2015年08月01日

新しいコンセプトでエンクロージャを製作する 5

5) 自然給気型エンクロージャ その1


それでは電気信号に対して音づまりせずにヴォイスコイルがとぶまで音量が素直に上昇するエンクロージャとは、どんな形をとれば良いのでしょう。 既成のエンクロージャ構造の示すところを確認していくと、これが自動車のエンジンとある意味似ているのが分かってきます。 エンジンブロックがエンクロージャだとすれば、ピストンはユニットにあたります。 ピストンを運動させるには燃料が必要です。 ユニットの動作に必要なのが電気信号です。 ピストンが動き始めるとシリンダ内部には圧力が発生します。 圧力が充分に高まったところで爆発させてピストンを押し下げ排気したのち吸気して連続動作します。 最初にスピーカとエンジンは似ていると言いましたが、実際のところは違います。 スピーカは実際には空気自体は動かないし、吸気も排気もしません。 エンクロージャ内における空気の密度の濃淡が出入りするだけです。 波でもなく圧力の濃淡です。 この濃淡の差が大きい時、つまり大音量時に濃淡がぶつかって消しあったり滲んだりして音づまりが起きるのです。 エンクロージャのほとんどの方式では圧力が高くなるにつれて音づまりが発生します。 濃淡の変形や消しあいを防ぐのに効果を発揮する方式があります。 
もうひとつ穴を開けてやることです。 
マフラだけだったエンクロージャにキャブレタを取り付けるような感じ、と言えばわかりやすいかもしれません。 確かにエンクロージャは実際に排気も吸気もしませんが、空気密度の濃淡はすさまじい速さで変化していきます。 空気は液体よりもはるかに粘性が小さいのですから、ほんの少しのことで濃淡の分布のありようは一瞬にして変わってしまいます。 できるだけシンプルにエンクロージャから外気に向けて濃淡を伝えるには、もう一つ穴をあけることは実に効果的でした。 音づまりどころか、音に伸びが出てきました。 空気の濃淡の伝導という視点から見ても空気の流れと同様、エンクロージャの出入り口をもう一つ開けるだけで画期的に好転することが試聴テストから確認しました。 これはドメスティックにレコードを鑑賞する最適音量時に適っている方式です。 これは室内に響きを満たして聴き手に音を伝える再生方式であり、スピーカからの音を聴きてめがけて飛ばすPA方式とは一線を画すものであり、PA的再生には出入り口を一つにして大音量で前に爆発的に通す方式のほうが理に適っていることは言うまでもありません。 つづく
以上T氏




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