なチャンネルセパレイションという面ではあまりパッとしないのも確かです。 しかし実際のところ演奏会でオーディオ的ステレオ効果が上がる曲ってどれだけあるでしょう? 遠近法を利用したオーケストラ曲はあるにはありますが、チャンネルセパレーションを意識させる曲はほとんどないのではないでしょうか? とするならばチャンネルセパレイションの意味はどこに? それは商売の中にあります。 もともとステレオ録音というものはイリュージョンであり、まやかしの要素が強いのです。 録音エンジニアが操作して右に定位させたピアノ(実際はスタジオ左奥かもしれないピアノ)を彼らの言うとおりに右に定位させて、どれほどの意味があるというのでしょう。 エンジニアの言うとおりに再生できてもなんのご褒美ももらえはしません。 というより、それは音楽のよろこびを創り出す音を再生するというより、録音エンジニアが図った位置デザインの確認作業にすぎないのではないでしょうか。 さらにチャンネルセパレイションを重んじないステレオ再生というものは必然的にモノーラル再生に近づいていくことになります。 実はここにもしたたかな知恵が隠されています。 音源を一つにまとめたほうが認識し易いという人間の生理をスピーカーの製作者たちはよく理解していました。 そこに英国流グッドリプロダクションが息づいています。 グッドリプロダクションの本質のひとつは聴覚にある心理メカニズムを重要視したことにあります。 ステレオによる現象の説明的効果音や様相の変化にのみ耳を奪われて反射的にしか聴けなくなり、挙句の果てがスピーカの正面のある特定のポジションで聴かなければという条件が加わる、こんな心理状態で音楽に浸ることが出来るのでしょうか。 そこをグッドリプロダクションは突いているように思います。 最後にもう一つ大切なこと。ステレオ再生における演奏者と聴き手の間の線引きはモノーラル再生では原則存在しません。 どこで聴いてもよいのです。 英サウンドセールス社のスピーカーシステムは50cm前で聞いても、5m離れて聴いても音楽の深みに触れることができます。 こうしたことは優秀なモノーラルシステムではしばしば可能になるのです。 そこのあたりはステレオ・モノーラル再生の本質で、いつかもっと詳しく書くことにします。 この項おわり
以上T氏
以上T氏