2017年01月05日
英 iFi社 retro50 番外編 エレクトリック・ディストーション 11
スペクターサウンド その2
シンフォニックロックはその後多くのポップスシーンに出現するようになります。 アース・ウィンド・アンド・ファイア『宇宙のファンタジー』、ブルース・スプリングティーン『明日なき暴走』・・・最も効果的に登場したのは『サタデーナイトフィーバー』のビージーズでしょう。 もともとロック・コーラスバンドでしたが映画ではエレクトリック・コーラスバンドにちゃっかり変貌を遂げて大きな成功を成し遂げました。 またデヴィッド・ボウイはスペクターサウンドを完全に自分のサウンドに消化して、本家よりずっと洗練された音楽に仕上げてヒットします。 そのあたり『レッツ・ダンス』を聴けば良くわかるでしょう。
スペクターサウンドを行為を持つ人もいれば嫌う人もいます。 バンドの中でも軋轢が生まれます。 ジョン・レノンが断りを入れずにスペクターサウンドを持ち込んで、それを知ったポールがキレた。 これがメンバー内で指向するサウンドに亀裂が生じてビートルズ解散の原因のひとつになったのは知られたはなしです。 スペクターサウンドに無頓着なアーティストもいます。 ジェームス・ブラウン、オーティス・レディング、サム・アンド・デイヴといった面々です。 彼らスペクターサウンドよりもずっと強烈な個性と類い希な声のキャラクタを持ち合わせていました。 つまりスペクターサウンドが必要なかったのです。 これはスペクターサウンドの本質にある面を暗示しています。 ブルース・スプリングスティーンは確かに強固な個性の持ち主ですが、スペクターサウンドがしっくりきます。 声や歌唱力はオーティスたちと較べると無機的なもの、壊れたロボット声、だからこそ彼の声はスペクターサウンドの中から浮き出てくるのです。
1960年代後半、シンフォニックロックを粉々にする音楽家が出現します。 ジミ・ヘンドリックスです。 除隊して渡英した彼が現地で結成したエクスペリエンスのコンサートには英国ロック界を代表するアーティスト達が聴きにやってきました。 クラプトンもビートルズのメンバーもいます。 彼らは驚愕した。 ポップス界を席捲したスペクターサウンドの難攻不落だった『音の壁』をものの見事に粉砕してみせたからです。 ジミはギターから強烈なエレクトリック・ディストーション・ノイズを発生させたのです。 『音の壁』はそれよりずっと大きなエレクトリック・ディストーションによって消えてしまったのです。 ジミのプレイは、多くのロックミュージシャンに取り入れられていった。 制作側が音の壁を作り上げようとしても一撃で粉砕できる方法が見つかったのです。 こうして、ミュージシャンたちは曲作りにどんどんユニークな手法を生み出していきます。
80年代になるとスペクターサウンドはディスコに侵攻します。 バブル時代のディスコで聴く音はスペクターサウンドが支配していました。 クラブ音楽にも入り込んだスペクターサウンドは見事なまでに変質していきます。 音の圧縮がさらに進み、もはや音楽というより単なる騒音だと言われるほどになりましたが、こういうところに来る人たちは音楽を聴きに来るのではなく踊りに来るので騒音だろうが音楽だろうが関係ないことなのでしょう。
変貌したスペクターサウンドは人々に束の間の自由感を与えます。 密閉された空間で響く圧縮過多のサウンドはそれを楽しみつつも圧迫感から逃れたいという感情を生み出します。 それが日常たまったストレスと反応して強い開放感をもたらすのです。 つづく
以上T氏
シンフォニックロックはその後多くのポップスシーンに出現するようになります。 アース・ウィンド・アンド・ファイア『宇宙のファンタジー』、ブルース・スプリングティーン『明日なき暴走』・・・最も効果的に登場したのは『サタデーナイトフィーバー』のビージーズでしょう。 もともとロック・コーラスバンドでしたが映画ではエレクトリック・コーラスバンドにちゃっかり変貌を遂げて大きな成功を成し遂げました。 またデヴィッド・ボウイはスペクターサウンドを完全に自分のサウンドに消化して、本家よりずっと洗練された音楽に仕上げてヒットします。 そのあたり『レッツ・ダンス』を聴けば良くわかるでしょう。
スペクターサウンドを行為を持つ人もいれば嫌う人もいます。 バンドの中でも軋轢が生まれます。 ジョン・レノンが断りを入れずにスペクターサウンドを持ち込んで、それを知ったポールがキレた。 これがメンバー内で指向するサウンドに亀裂が生じてビートルズ解散の原因のひとつになったのは知られたはなしです。 スペクターサウンドに無頓着なアーティストもいます。 ジェームス・ブラウン、オーティス・レディング、サム・アンド・デイヴといった面々です。 彼らスペクターサウンドよりもずっと強烈な個性と類い希な声のキャラクタを持ち合わせていました。 つまりスペクターサウンドが必要なかったのです。 これはスペクターサウンドの本質にある面を暗示しています。 ブルース・スプリングスティーンは確かに強固な個性の持ち主ですが、スペクターサウンドがしっくりきます。 声や歌唱力はオーティスたちと較べると無機的なもの、壊れたロボット声、だからこそ彼の声はスペクターサウンドの中から浮き出てくるのです。
1960年代後半、シンフォニックロックを粉々にする音楽家が出現します。 ジミ・ヘンドリックスです。 除隊して渡英した彼が現地で結成したエクスペリエンスのコンサートには英国ロック界を代表するアーティスト達が聴きにやってきました。 クラプトンもビートルズのメンバーもいます。 彼らは驚愕した。 ポップス界を席捲したスペクターサウンドの難攻不落だった『音の壁』をものの見事に粉砕してみせたからです。 ジミはギターから強烈なエレクトリック・ディストーション・ノイズを発生させたのです。 『音の壁』はそれよりずっと大きなエレクトリック・ディストーションによって消えてしまったのです。 ジミのプレイは、多くのロックミュージシャンに取り入れられていった。 制作側が音の壁を作り上げようとしても一撃で粉砕できる方法が見つかったのです。 こうして、ミュージシャンたちは曲作りにどんどんユニークな手法を生み出していきます。
80年代になるとスペクターサウンドはディスコに侵攻します。 バブル時代のディスコで聴く音はスペクターサウンドが支配していました。 クラブ音楽にも入り込んだスペクターサウンドは見事なまでに変質していきます。 音の圧縮がさらに進み、もはや音楽というより単なる騒音だと言われるほどになりましたが、こういうところに来る人たちは音楽を聴きに来るのではなく踊りに来るので騒音だろうが音楽だろうが関係ないことなのでしょう。
変貌したスペクターサウンドは人々に束の間の自由感を与えます。 密閉された空間で響く圧縮過多のサウンドはそれを楽しみつつも圧迫感から逃れたいという感情を生み出します。 それが日常たまったストレスと反応して強い開放感をもたらすのです。 つづく
以上T氏