2014年09月09日

回転する速度 6

それではCONNOISSEUR Type-B型(1958)と同時代のフォノモータ、GARRARD301(1955) と THORENS TD124(1958)における回転速度と再生音の関係はどうか、書いてみます。
GARRARD301はモータシャフトに取り付けたアルミ製円盤とそれを上下に挟む磁石で構成されるエディカレント機能により回転速度をコントロールします。 初期グレイ型は放送局の送り出し用として開発されたこともあり、ホームユース機CONNOISSEURのような定速回転下における音質の変化により音楽表現力を創出する能力はほとんど持ち合わせていません。 音楽表現力を得ようと速度つまみを回してもそれほど効果は上がらないのです。 このモデルをホームユースとして使用するならば、回転の安定性を持ち味と割り切ったほうが良いでしょう。 エディカレント機構による速度変更はスタジオにおける単なる規定回転数補正と、さまざまの音の加工(時間調整など)や演出のためでした。 空間に提示される音そのものがほとんど動かないため、音それぞれの固有時間軸の設定が割合大まかで、時々音の前後がズレを生じてもほとんどコントロールしようとはしません。 モノーラル再生時、あるべき音が消えてしまうこともあります。 時間軸の設定が甘いので他の音と重なって弱い方が消えてしまうという現象が起きるからですが、こうした音のカリカチュアライズは送り出し用として重要な要素なのです。 ステレオ再生時ではゆるぎない回転がもたらす、いかにも301グレイ型らしい再生音に寄与していますが、同時に残響などアコースティックな響きを減少させていることで音色が今一つぱっと花開かないきらいがあります。 ただ、これを好ましいと思う方ももちろんいらっしゃるでしょう。

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301アイボリタイプは途中から軸受がオイルタイプに変更されます。 これはコンシューマユースを意識した変更であり、後期になるにしたがいステレオ効果は良好になり、音の配列がきちんと出来るようになります。 しかしすべての音を出そうとするあまり、音楽的というより音としてのまとまりを強く感じてしまうのは否めません。 これにより定速回転下での良好な音楽再生がややそがれてしまうのが残念。 これはわずかな回転の差異が確定されないための起こることであり、グリースタイプからの変更にともなう各部品全体の見直しという構造的な仕様の変化がもたらした結果ですから仕方ありません。 モノーラル再生では生き生きとした音が出ますが、しばしばモノーラル特有の深みが出ずにノッペリとしてしまうこともあります。 
401については語るべき言葉が見当たらないので困ります。 平面平滑な音、山も谷もない平坦地を思わせる音です。 モノーラル再生では腰の弱さが出てしまい、ステレオ再生では音楽の魂を込めることが出来ないで音が空間に拡散するだけですから、回転速度を微調整しても再生音の質が変わることはありません。 

THORENS TD124はレコードが完全に普及した時代に誕生したレコードデッキであり、ごく一部がスタジオで使用されたとはいえ、基本はホームユースを想定して設計されました。 RIMG1394したがってエディカレント機構は単なる速度調整の働きだけではないのですが、CONNOISSEUR Type-Bのようにシナリやハジキで音楽に味わいをつけるのと違い、回転速度の変化が音質に対して穏やかに働きかける仕組みになっています。 これはMk.1の5.5Kgというプラッタの重量と質量がそうさせるのです。 たとえば今日はやけにハーモニクス豊かな良い音がすると思ってストロボを除くと、わずかにパターンが流れていたりするくらいの穏やかさなのです。 パターンの流れを微調整つまみを回して止めると、とたんに豊かなハーモニクスは消えてしまったりするのです。 

回転数を微かに変えて起きるさまざまな現象は、接続される再生機器が鋭敏な反応力で満たされて初めて起きることであり、レストアしていないTD124、あるいは初期性能にまで達していないアンプリファイアやスピーカでは、たとえ繊細な速度変化で音質を調整しようとここみても、ただ混乱を招くだけです。 逆に、ここに書いてある現象が手に取るように理解するユーザは、システムがある程度の水準に達している証しとなりましょう。 つづく
以上T氏

正しい回転数にあるからと安心する。 正しいというだけで済ませて、それで本質に迫れるのかな。 回転数の微調整で音質を変えられるのはレコードの特権。 テープやCD,PCオーディオではマネのできない芸当。


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