2016年06月01日
グレイ型TD124キャビネット製作記 5
5 新しいキャビネットの製作
オリジナルに準ずるキャビネットを製作するにあたり、障害となるのは同じ木材が入手できないことにあります。 手近にある木材から探すしかありません。 ただ、オリジナルの形を真似ても意味は無いのです。 真似るべきは形ではなく、スピリットでありたい、それが私のプリンシプルです。
まず材料選びに時間をかけました。 桐では質量が不足するし、レッドシダーではやや赤みが強く音が甘くなる、松は油木なので響きがゆるい、ヒバは狂いやすくて音が痩せる。
残るはスプルースか? このスプルースという木材が怪しい。 ギターの響板に使われたり、メジャーリーグのバットの材料になったりはするのですが、私の知る限り建築用のスプルースはとうていそうした類いの材料にはなり得ないものです。 そもそもスプルースなる木材が重宝され始めたのはずっと以前からのことで、その時に扱ったものと今のスプルースとではまったく別の種類としか思えないほど異なるシロモノです。 幸いなことに私が普段作業している場所は、材木屋の作業場なので、直に豊富な木材の中から選別が出来ます。 それで長いことかかって、これは、と見える材木が見つかりました。 おそらく材木屋に20年以上は眠っていたであろう在庫品です。 言い換えれば売れ残り品です。
それはこのスプルースが硬すぎて、建築用としては不向きなものだったから売残っていたのでしょう。 おかげで、良い品質で長いこと乾燥した材料と出会うことができました。 何が幸いするか、わからないものです。
コーナー補強材もいろいろと物色してみましたが、杉材の廻り縁用のものを選びました。 柾目で赤味と白地のいわゆる源氏ものです。 これがオリジナルキャビネットと一番近いと見ました。
すべての材料を探し出すまでに半年近くかかってしまいました。 つづく
以上T氏
オリジナルに準ずるキャビネットを製作するにあたり、障害となるのは同じ木材が入手できないことにあります。 手近にある木材から探すしかありません。 ただ、オリジナルの形を真似ても意味は無いのです。 真似るべきは形ではなく、スピリットでありたい、それが私のプリンシプルです。
まず材料選びに時間をかけました。 桐では質量が不足するし、レッドシダーではやや赤みが強く音が甘くなる、松は油木なので響きがゆるい、ヒバは狂いやすくて音が痩せる。

それはこのスプルースが硬すぎて、建築用としては不向きなものだったから売残っていたのでしょう。 おかげで、良い品質で長いこと乾燥した材料と出会うことができました。 何が幸いするか、わからないものです。
コーナー補強材もいろいろと物色してみましたが、杉材の廻り縁用のものを選びました。 柾目で赤味と白地のいわゆる源氏ものです。 これがオリジナルキャビネットと一番近いと見ました。
すべての材料を探し出すまでに半年近くかかってしまいました。 つづく
以上T氏