2014年08月18日

トーンコントロールのこと 14

トーンコントロール操作によって起きる現象その2

では英国製アンプリファイアで起こることが、何故米国製アンプではめったに顕れないのでしょう。 ここに我が国のトーンコントロールに対する誤った見識の根源があります。
それについては英国と米国の再生音とオーディオ機器への思想の違いをまず見なければなりません。 英国のレコードを聴くと、彼らはコンサート会場で聴く音楽と、レコードで聴く世界は別物とみなし、レコードでしか聴けない音のエンタテインメントの世界を目指していると同時に、何より再生音が電気臭いことをことのほか嫌います。 この嗜好は大戦前に製造されたFERRANTI−M1スピーカを聴いてもわかります。 それなりの電気的歪みはあってもこのユニットから電気臭い音は出ないのです。 英国のオーディオ創始者たちが唱えたグッドリプロダクションは、すでにそのころから始まっていたにちがいありません。 米国はどうでしょう。 電気再生は電気を使うのだから電気臭くて当然であり、否、電気臭い音がしないとオーディオらしくないと感じているフシがあります。 

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このような英国と米国のオーディオ感の違いについてほとんど私たちは知らされないできました。 ヴィンテージ時代の英国のアンプリファイアを、その本来の実力で再生された音を聴いた人には、米国製マランツやマッキントッシュのアンプが、良く出来たギターアンプに聞こえてしまったとしても、別に不思議ではありません。
こうした英米両国のオーディオ感の違いは、トーンコントロールの在り方に顕著に出ています。 英国のものは操作次第で多様なハーモニクスを醸成させてナチュラルディストーションに導きます。 米国のそれは意図的にエレクトリック・ディストーションを発生させて好みに合う音に変化させる、と言ってよいでしょう。 このやり方はジャズやポップスのヴォーカルにある特有な魅力である、艶や生き生きとしたアクセントを与えることが可能です。 なぜならばこうしたジャンルの米国プレス盤には録音自体が電気的な色彩感を帯びていて、トーンコントロールにより可変された人工的な信号に良くマッチするからだと考えられます。 米国製アンプを操作して女性ヴォーカルを再生すると、3D映画のように音像が飛び出してきたりすることがあります。 魅了される音であることは疑いようのないところです。 米国流のトーンコントロールのはたらき方は量的な動きそのままであり、+か−に回せばそのまま量的な音質変化が聴き取れます。 この量的な音質調整は決して質的変化をもたらしはしません。 どちらかといえば米国のユーザは英国ユーザのようにハーモニクスを好むというより、直接的な音を好む傾向にありましたし、音がひとつひとつ独立していないと満足しないようです。 量的なものが質的なものに変換されないと、ヨーロッパ盤は再生しにくくなるのは当然です。  日本製アンプのトーンコントロールももちろん米国の流儀に則っています。 そのためトーンコントロールを量的に調整する思想に染まっており、英国アンプのトーンコントロールのようにBASSとTREBLEを絞った方が、かえって音が伸びるという現象を目の当たりにしても、辻褄が合わないから認めたくないユーザがなんと多いことでしょう。 トーンコントロールの創出力を認めていれば、至極当然の現象なのですが。 どちらが優れているというのではありません。 米国盤には米国製アンプを、英国盤には英国製アンプというのが、一番すんなりくるはずですが、世の中には米国製アンプで英国盤をはじめとするヨーロッパ盤を聴いているひとがあまりにも多いので、書いておくことにしました。 つづく
以上T氏

参照ページ
トーンコントロールのこと
トーンコントロールのこと 2
トーンコントロールのこと 3
トーンコントロールのこと 4



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