2014年02月11日

水ぬるきディアベッリ

泉から汲んできたばかりの水。 液体質の音。 ピアノ弾きがすこしくあたためて注ぎ込んでいく。 RIMG0849静寂、ロンド、花の開くさま、しずくの瞬き、一杯に吸い込む大気。 おばあちゃんがバラの色にささやく毒を耳にたらす。 磁器質の倍音を伸ばして広がっていく左手の雄弁な低音の水槽。 びくびくする一音を含んだベートーヴェンの気配が自由に室にほとばしる。 雪が降りそうで降らない海辺の朝に、聴く。 
EMI製EPU100のピックアップシステムとTD124エンポリウム仕様で聴いたルフェビュールのディアベッリ、あらためて心動かされた。 ベートーヴェンをドイツ音楽から解き放して、おばあちゃんは語る。 その風情、生きているよろこび、

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数時間後オフィスにEPU100のトーンアームにM44を取り付けたTD124エンポリウム仕様があるので、同じ盤を聴いてみた。 するとどうだろう、EPU100カートリッヂとM44という違いよりも同じトーンアームが再生するみずみずしい液体質の音、明日はまた違うディアベッリを弾きそうなルフェビュールの動くドキュメンタリ性、どちらにも共通している。 驚く。 おどろくというよりうれしくなった。 トーンアームの調整がうまくいくとカートリッヂの存在をわすれさせ、音楽が湧き出してくる。 どちらもVITAVOX CN191で音場を拡大して聴いてもその感覚は変わらないのだから、これは発見になった。 ディアベッリはルフェビュールとEPU100のトーンアームにかかると『春の水ぬるき』。 漂よう音のフレグランス。


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