2016年12月15日

英 iFi社 retro50 番外編 エレクトリック・ディストーション 6

カートリッヂまわりのエレクトリック・ディストーション

それぞれのカートリッヂにはメーカが定めた適正針圧があります。 これを無視して重い針圧を加えてかける愛好家は結構な数にのぼるのが実態です。 例えば初期(1961-72頃)のオルトフォン社製SPU型カートリッヂはBelow 2g と指定されています。 実際は3-5g で使用している方が多いのに驚きます。 使用するご当人は平気なようです。 しかし再生音は確実に歪んでいます。 カンチレバが異常な針圧過重により押さえつけられて自由な動きが封じられてしまうからです。 そこで電気的歪みが生じ、エレクトリック・ディストーションとなって再生されます。 ちょうどギターアンプに内蔵されたコンプレッサ回路のスイッチを入れた音にそっくりです。 カートリッヂは適正針圧の範囲内でチューニングされて初めて電気信号の圧縮と拡張が得られるよう製造されています。 範囲を超えた過重針圧下では圧縮ばかりが働いてしまい、結果音つぶれ現象が発生します。 道路舗装ローラー車で音溝を潰していくように。 
こうした条件下でのカートリッヂ出力はアンプでは補整不能です。 歪みは機械的な不具合により発生するのであり、電気的やり取りの外にあるからです。 RIMG0158カートリッヂまわりのエレクトリック・ディストーションは、アームの不調、カートリッヂの取り付け不備(角度不良、ねじ締めトルク、VTAの調整不良など)、ケーブル、プリアンプ入力部でも発生します。 特にアームケーブルには気を付けるべきです。 オリジナルのケーブル以外の製品に交換するとほとんどが圧縮過多か拡張増大になります。 これを抵抗値ばかり、金属の純度ばかりに気を取られていると、ほとんどの場合、音質劣化を招いてしまいます。 圧縮過多では音が詰まりますし、拡張増大となると音に力と腰がなくなり伸びたうどん状態になります。 ヴィンテージ時代のトーンアームのケーブルには1chあたり100μμFほどのキャパシタンスを持たせています。 ですから、伝導率が良ければ良い音質が得られるとは限らないのが、当時のオーディオに隠された『情緒』でもあります。
プリ部の入力インピーダンスについても、注意が必要です。 1970年代以降のロード・インピーダンスは大体47KΩあたりに設定されていますが、ヴィンテージのカートリッヂとなると話は違います。 モノーラルからステレオ初期にかけての時代に製造されたカートリッヂにはそれぞれ固有のロードインピーダンスがあり、それにマッチングするプリ入力部を設定しなおすこともあるのが注意すべき点です。 つづく
以上T氏


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