2013年05月12日

TD124初期モデルのステッププーリが鳴く

エンポリウムシリーズTD124Mk.1初期モデル問題点としてレストア完了後ステッププーリがチリチリとかカタカタと鳴くことが挙げられます。 完全にクリーニング研磨されると発生する現象であり、レストアしていない個体ではまず出ることはありません。 何故なら回転軸部に汚れや固形化した油カス、はたまた錆や酸化被膜が詰まっているため、ステッププーリの自然な動作が妨げられた状態にあるためにカタカタと鳴ることはありません。 オイルダンプならぬゴミダンプ状態によるためにノイズさえ出ないのです。 単純にステッププーリの鳴きは粘着性のあるグリースを詰めればある程度消すことは可能です。 しかし、グリースを詰めるとレコード再生時音が伸びず高域に歪みっぽさが出て、丁度ラウドネスがかかった再生音を聴いているようになります。 何ともならない不自然さが残り、肝心の再生音は死んでいます。 最近こうしたカタカタやハムといったノイズを消したために音質が劣化して考え込んでしまうユーザーが何と多いことでしょう。 これこそ本末転倒なのです。 
RIMG0191ステッププーリの鳴きを改善するひとつの処方があります。 モーターハウジングの4隅にあるボルトのナットの締め加減がポイントです。 初期モデル特有の材質と振動の相互関係を感じ取り、そのうえでトランスポート部にある3つの回転体の力学バランスを調整してやるのです。 エンポリウムモデル(初期型)に採用されている皿型のステッププーリはシャーシから立てられたシャフト棒の上にボールベアリングを介して乗せられています。 さらにボールがステッププーリ先端の真鍮部分の穴にぴったり固定されるタイプと自在に回るタイプがあり、固定型はシャフトの接触点が安定しているためか鳴く個体は少ないのです。 一方自在型はベアリングがステッププーリの中で回転するため鳴きが発生する割合が多いのです。 さらに鳴き現象をつぶさに観察すると、原因はステッププーリか、モーターの何かしらの不都合か、の二つに分けて原因を調べたほうが、鳴き現象の解明に有効だと思われます。 
前者の場合、いくつか思い当たります。 まず経年変化によるステッププーリ軸受け部の合金のわずかな磨耗により笑う減少が発生する。 二つ目にベルトが掛かる外周部にキズがあって回転に支障をきたしている。 三つ目は外周部に汚れが付着してワルさをしている。 これらの原因からくる鳴きは経験からして、アイドラが一旦接触してプラッターが回転し始めた時点で消えることがほとんどであり、よほどのことが無い限り鳴りっぱなしということはありません。
後者のようにモータ自体に由来する原因であると、アイドラがステッププーリに接触しても止まらないのです。 この場合いくらステッププーリやその周辺を点検してもだめです。 そこでこのやっかいな現象を一から考え直してみたのです。 当時のスイスの製品管理水準からしてTD124は出荷された時に鳴くことなどありえません。 本来はこうした現象はエイジングが進めば治まるのが普通のはずです。 が、逆にどんどん鳴きは大きくなっていきます。 そこでためしにモータハウジングを取り付ける4隅のナットを適当なトルクで締めてみると、あれだけ盛大だった鳴きが止まったのです。 ちょうど自動車のタイヤのホイールバランスをとるのに似ています。 正確にバランスを調整しないとまっすぐに走らないばかりか走行中の振動によりタイヤが本来の力を発揮できないで危険さえ生じることもあります。 モータの振動も同じことです。 ナットの適切な締めの調整によりタイヤのホイールバランスと同じ結果が得られるのです。 この調整で精確に回転のバランスを取るとステッププーリは精密な回転するようになり、それが再生音にてきめんに反映します。 音が沈みこみ、深みが増してSN比が上がります。 結果として静かな音場から音色がぐっと浮かび上がるようになるのです。 音質は確実に1クラス上がります。 つづく
以上T氏



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