2014年09月12日

回転する速度 7

聴感覚とピッチコントロールによるトーンコントロール?

ハイフィデリティを意識した再生では、聴き手の気持ちが高揚していると音楽が早目に感じられ、反対にリラックスしていると遅めに感じることがあります。  また、音楽そのものはひどくゆっくり感じているのに、時間の進み具合が早い、そういう経験もあります。 LP片面は本来20分弱の演奏時間のはずなのに10分ほどにしか感じられない、おや、もう終わったのか、この曲はもっと長いと思っていたのに、という具合に時間が過ぎてしまうのです。 
こうした時間のマジックが起きるのは、フォノモータの回転の質が高いことが絶対条件になります。 良質な回転なくしては成立しません。 
プラッタの回転の質? どう判別するのでしょう。
こういうことがありました。 オフィスに来られたお客様が、三台のTD124を目の前にして、右側の一台を迷わず指さした。 『これにします』 このプレイヤだけが回転の質が違うとのたまわれたのです。 多少思い込みもあったのかもしれません、でも回転の質という点に関しては私も同感でした。 実際レコードを乗せて聴いてみると、そのプレイヤは見事な格調で音楽を再生してくれました。 
良質な回転がもたらすものは、音それぞれの時間軸をあるべき形に整え、それにより音の位置座標を的確にコントロールすることにあります。 これにより音は固有の時間を得て空間に羽ばたいていけるのです。  この時ハーモニクスが生まれます。 それは音と音の聴覚的な距離感により成り立っています。 聴き手から見て前の音とその後ろの音が重なっていると思えば解りやすいかもしれません。 つまり音を横から見れば、前の音と後ろの音は離れているけれど、前から見れば重なっているのです。 これがハーモニクスの小さな群れであり、実際の音楽はこうした小さなハーモニクスのクラスタで成り立っています。 いくつかの小さなクラスタが生まれ、強い力で引き寄せられて大きなハーモニクスを形作るのがオーケストラの全合奏によるフォルテッシモです。 こうした良好なハーモニクスの成就はカートリッヂの能力によるところが大きいのも事実です。 ですからオルトフォンSPUシリーズのように音数の少ないカートリッヂでは当然の結果としてハーモニクスのクラスタを形成する効率が少なくなってきます。 個人的な好みは別として、放送局の送り出し用としてならともかく、家庭用として芯に良質な再生を試みようとするならば、SPUは適切なカートリッヂとは言えません。 
冒頭の時間の早さと遅さを音楽的に充実したものとして成立させるためには、レコードプレイヤの役割とフォノモータ固有の働きの重要性は計り知れないものがあります。 それに注意をはらわないと、カートリッヂの能力がすべてをつかさどるという、今まで通りのオーディオの誤った思考法に陥ってしまいます。 つづく
以上T氏

ねっとり、さくさく、ガチガチ、ぬるぬる、軽い、さらり、液体質、ふうわり、ゴリゴリ、プラッタが回転する、どれも質が違う、そのうちにそれぞれのタチが見えてくる。 見えたとおりの音が出てくるから面白い。
 




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