2013年12月28日
開け、ゴミ
アリババが扉を開くと、そこには眩いばかりの金銀財宝がありました。 だが、それはアリババだけに見えるものであって一般の人々にはただの粗大ゴミです。 ヴィンテージオーディオとはそういうものです。 開けゴマに相当する呪文はフルレストアに他なりません。 中途半端なレストアなら、使わずに手元において眺めていた方が良いのです。 それこそが先駆者たちに対する礼儀というものです。 何の知識も経験もない者がやれば一発で壊れてしまう。 高度な音楽再生を行う機器として作られたものであれば尚更のことです。 所有者になったからと言って使う資格があるとは限りません。 買うことと使うことは別の次元の話と認識すべきです。
実に多くのヴィンテージ機器が破壊されています。 50年も使われていないアンプにいきなり定格電力をぶち込むことは避けねばなりません。 トランスをパーにしてしまうのがおちです。 真空管時代に作られたスピーカに大パワーのトランジスタアンプを接続していきなり大出力で鳴らしたらボイスコイルがやられます。 レコードプレイヤにしても、ロータの回転軸が狂っているのも知らずに、動くからと使っていればやがて異常に発熱し、ブレがひどくなり定速まであがることなく、トルクもなくなりトロトロと死んだ状態になり静かな回転音には覇気がなく、果ては電磁界コイルが切れていく。
本当のお宝であったものが、完全なゴミとなってしまう。 だが、アリババならぬ一般のユーザが果たしてお宝かゴミか見極められるのでしょうか。 ヴィンテージオーディオのプロでも本当の所よく判らない製品もたしかにあるにはあります。 見た目良い音が出そうなお宝めいた品でも実際直して聴いてみると案外そうでない品もあるし、パッとしたところのない品であっても音が良い場合もあります。 何事もやってみなければわからない、私もそうです。 それゆえ、どんなつまらない品、ヴィンテージオーディオ市場で商品価値がないと思われている品でもまず徹底的にレストアして、聴き、そして品定めをします。 その品が本当にダメなものであったとしても、何処にダメな原因があるか知ることにより得るものが必ずあるからです。 そのような試みの結果がたとえばシュアM44のユーザが増加する現象が生まれるのです。 いまとなってはシュアM44を安物というユーザはあまりいないでしょう。 繰り返しになりますが価格と能力はイコールではない。 これも開けゴマと同じく明快な呪文です。 以上T氏

