2013年07月14日

タンノイ ステレオカートリッジ

英タンノイ社のモノーラルカートリッジ( VARILUCTANCE MAGNETIC MONO CARTRIDGE )については知る人のみがその実力を評価できる品です。 知る人のみと断りを入れるのは、このカートリッジの力を発揮させるにはそれなりのノウハウが必要になるからです。 これを知らないとタンノイ社のモノーラルカートリッジはGEバリレラ型と同じ水準ぐらいでしか鳴りません。 しかし完全にその力を発揮していなくとも、音の一つ一つのタッチと風格は紛れもなくヴィンテージ・カートリッジの名器といえましょう。 
同じタンノイ社のステレオカートリッヂ( VARI-TWIN MAGNETIC STEREO-CARTRIDGE )となると、とたんに評価は下がってしまう。 その結果としてタンノイ社はステレオ化に失敗したと思われています。 グレイのA氏でさえ、もう少しどうにかならないかと、ため息をついてしまう有様です。 だが、私はそうは思えなかった、その理由としてこのカートリッジが生まれた時代は、各社一斉に自前のステレオ用カートリッジを発売しはじめており、そんな時代に明らかに失敗作に感じられるような品を作るだろうか。 作るはずはないのです。 RIMG0326仮に本当に失敗作だとすれば原因として、ステレオ化に対する練り込みが足りなかったとするのが順当だと考えられます。 しかし、レコードのステレオ化は、急に決まった訳ではなく、それなりの準備期間がありました。 では今日、このカートリッジがその力を発揮できないのはなぜか? それを思案していくと、またまたシュアM44に行きつきます。 またまたです。 M44というカートリッヂ、我国のオーディオ界では安物でカマボコ特性の元気はあるが、荒い音でオーディオを始めたばかりの人のためのものと評価されていた。 タンノイのステレオカートリッジもシュアM44と同じような追従性を持った品かもしれない。 そうであるとしたら、オルトフォンのモノーラル用カートリッジのような明確な個性を感じさせない理由も何となくわかってくる。 さらに、追従性ということを考察するとどうしても英国というお国柄を入れておかねばならない。 シュアM44がオーディオ装置のクオリティに対する追従性に力を発揮するとしたら、タンノイのステレオカートリッジはオーディオ機器固有の音楽力に対する追従性に的を絞ったものではないのか? それを確かめるため、テストしてみました。 
テストに使用した機器は、プレイヤがTD124Mk.1とMk.2、アームはSMEとオルトフォン、アンプとスピーカはいつも通りのものです。 まず、TD124Mk.気EMPORIUM(初期プラスティック軸受け仕様)と40000番台のメタルスピンドルを使ってみました。 EMPORIUMとSMEの組み合わせでは、太めの朗々とした音が出てきますが、少々大味と思えなくもない。 しかし音の艶といった点では、タンノイのカートリッジの特長が出ていると感じられます。 メタル仕様のTD124Mk.気砲垢襪肇侫薀奪箸兵波数特性を意識してしまうような音に変わり、弦の少々金属臭いところがあります。 また、音自体が強張ってしまうところがあり、音の伸びがやや不足しがちなところが残念です。 今度はもう一台のEMPORIUMを持ち出し試聴してみたところ、こちらの方がずっと良い結果が得られました。 この差はどうして発生したのかといえば、初めのEMPORIUMは3000番台、つまりTD124Mk.気虜能藉モデルに属する品で後のものは10000番台後半のプラスティックスピンドル仕様モデルとしては最終型に近いものなのです。 この二台の音質にはある特長があります。 それは再生音の圧縮のかけ方で、初期モデルの方はかなり圧縮率が高くなっています。 それに対して最終型の方は圧縮より拡張する力の方が強い。 初期モデルの場合、オーケストラがクレシェンドにおいて徐々に圧縮がかかり、やがてフォルテ出開放されると時にクレシェンド(圧縮)とフォルテ(拡張)の対比率が圧縮側によっています。 これに比べて最終型は、クレシェンドの圧縮が必要以上に取られていない。 それゆえフォルテの音は初期モデルに比べて解放感が大きい。 対比率が拡張側に入っている。 人間の聴覚性を考えに入れるとすれば、拡張(開放)が行われる前にあまりに圧縮が加わった音を聴いていると耳が押されてしまい感覚が鈍くなってしまう。 ここから判断出来ることは、タンノイのステレオ用カートリッジの性格がレコードプレイヤー固有の圧縮力に反応するものであることが理解される。 次にMk.兇冒着してみると、音としては見事な音が再生されるのですが、タンノイのカートリッジとの音の方向性、目指すべきものの差異が現われてしまう。 Mk.兇量椹悗慌擦箸蓮音の響きを実体として捉え、存在理由を明らかにするのが本質にあり、それがタンノイのカートリッジの響きをマクロ的にとらえながら立ち位置を表すものと食い違ってくる。 いわば音楽の方向性が別々に進行していく状況になる。 どうしても違和感がつきまとってしまう。 さらに同じ英国生まれのガラード301(ハンマートーン)とコニサークラフツマンではどうかと思い使ってみました。 301では大学の先生の講義を聞いているような感じになってしまう。 すべての音が解説つきです。 コニサークラフツマンはAタイプを使いましたが、タンノイのカートリッジへの反応力の点では抜群によかった。 自由勝手にのびのびと音が出てくる、何より音色が抜群に優れており、トーレンスで感じた圧縮率等は何処にも感じられない。 タンノイ社のステレオ用カートリッジを使う場合は、コニサークラフツマンがベストであると思われます。 さて、オルトフォンのアームではどう変わるのでしょう。 今回のテストではTD124以外には使えないので確証は得られませんでした。 TD124で試聴した限り大した音は出ず、何より周波数帯域がSMEと比較して狭く、タンノイのカートリッジの高域の艶や甘さが出てこない。 あんの少ない大福みたいな音になってしまいました。 
今回の実験で判ったことをまとめてみると、タンノイのステレオ用カートリッジを上手く鳴らすには、何よりレコードプレイヤー固有の圧縮率を良く知った上でなければ良い効果は得られないということ。 次にこのカートリッジの追従性はシュアM44のようにオーディオ機器のクオリティに反応するものでは無く、レコードプレイヤー其の物のキャラクター(音楽性への整合)に働き、働かされるタイプだということ。 したがってこのカートリッジを使う場合、オーディオシステムそのもののあり方を変えなければ良い結果は期待できないのです。 これは同時に私たちのカートリッジの使い方が少々ねじ曲がったものになってはしないかを示唆しています。 今日私たちがヴィンテージ時代のカートリッジを使うにあたり、大体はオーディオ装置がそれなりにセッティングされていて、そこに色々なカートリッジを付ける手法で行っています。 しかしタンノイのステレオ用カートリッジが生まれた時代はそうではなかった。 ステレオ用のアンプもスピーカーも同時に誕生したのです。 そこにユーザー側のの対処として、二つのやり方がありました。 ひとつはすべてステレオ用システムを導入する。 もう一つは既存のモノーラルシステムにステレオ用アームとステレオ用プリを使いパワーアンプとスピーカーをそれぞれもう一台追加する。 しかしながら、いずれの方法を用いるとしても、ステレオ化の主役はカートリッジであり、なぜかアンプやスピーカーはもう一台追加すれば良いが、モノーラルカートリッジを2個使ってステレオというわけにはいきません。 ステレオにはどうしてもステレオ用カートリッジが必要になってくるのです。 そうであるなら、カートリッジを中心に据えたオーディオシステムが考えられます。 つまりオーディオシステムにカートリッジを組み込むのではなくカートリッジにオーディオシステムを組み入れるという発想。 これは相当な難事で、実行するにはよほどオーディオ的キャリアを持った人でなければ出来ないことです。 しかし当時の英国には、この様なことを平気でこなすプロフェショナルが存在します。 何しろ製品、商品としてのオーディオ機器を取り扱うのではなく、誂えると言うのが英国人のオーディオなのですから。 これらの事柄を考え合わせるとタンノイ社のステレオ用カートリッジの使い方が少しずつ判ってくると思われます。 必要最小限として、まずアーム、アンプスピーカは純英国製で固めることです。 プレイヤーはコニサーかコラロがベストだと思われますが、TD124でも何とかなるでしょう。
タンノイ社のステレオカートリッジに合うアームは、今のところSME3009 (S1かS2 ) しかありませんが、当時の英国には私たちが今だ目にすることの出来ないアームがゴロゴロしていました。 したがってその中には必ずタンノイ社のステレオカートリッジを最高に鳴らす品があったはずです。 もし幸運にも私がそれらのアームに巡り合い、タンノイのカートリッジを組み込んで再生し、良い結果が得られたなら、その時は新たに記述してみたいと考えています。 いつになるか判りませんが。 この項おわり
以上T氏
EPSON004

注) SPECIFICATION TERMINATION : 50K mini 100K recommended  とある。 このカートリッヂで音色まで再生しようとすると、コントロールアンプの入力インピーダンスも調整すべき。 当時のカートリッヂのキャラクタは千差万別であり、入力感度と入力インピーダンスを考慮してはじめて適正な再生ができるということ。 コントロールアンプのカートリッヂロードを47KOhm に固定していてはヴィンテージ時代のカートリッヂに備わった多種多様な魅力を引き出せずに終わるだろう。



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