2014年04月04日

トーンコントロールのこと 3

トーンコントロール不用論を否定する

トーンコントロール等必要ないと唱える人は製作者たちです。
あろうが無かろうが、そんなことは問題ではなく、ただ良質な音楽再生が果たせればそれで良い、大体アンプのレヴェルが低いからトーンコントロールが必要になるのではないか。 彼らの言い分はこういうところです。 何故今日に到るまで、彼らは頑なにトーンコントロールの弊害を説くのでしょう。 まず、コストがかかる。 でも、彼らのアンプリファイアの価格はそれを補って余りあるはずです。 上質で効果的なトーンコントロール回路をプリアンプに組み込むのは大変である。 50年前のアンプにはあたりまえのように搭載されていました。 鮮度が落ちる。 確かに英QUADや米AUDIO-RESEARCHのプリアンプでは、トーンコントロールポジションにすると鮮度がガクッと落ちるのは体験済です。 しかし、GOODSELL/ARMSTRONG/PYEはたまたLEAKでさえもトーンコントロールで鮮度が落ちることはありません。 西洋音楽の発声法で言う『声をかぶせる』 はご存知でしょうか。 のどから出る声を上あごでかぶせ、口腔蓋を上げて頭部の骨を震わせることにより、体全体が振動して深い声が出る。 これで歌に音楽を吹き込むのです。 多くの欧米人はこの発声法で会話しますので話に魅力を添えますが、多くの日本人は違います。 外国映画の予告編のナレーションと、江戸っ子の話し言葉の違いです。 英国製プリアンプのトーンコントロールはこのかぶせ具合が周波数をコントロールするのに似ており、日本製プリアンプのトーンコントロールにはこのかぶせがありません。 あくまでレコードの音をかぶせて深みと響きを出すのですから鮮度が落ちるという表現はあたりませんし、実際にグレイでレコードの再生音を聴いていただいて、鮮度が落ちているとおっしゃったお客様はいらっしゃいません。 普通の音だね、と言う方はたくさんいますが。 

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トーンコントロール部を外付けにせず、プリアンプ内部にきっちりと組み込み、他の回路とはたらきあって綿密に再生音のかたちをコントロールできれば、トーンコントロールあってのプリアンプの存在は大きく、結果として回路機構が強力な可変力を生み出すことになります。 こうなるとLPレコードが原音を再生するためのものではなく、原音とはまた違うレコード独自の美しさを表現しようとする媒体であることを実感できるようになります。 それが絵画的かあるいは写真的か、それともダンス的なうつくしさなのかはユーザの考え方ひとつ。 それだけのものをヴィンテージレコードの制作エンジニアたちは創り出そうとしていました。 トーンコントロールの操作法を身に付けてしまえば、多くのヴィンテージレコードが次から次へと聴かせ場が続く、息もつかせぬエンタテインメントであることを実感していただけるはず。 音楽を高みから見ているばかりではなく、音楽家と同じ目線で聴く、高名な演奏家ではなく、自室で『おまえとおれ』あるいは『あなたとわたし』の関係で接することができるのは、トーンコントロールにより実現できることが多く。  こうしたレコード体験はどこをどういぢっても変わらないプリでは味わえません。 ノブを回して音の伸びやかさ、音色の陰影やテクスチュアの肌理を気持ちよいところまで持ってこられるコントロールアンプリファイアでないと。 
たしかにヴィンテージアンプリファイアに匹敵するプリアンプを製作するには相当な技術と音楽素養を要します。 鮮度が落ちるとか、歪が増えるとか、そういう言い訳をせずにはっきりと言えばよいのです。 ヴィンテージ時代のような強力な可変力を具えたプリアンプは作れないと。 
LPレコードが誕生した時代の技術者たちは、手間もコストもかかるトーンコントロール回路をたいへんな工夫をしてほとんど全てのハイファイアンプに装備させました。 LP再生に必要だったからです。 彼らが絶対不可欠としたトーンコントロールを、LP再生に不用なものとあたりまえのように切り捨ててしまった今日のアンプでレコードを聴いて平気でいられるものでしょうか。 ご都合主義の復刻盤ならまだしも、高額なヴィンテージレコードを愛蔵して、変わり者と言われながらもそれなりの装置で聴くひとには志があるはずです。 もう一度聞きたいのです。 苦労して入手したヴィンテージレコードをトーンコントロールなしに聴いて平気でいられますか?

目標に向かって突き進むことが最速・最善の道とは限りません。 
目標・目的そのものがこちらに向かってくるようにすることも一考の価値があります。
トーンコントロールとはそんなものです。
遠くのどこかではなく、すぐ近くにあるのです。 つづく
以上T氏






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