2016年11月05日

英 iFi社 retro50 番外編 ナチュラルディストーション 5

再生装置とナチュラル・ディストーション 1

これまでナチュラル・ディストーションのことを書いてきました。 オーディオ再生機器はヴィンテージ時代のハイ・フィデリティ(高忠実度)とハイ・ファイ(音の鮮度を重視した音楽再生)の基本精神によって創り出されたものです。 ですから再生装置のはたらきとはナチュラル・ディストーションをそのまま実際の演奏にあるのと同じか、または似通ったものでなければなりません。 しかし、現実にはおよそ自然倍音楽器とは思えないほど電気臭くなった音が平気でスピーカから出てくることが本当に多いと感じるのは私だけではないはずです。 その原因と解決のヒントを書いてみることにします。 

前にホール鳴りとホール鳴きの違いについて述べました。 これを再生装置にあてはめてみましょう。 大型のスピーカ(例えば15インチ)を狭いリスニングルーム(例えば6畳)で聴くことは無駄である、という結論に至ります。 ナチュラル・ディストーションはエンクロージャの中で発生するのではなく、外側の空気で生育するものだからです。 空気の量が大切なのです。 したがって低音を出そうと大型スピーカを部屋に入れれば、ナチュラル・ディストーションが発生する可能性は低くなります。 部屋の空気の量に見合ったスピーカシステムを使用するのが良質なナチュラル・ディストーションを発生させる一番の近道です。 そうした状態でアンプとレコードプレイヤがナチュラル・ディストーションを発生させるに足る製品であれば、そのシステムにふさわしい音楽が発生することでしょう。 ヴィンテージ・オーディオ機器(ヨーロッパ製)はそういう風に作られています。 狭い部屋でも実際のホール鳴りが感じられるのです。

ホール鳴き(鳴りではなく)は多くのオーディオマニアのリスニングルームで起きている現象です。 大型のシアター系または特別にあつらえたスピーカを大出力アンプで駆動する方法で、これはスピーカをエアコンの室外機と同じカテゴリの電気臭い低音をまき散らし、音色などかすりもしない力まかせの再生です。 レコードにナチュラル・ディストーション成分がたっぷり含まれていても、それを潰してしまい聴覚そのものが麻痺しているリスナがいかに多いことか。 音響パネルを使ったりしても無駄です。 元々そういう音が出ていないのですから。 悪さの根源はオーディオ機器そのものを選択したユーザにあるのです。 音響パネルを使わないと再生音が向上しないという現象、すなわち電気信号そのものの質が悪性のものであることを示している、ということを一度顧みていただきたい。 しかし、再生装置の選択をあやまったユーザにはホール鳴りとホール鳴きのほんとうの差異に気が付くことはありません。 ある人は響きの薄いこじんまりした音が繊細なバロック音楽だと信じたり、家が震えるほどの音を出して満足したり。 このような人たちはもはや誰も止められないので、ご自分の道を進んでいただくしかないのです。 つづく
以上T氏



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