2016年06月03日
グレイ型TD124キャビネット製作記 6
6 新しいキャビネットの製作 その2
使用する木材の選別が決まったら次は木取りです。 キャビネットを構成するパーツより大きめに切断し、一度カンナがけをして、木材の素性を確認点検します。 これは大事な作業なのです。 この選択によってキャビネット固有の力量が決まってしまうからです。 経験から言って8割がたは決まります。
この時注意することは、パーツ化した時の板鳴りを確かめておくことです。 そうしないと、実際に組み立てたとき、振動に対する働きが変わってしまうことが多いのです。
部材によっては木材の表面と内部を進む振動制御が上手くはたらかなくて、振動の伝わり方が不自然になってしまうのです。
次に所定の大きさに削り加工し、寸法を合わせて切断します。 その際注意すべきは木材の目を読むことです。 木材には表面と裏面があり、どちらを表にするかで響きの在り様が異なります。 裏面は木材の内部(芯)に近いので、表面に比べやや硬くなります。 また、振動に対してのはたらきも変わり、表面よりも流れる速さが遅い、つまり振動を貯め込む力があるということになります。 ですから、キャビネットやスピーカに単板を使用する場合、表目を外面にした方が良い結果が得られることがほとんどです。
さらに木材の振動共鳴が持つ固有のはたらきについても書いてみましょう。 木材はある大きさにカットされると固有の振動に対する反応力が決定されます。
それは振動の進み方が、裏面・縁・内部で異なるためです。 さらに厚みや形と長さに伴って変化します。 そして木材の種類と木目によってもうひとつ変わります。 柾目のものは目に沿って音は進むので、音は良く飛びます。 アコースティックギターの表面板に良く目のつんだ柾目の板を用いるのはそのためです。 逆にエレキギタ―は木目が渦を巻いたものが良いとされます。 レスポール社の虎目の板が好例ですが、こうした木目は音を貯める力があるからです。 そこから醸し出される音をマイクロフォンが拾うとレスポール特有のウォームな音が出てくるのです。
今回新しいキャビネットは、こうした木材の音響原理を応用して製作しました。 キャビネットを見た目は綺麗にこしらえるのは家具職人なら誰でもできます。 しかし、これは音響製品です。 TD124を熟知し、その振動に対する木材の性質を知った上でなければ、音響製品に仕上げることは出来ません。 柾目板の表目を外側にして振動を素早く進ませ、内側を裏目にすることにより振動の進み方を遅らせて音を貯め込むようにしています。 それはTD124のモータがこの中に入るからです。
モータの回転から発する微弱で高周波の振動をそのまま可変せずに進ませれば、キャビネット全体に振動がプールされ続け、再生音は濁ってしまいます。 ランバーコア類(呑み屋やラーメン屋のカウンタのアレです)を使用したキャビネットがオーディオプレイヤ用として適さないのは、オリジナルキャビネットのように単板でありながら振動に対する有効な働きが全く得られないことにあります。 べニア合板を積層したくり抜きタイプも同様に有効な働きを全く持ち合わせていません。
尚、作業工程について述べるつもりでしたが、これは職人が体で覚えたことなので、書いてもわからないことだらけになってしまうに違いないと考え、今回は省略させていただきます。 つづく
以上T氏
使用する木材の選別が決まったら次は木取りです。 キャビネットを構成するパーツより大きめに切断し、一度カンナがけをして、木材の素性を確認点検します。 これは大事な作業なのです。 この選択によってキャビネット固有の力量が決まってしまうからです。 経験から言って8割がたは決まります。
この時注意することは、パーツ化した時の板鳴りを確かめておくことです。 そうしないと、実際に組み立てたとき、振動に対する働きが変わってしまうことが多いのです。

次に所定の大きさに削り加工し、寸法を合わせて切断します。 その際注意すべきは木材の目を読むことです。 木材には表面と裏面があり、どちらを表にするかで響きの在り様が異なります。 裏面は木材の内部(芯)に近いので、表面に比べやや硬くなります。 また、振動に対してのはたらきも変わり、表面よりも流れる速さが遅い、つまり振動を貯め込む力があるということになります。 ですから、キャビネットやスピーカに単板を使用する場合、表目を外面にした方が良い結果が得られることがほとんどです。
さらに木材の振動共鳴が持つ固有のはたらきについても書いてみましょう。 木材はある大きさにカットされると固有の振動に対する反応力が決定されます。

今回新しいキャビネットは、こうした木材の音響原理を応用して製作しました。 キャビネットを見た目は綺麗にこしらえるのは家具職人なら誰でもできます。 しかし、これは音響製品です。 TD124を熟知し、その振動に対する木材の性質を知った上でなければ、音響製品に仕上げることは出来ません。 柾目板の表目を外側にして振動を素早く進ませ、内側を裏目にすることにより振動の進み方を遅らせて音を貯め込むようにしています。 それはTD124のモータがこの中に入るからです。

尚、作業工程について述べるつもりでしたが、これは職人が体で覚えたことなので、書いてもわからないことだらけになってしまうに違いないと考え、今回は省略させていただきます。 つづく
以上T氏