2013年07月23日

オルトフォン社製アームのこと

デンマーク・オルトフォン社はモノーラル時代から現在まで多種に渡るアームを製作販売しているのはご存じのとおり。 ヴィンテージマニアのみならずアナログ初心者まで広く使われているのがRMG212とSMG212です。 しかしこれらのアームの本質、真の働きについて今まで語られたことはなかったと私は考えています。 もちろんそれなりの紹介記事はありますが、単なる聴覚における印象あるいは現象を述べているだけであり、アーム自体が持つ音色についてとなると急に尻すぼみで終わってしまいます。 試聴のレコードプレイヤが現代型ベルトドライブプレイヤとかガラード301、401のようなものを用いているからです。 時折TD124も登場はしますが、やってはいけないことをやっていたりしている試聴テスト記がほとんどです。 完全に調整され、すべきことをしたTD124を使えばオルトフォンのアームの本性も直ちに理解できるし、オルトフォンのカートリッジの状態の良し悪し等は一発で判るはずなのに、そこが書かれていないのです。 オルトフォン社のアームの本質が判ったからと言って何も私にはマズイことはありません。 正しい情報は正しく伝えねばならない。 それが知識となりオーディオをより良い道に向かわせてくれるからです。 EPSON005オルトフォンのカートリッジSPUがニューヴィンテージにおいてはもはや役に立たない品として認識されたとしても、それはこちら側の考え方であってユーザー側には別の考え方があっても良いのです。 オーディオは軍事訓練ではなく、自由にものが言えることが大切なのです。 RMG212とSMG212は原則的にSPUを使うためのもので、これ以外のオルトフォン社のアームも本来オルトフォン社製のカートリッジのためのものであると考えるべきでしょう。 つまりSME社製アームとは根本からして異なった考えで作られたもので、SMEのような追従性は殆どないと思われます。 自社の固有の音色をきっちりと出すことに徹しています。 それゆえ、他社のカートリッジを取り付けて聴くと、様々な現象が現われて、仮に取り付けたカートリッジに固有の音色があると、再生周波数帯域のどこかで反応のあり方が変わってきます。 喧嘩する所と仲良くする所があちこちに出てきて、それが効果的に働く場合は魅力的な音が出たりもするし、反対に喧嘩する様な個所では纏まりのない音楽の中心核がどこにあるのか判らない音になったりします。 だがシュアM44のような自ら固有の音色を持たず、追従性を本質として持つカートリッジは反応が部分で起こるのではなく、全体で発生します。 その反応をみることによりRMGとSMGの本質が明らかになるし、同時にSPUというカートリッジの本当の姿も見えてきます。 試聴に使う機器はいつも通りグレイのオフィスのものです。 まずRMGは周波数特性がカマボコ型に聴こえますし、SMGでは低域が少しふくらみ、中域のフラットガ少し下がり、高域がちょい上がる。 これがシュアM44で試聴した感想であり、SPUでも同じような傾向になります。 この現象を見ると、これらのアームでは固有の信号に対する圧縮率に差があるということです。 アームには固有の電気信号に対する圧縮力があります。  RMGはSMGより圧縮力が高く、SMGはゆるくなっている。 つまりRMGは信号を圧縮するタイプ、SMGは拡張するタイプになります。 これが理解されればRMGにはカンチレバーのサスペンションが硬めのもの、SMGには柔らかめのサスペンションを持ったSPUが合うと推測できます。 さらにRMGもSMGもシュアM44を使った時とSPUを付けた時に同じような鳴り方をする。 ということは固有の周波数帯の形をもっているか、それなりに性格としてはフラットであると考えられます。 つまりSPUの専用アーム的な立場であってもアーム本体で音を作るようなマネはしていないと言うことです。 さらにRMG、SMGの本質を探るため、今度はシュアM44をモノーラル接続にして、モノーラル再生を行ってみることにしました。 使用する機器はプリアンプがフィリップス社の回路を基にオランダのエンジニアが作ったものにB&Oの放送局用の10Wアンプリファイア、スピーカはグッドマン社製12インチのフルレンジユニット(アコースティカル社と提携時の製品)で製造年は1947年となっています。 エンクロジャはフェランティ用のものをグッドマン用にモディファイした共鳴型です。 試聴の結果は驚くべきものでした。 高域がきれいさっぱり切り落とされてしまいました。 このユニットは40Hz〜13000あたりまでフラットに出、高域は一オクターブ30dbくらいで落ちてゆくと思われる品ですが、SMGとシュアではどう聴いても10000までしか聴こえてこない。 前に繋いであった。TD124Mk.供SME3009 S2 ではシンバルの音がきちんと聴きとれたのに、SMGでは聴こえてこない。 こちらの場合はフルレンジ再生が充分果たせていないために、SMGではHiの伸びたウーファを聴いているようなものになってしまった。 カートリッジは同じシュアM44で、違うのはアームだけなのに。 思いつくのはシュアM44の本質である追従性がSMG212ではうまく働いていないことです。 EPSON006次にこうも高域が落ちたことはSPUというカートリッジはかなり高域が暴れる性質を持っているはず。 それゆえシュアM44では高域が落ちてしまった。 そうなると、SMGの持ち味はSPUを押さえ込むダンプ力にあることが判ってくる。 そして、SMGとSPUで聴く時、弦が時折金属的な嫌な音を出す理由も理解できる。 SPUの本質としては、キメの荒いカートリッジに属し、それをRMGとSMGのダンプ力が押さえ込むことによって、独特のサウンドが得られるのでしょう。 一方クラシックでギラつく傾向はJAZZでのシンバル再生に力を発揮することも確かであり、古いJBLの075ツイターには大好物の音でしょう。 よくJAZZマンがSPUを好んで使うのもここのところの音がたまらないからだと思います。 だがRMGの場合は、SMGのようにはいかないのです。 両者の聴覚的な周波数帯域の形が違うからです。 RMGのカマボコ特性は、グッドマンのフルレンジでは低域をカットしてくれるので、その分高域へのかぶりがなくなりSMGより高域の落ちは少なくなるはずだからです。 TD124Mk.機GOODSELLアンプ、VITAVOXでのステレオ再生と今回のモノーラルシステムの音の差をどう捉えるか、疑問がいぜん残っているのは否めません。 何しろ同じSMGとシュアM44をステレオ再生で使用しても、モノーラルシステムの様な問題が発生しなかったのです。 原因はスピーカのバランスにあると考えられます。 ステレオ再生でのVITAVOXの場合クロスオーバ500Hzで低域のホーンと高域用ホーンが分解されている。 そして原則的にフラットな特性を持っています。 対してモノーラル再生に使用したグッドマンのフルレンジは高域が落ちているうえエネルギー自体もVITAVOXのコンプレッションドライバに及ぶところではありません。 つまり特性的に下ぶくれになっており、それをカバーしてくれるのがカートリッジとアームの追従性なのですが、SMGにはその力がないので、まるまる低域が高域にカブってしまい、結果としてラウドネス的な聴覚レンジになってしまったのです。 また信号に対する反応力といった点で、コーン型フルレンジに較べてコンプレッションドライバは小さな信号に対して機敏に反応する特長があります。 こうした要素が相まって差がはっきりと生まれたのでしょう。 SMGとシュアM44の組み合わせはフルレンジユニットには使えないのかといった疑問が生じるかもしれませんが、物は考えよう、使いようがあります。 簡単です。 高域に寄ったバランスのユニットと合わせれば良いのです。 たとえばヨーロッパ製品であれば、フィリップス社のユニットやフランスSUPRAVOX(50~60年代)のユニット等、いくらでもあります。 アメリカ製であればエレクトロボイスのトライコアキシャルも。 しかしながらレコードプレイヤ部でハイカットを行うことはリスクが大きくなるのも確かで、ちょっと間違うと面白味のない音になってしまう危険性があります。 そのようなことをしなくてもRMGやSMGにSPUを使えばフルレンジでも高域が減衰することはまずないからです。 それにしてもSPUの音数のすくなさ、音の拾い出しにおいて使用者の意思性向など全く意に介さないところ、聴くより聴かされている感覚をどうしても覚えてしまい、時々どうしてこんな音を聴かねばならないのかと感じるのは私だけでしょうか。
以上T氏


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