2013年08月01日
THORENS TD184のさらなる可能性 2
*其の肆
TD184 EMPORIUMもキャビネットに大きく左右される
およそTD124系プレイヤ中、TD184ほどキャビネットによって音質がかわるモデルはないでしょう。 キャビネットがダメだとTD124の30000番台、40000番台よりちょい上くらいの音しか出ない。 もちろん品格といった点ではTD184 EMPORIUMは優ってはいるのですが。 これはTD184 EMPORIUMの固有のダンピングファクターが流動的かつ不安定になりやすいことを示しています。 つまり鉄板シャシではダンピングファクターを保持する力が弱いのです。 しかし、これをマイナスと捉えるのは、リニアオーディオ式発想です。 ニューヴィンテージではこれをプラスに変えられるのです。 ダンピングファクターが流動的であることは別の面から見ればフィードバックをかけやすいのです。 だからキャビネットの働きが重要になってくるのです。 以前TD184を販売した際、クリーム色塗装に仕上げたキャビネットを黒にしてほしいというお客様よりのご要望がありました。 出来ればフェンダーのサンバーストの黒に、という無茶ぶりです。 無理と断ったのですが、やるだけやってみようということになり、何とか満足を得るくらいの色に仕上げました。 そして試聴してみると、びっくりが待っていました。 アイボリーの時とはぜんぜん音が違うのです。 音圧レベルは上がるし、低音は伸びる、高域で刺激的な音が出ない。 驚きです。 この現象は私にペイントによるキャビネットの音の差を考えるきっかけを与えてくれたのです。 塗料の色による硬度の差であったり、塗り方などなど。 アイボリー色のキャビネットは仕上げまでに8回塗っています、そこに赤を2回塗り、その後赤と茶と黒を混ぜたものを3回塗る。 その後黒を2回塗り仕上げに黒に茶と赤と青を少量混ぜたものを3回塗った。 都合18回塗ったことになります。 そんなに塗ったらベトベトになるのではと思われるかもしれませんが、それは大丈夫です。 塗り重ねるたび磨き出すからです。 しかし、塗り重ねたのが音の良さに繋がるとは思っていません。 重要なのははむしろこれらの色、塗料の素材と重ね方にあると考えています。 この様な色の塗り方をしたのは、塗料に入る光を屈折させてフェンダー・サンバーストのピアノブラックに近くするためでした。 光の効果と同じことがキャビネットに流れ込むTD184 EMPORIUMのダンピングファクターに働いているのではないか。 特に注目したのは黒と赤の塗料の重さでした。 かき混ぜると黒の塗料はかなり重く、それに比べて赤は軽い、そして間に塗った色はその中間である。 こうした異なる色の性格の差位がうまい具合に働いて、キャビネットに独特な力をもたらしている、そうであるならば今後は塗料が及ぼす働きを計算に入れてキャビネットを仕上げていけば良い結果が得られることになります。
*其の伍
TD124 EMPORIUMとTD184 EMPORIUMの聴き比べ
一聴してまず判断できるのは両者の音のしまい方の違いです。 TD124 EMPORIUMは音をコントロールしようとしますが、TD184 EMPORIUMはすべてをコントロールしようとはしない。 したがって低音域ではTD124 EMPORIUMはズシンとくる再生表現を目指しますが、TD184 EMPORIUMではブンと鳴ります。 明確さでは、TD124 EMPORIUMはすべての音をきっちりと並び変え音楽的な音場を作り出しますが、TD184 EMPORIUMはあまり音の並び変えはしない。 したがって緊張感といった点ではTD124 EMPORIUMの方が聴き手にしっかり聴けと言っているような印象を与えます。 TD184 EMPORIUMは別に聴かなくてもいい、聴きたければ時々聴けば良いと言っているようです。 SN比の点では無論TD124 EMPORIUMは優れており低音域の歪み感がTD184 EMPORIUMより良好です。 TD184 EMPORIUMはSN比よりむしろ中音域のスムーズさによってTD124 EMPORIUMより劣るSN比を聴き手の耳からスルーするようにデザインされており、聴き疲れない音が出てくることになる。 このあたりにトーレンス社の音作りのノウハウが見え隠れします。 また、TD184 EMPORIUM型は当時のJBL、ハーツフィールドやパトリシアン・クリプッシュ等の大型ホーンスピーカーを鳴らすことも充分想定して製作されたと思います。 したがってこれらのスピーカーの共通点である量的には多いが、決して充実した中音域を所有していないタイプのスピーカーには威力を発揮したと推測出来ます。 さらに最高音域での差異についてはTD124 EMPORIUMは太さの均一な線のように高域が再生限界まで伸びて行くように感じられ、TD184 EMPORIUMはやや線の太さが変動する傾向にあり、それが音の意外性に結びつく所でもあるのです。 TD184 EMPORIUMの最高音域はしばしば聴き手の予測とは異なった働き方をします。 これを音楽的な表現力ととるかあるいは欠落ととるかは、聴き手の音楽的センスによるでしょう。 これに対しTD124 EMPORIUMは聴き手の予測に合致した表現法をとり、それゆえ聴き手は安心感が得られます。 これらのことはアンプリファイアに何を採用するかによって変化してきます。 確実に変化するのは、TD184 EMPORIUMだと思います。 TD124 EMPORIUMより気難しいところがあるからです。 したがって反応力のあるクオリティを持っているオーディオ機器でなければ実力の半分も出ないということも想定されます。 この項おわり
以上T氏
上のシャシ裏面写真の矢印の先のセンタースピンドル軸受部はTD124の同じ部分をそのままサイズダウンして製造された部品で、これだけでも相当なコストがかかっているに違いなく、それだけでもトーレンス社の意気込みが伝わってくる。 後期になるとこの部分は一体型に簡略化されTD134やTD135に受け継がれていく。 しかし、この軸受部にこそ音質に重要なファクタが潜んでいるのは、TD184EMPORIUM型を所有してレコードを再生すれば明らかに認識できる。
TD184 EMPORIUMもキャビネットに大きく左右される
およそTD124系プレイヤ中、TD184ほどキャビネットによって音質がかわるモデルはないでしょう。 キャビネットがダメだとTD124の30000番台、40000番台よりちょい上くらいの音しか出ない。 もちろん品格といった点ではTD184 EMPORIUMは優ってはいるのですが。 これはTD184 EMPORIUMの固有のダンピングファクターが流動的かつ不安定になりやすいことを示しています。 つまり鉄板シャシではダンピングファクターを保持する力が弱いのです。 しかし、これをマイナスと捉えるのは、リニアオーディオ式発想です。 ニューヴィンテージではこれをプラスに変えられるのです。 ダンピングファクターが流動的であることは別の面から見ればフィードバックをかけやすいのです。 だからキャビネットの働きが重要になってくるのです。 以前TD184を販売した際、クリーム色塗装に仕上げたキャビネットを黒にしてほしいというお客様よりのご要望がありました。 出来ればフェンダーのサンバーストの黒に、という無茶ぶりです。 無理と断ったのですが、やるだけやってみようということになり、何とか満足を得るくらいの色に仕上げました。 そして試聴してみると、びっくりが待っていました。 アイボリーの時とはぜんぜん音が違うのです。 音圧レベルは上がるし、低音は伸びる、高域で刺激的な音が出ない。 驚きです。 この現象は私にペイントによるキャビネットの音の差を考えるきっかけを与えてくれたのです。 塗料の色による硬度の差であったり、塗り方などなど。 アイボリー色のキャビネットは仕上げまでに8回塗っています、そこに赤を2回塗り、その後赤と茶と黒を混ぜたものを3回塗る。 その後黒を2回塗り仕上げに黒に茶と赤と青を少量混ぜたものを3回塗った。 都合18回塗ったことになります。 そんなに塗ったらベトベトになるのではと思われるかもしれませんが、それは大丈夫です。 塗り重ねるたび磨き出すからです。 しかし、塗り重ねたのが音の良さに繋がるとは思っていません。 重要なのははむしろこれらの色、塗料の素材と重ね方にあると考えています。 この様な色の塗り方をしたのは、塗料に入る光を屈折させてフェンダー・サンバーストのピアノブラックに近くするためでした。 光の効果と同じことがキャビネットに流れ込むTD184 EMPORIUMのダンピングファクターに働いているのではないか。 特に注目したのは黒と赤の塗料の重さでした。 かき混ぜると黒の塗料はかなり重く、それに比べて赤は軽い、そして間に塗った色はその中間である。 こうした異なる色の性格の差位がうまい具合に働いて、キャビネットに独特な力をもたらしている、そうであるならば今後は塗料が及ぼす働きを計算に入れてキャビネットを仕上げていけば良い結果が得られることになります。
*其の伍
TD124 EMPORIUMとTD184 EMPORIUMの聴き比べ
一聴してまず判断できるのは両者の音のしまい方の違いです。 TD124 EMPORIUMは音をコントロールしようとしますが、TD184 EMPORIUMはすべてをコントロールしようとはしない。 したがって低音域ではTD124 EMPORIUMはズシンとくる再生表現を目指しますが、TD184 EMPORIUMではブンと鳴ります。 明確さでは、TD124 EMPORIUMはすべての音をきっちりと並び変え音楽的な音場を作り出しますが、TD184 EMPORIUMはあまり音の並び変えはしない。 したがって緊張感といった点ではTD124 EMPORIUMの方が聴き手にしっかり聴けと言っているような印象を与えます。 TD184 EMPORIUMは別に聴かなくてもいい、聴きたければ時々聴けば良いと言っているようです。 SN比の点では無論TD124 EMPORIUMは優れており低音域の歪み感がTD184 EMPORIUMより良好です。 TD184 EMPORIUMはSN比よりむしろ中音域のスムーズさによってTD124 EMPORIUMより劣るSN比を聴き手の耳からスルーするようにデザインされており、聴き疲れない音が出てくることになる。 このあたりにトーレンス社の音作りのノウハウが見え隠れします。 また、TD184 EMPORIUM型は当時のJBL、ハーツフィールドやパトリシアン・クリプッシュ等の大型ホーンスピーカーを鳴らすことも充分想定して製作されたと思います。 したがってこれらのスピーカーの共通点である量的には多いが、決して充実した中音域を所有していないタイプのスピーカーには威力を発揮したと推測出来ます。 さらに最高音域での差異についてはTD124 EMPORIUMは太さの均一な線のように高域が再生限界まで伸びて行くように感じられ、TD184 EMPORIUMはやや線の太さが変動する傾向にあり、それが音の意外性に結びつく所でもあるのです。 TD184 EMPORIUMの最高音域はしばしば聴き手の予測とは異なった働き方をします。 これを音楽的な表現力ととるかあるいは欠落ととるかは、聴き手の音楽的センスによるでしょう。 これに対しTD124 EMPORIUMは聴き手の予測に合致した表現法をとり、それゆえ聴き手は安心感が得られます。 これらのことはアンプリファイアに何を採用するかによって変化してきます。 確実に変化するのは、TD184 EMPORIUMだと思います。 TD124 EMPORIUMより気難しいところがあるからです。 したがって反応力のあるクオリティを持っているオーディオ機器でなければ実力の半分も出ないということも想定されます。 この項おわり
以上T氏
上のシャシ裏面写真の矢印の先のセンタースピンドル軸受部はTD124の同じ部分をそのままサイズダウンして製造された部品で、これだけでも相当なコストがかかっているに違いなく、それだけでもトーレンス社の意気込みが伝わってくる。 後期になるとこの部分は一体型に簡略化されTD134やTD135に受け継がれていく。 しかし、この軸受部にこそ音質に重要なファクタが潜んでいるのは、TD184EMPORIUM型を所有してレコードを再生すれば明らかに認識できる。