2013年07月18日
仏ピエール・クレマンとヴィンテージ市場
近年モノーラルレコードの良さが愛好家に認められ、それに伴いクレマン社のカートリッジ、アーム、フォノモータ等が人気を博しています。 この十数年フランスプレスのオリジナル盤がレコード市場で英国盤よりも高値水準に達します。 オリジナル盤市場はまず米盤に始まり、英盤、そして仏盤に至ってその全盛を迎えました。 しかし再生の面で問題があったのも否めません。 SPUでの仏オリジナル盤再生には大きな無理があり、フランス盤の持つ良さが発揮されない、というより毛色が違う音楽になってしまっていました。 これはオリジナル盤愛好家の中でもフランス盤を指向する人たちにとって大問題です。 結果、十数年前からオリジナル盤を扱うレコード店だったグレイのA氏が本当の意味での趣味人にクレマンを分けたのがわが国でのクレマンの歴史の始まりでした。
ユーザ側としては仏製モノーラルレコードをかけるのは、やはり仏のカートリッジが相応しいと思うのは自然でしょう。 高価なフランス盤に刻まれた演奏家のエスプリをらくらくと再生できるクレマンのカートリッヂはそうは簡単に手に入るものではなかったのです。 当時はインターネットもなく、フランス盤自体を探すのさえ大変であり、ピエール・クレマン社製の再生装置など現地の愛好家と太い人脈がないかぎり入手など出来ない相談でした。 まして彼らはラテン系、ただの商売関係ではとても相手にされず、お互い気に入った友人同士になって初めて融通してくれるようになるのです。 この数年インターネットでクレマンが販売されるようになり、わが国のオーディオ店も簡単に入手して販売するようになりました。 しかしA氏が初めてクレマン社の製品と出会ったのは二十年近い前、仏にレコードを買い付けに行った時、当地では目利きのレコードコレクタの多くがクレマン社のレコードデッキやカートリッヂでレコードを聴かせてくれたと聞きます。 その再生音にノックアウトされたA氏は彼らに頼み込んで手に入れ、持ち帰って聴いてみると、やはりフランス盤はこれで聴くのがスタンダードであり、フランス盤本来の音を聴けるのはこれしかないと確信するのです。 当時我国ではようやくオリジナルレコードの良さが愛好家に知られ、A氏が仕入れたフランスの名盤はすぐに売り切れ状態となり、足繁くパリに出向いてレコードコレクタに会い、レコードだけでなくクレマン社の製品もどんどん買いこみました。 彼にはレコードだけでなくオーディオの世界でもフランスの上質なものをかぎ分ける力があった。 そんなわけでみるみるクレマン社の製品がA氏のもとに集まってきたのです。 どのくらいの数であったかはA氏も定かではないが、相当な数であったことは確かで、それを物語るように先日、物置を整理していたら小箱の中にクレマンのカートリッジが十数個出てきたそうです。 また交換用のカンチレバー針先もかなりの量をストックしてあり、アームにしても色々な種類があり、これは現在出番待ちといったところです。 フォノモータに関しては、業務用のものが6台、その内の1台は英国人(Coup d‘Archet の社長)に出荷されました。 民生用のもの(これは皆様が良く目にするもの)が1台、これは最近まで当店で活躍していましたが売れてしまいました。 業務用のものはフォノイコライザ付きスタジオ検聴用とみられる品はA氏が自宅で使い、残りの4台の内3台は売れ、最後の1台も予約済でキャビネット製作中です。 カートリッジをそんなに早く売っていたのに、長い間A氏はレコードデッキを販売していませんでした。 試聴してみると思ったほど音が良くなかったからだとか。 そのため倉庫で長い眠りに就くのですが、私がトーレンスTD124のレストアを始めたことにより事情は変ります。 ある日、A氏が自宅にクレマン社の業務用フォノモータがあるが、どうも思ったほど音が良くない、一度見てもらえないかと相談され見ることにしました。 彼の自宅から運ばれてきた業務用フォノモータを見て、私はこれで悪い音が出るはずがない、と直感します。 各部が大変精密に作られているのに驚きますが、精密ではTD124も負けていません。 しかしクレマン社のフォノモータ部は精密さの意味が違います。 このフォノモータ部には動作にともなう逃げがまったくなく、レバースイッチもトランスポート部もキチキチです。 モーターが難物で重量が600gもあり、大きなローター(しかも上手に空冷用のファンが付いている)がかなりの速度で回転し、バランスが狂うと振動が発生してしまいます。 モーター自体の具合が悪い場合、鉄製のシャシー(厚さ6mm位)を振動させてSN比が直ちに悪化する。 だが、一旦分解してしまうととんでもないことになる。 バランス取りが難しく再調整は困難を極めます。 それなりに動いたとしても、それは動いているだけで無機質であり、クレマン社製レコードデッキにとっては真の音楽的表現力は生まれないのです。 ここがクレマン社のモータのいちばん難しいところで、どの位の振動と質が最良の音となるかを見分けるのに苦労しました。 ここまで書けばおわかりでしょうが、業務用クレマンのフォノモータ部全体を直せるようになるにはそれ相応の経験と知識がなければなりません。 ご存じの通り、今までクレマン社のデッキ、カートリッジ、アームについてはブログで余すところなく紹介しており、未だかつてグレイのように細密に記述したところはおられないはずです。 さらに業務用をホームユース向けにするにはキャビネットが重要になってきますが、業務用の常として一台一台仕様が違います。 その仕様に合わせてキャビネットの構造も変えなければならない。 クレマン社のカートリッジ、アーム、フォノモータ部の本質と構造の成すところが何処にあるのか知るとそうせざるを得ません。
一例としてこのキャビネットはA氏の自宅のデッキに適合させて製作したもので、スケルトン構造で各金具のすべてが振動の可変とダンピングコントロール出来るようになっていしす。 クレマン社のカートリッジを求めるにあたっては、業務用フォノモータ部に取り付けた時の音を知っているところから購入される方が良いと思います。 その理由は本来クレマン社のカートリッジはこの様なフォノモータ部と組み合わせて使うよう作られたものだからです。 その音を聴かずしてクレマン社製カートリッジの音質を述べるのは、それ自体ナンセンスなのです。 以上T氏
フランス語は英語やイタリア語よりももっとくっきりはっきりと口を動かして発音しないと通じない。 つまりフランス語のあの滑らかさはイントネーションにあるのであって発音自体は強いダイナミクスが必要なのが会話してみるとわかる。 クレマンの装置の面白さは、英国製品に共通なダンプする働きが希薄であり、もっとストレートでまっすぐに音楽が出てくるところだ。 緻密で質感を具えたキレ味するどいダイナミクス。 音楽のうなずき方にエランがある。 いわくありげな香水の瓶の色。 音から音へとつながりように軽み。 これがフランスの演奏家や音楽を輝かせる再生の妙味であるに違いないし、クレマンによる再生音がフランス盤のスタンダードであるというのがこの十数年思い知らされてきた事実だ。 あとくちスッキリ。 以上A記

一例としてこのキャビネットはA氏の自宅のデッキに適合させて製作したもので、スケルトン構造で各金具のすべてが振動の可変とダンピングコントロール出来るようになっていしす。 クレマン社のカートリッジを求めるにあたっては、業務用フォノモータ部に取り付けた時の音を知っているところから購入される方が良いと思います。 その理由は本来クレマン社のカートリッジはこの様なフォノモータ部と組み合わせて使うよう作られたものだからです。 その音を聴かずしてクレマン社製カートリッジの音質を述べるのは、それ自体ナンセンスなのです。 以上T氏
フランス語は英語やイタリア語よりももっとくっきりはっきりと口を動かして発音しないと通じない。 つまりフランス語のあの滑らかさはイントネーションにあるのであって発音自体は強いダイナミクスが必要なのが会話してみるとわかる。 クレマンの装置の面白さは、英国製品に共通なダンプする働きが希薄であり、もっとストレートでまっすぐに音楽が出てくるところだ。 緻密で質感を具えたキレ味するどいダイナミクス。 音楽のうなずき方にエランがある。 いわくありげな香水の瓶の色。 音から音へとつながりように軽み。 これがフランスの演奏家や音楽を輝かせる再生の妙味であるに違いないし、クレマンによる再生音がフランス盤のスタンダードであるというのがこの十数年思い知らされてきた事実だ。 あとくちスッキリ。 以上A記