2017年09月06日

栄光の50年代とノイズ

1950年代、欧米のオーディオ史上輝かしい時代であり、録音・再生の両面で技術力の頂点に達したといっても過言ではありません。 黎明期から延々と積み重ねられてきたノウハウが結実したのです。 問題とされていたものが、次々と解決されていった時代でした。 長足の進歩を遂げたのはレコードプレイヤでした。 50年代後半の製品と50年代以前のそれを比べると別物に見えるほどです。 50年代に入り、CONOISSEUR社、COLLARO社もLP再生用プレイヤが登場して、英国製プレイヤはコンシューマユースの分野で大きな存在となったのです。GARRARD社製RC80型プレイヤが登場したのが1950年。 前回紹介したRC70シリーズの発展型で、RC72型との再生音の違いは顕著になります。 再生帯域が拡張され、動作ノイズも静かになり、高音域の伸びが改善されました。 RC70シリーズの高域は有機的なひずみが起こすなだらかなピークが特徴で、一聴すると高域が伸びているように感じられます。 このピークが音楽を楽しくウキウキと聞かせてくれるところに、GARRARD社の
プレイヤ設計に巧みさがありました。 しかし長所は弱点を生みます。 ピークが高域の壁となって倍音成分を生み出すハーモニクスを減衰させ、そのために再生音が強く出すぎるきらいがありました。 これはLP再生より78回転を多く再生した時代のプレイヤだったからこその処置だったと推測されます。 RC80が登場する1950年はこれからLPが主流となる時代でした。 RIMG0054それでRC80は高域の歪を減少させてピークをなだらかにして素直に高域を伸ばすようにデザインされています。 これによりLPをかけた時の再生音はより自然になります。 この流れはグッド・リプロダクションの思想に基づいてGARRARD社が78回転からLPへの変換期に呼応した結論でした。 「在るべき音が在るように在る」 あくまで自然な再生音で聞き手を感動に導く、それがグッド・リプロダクション思想の骨格です。 RC80を今日でも高い評価をしているのにはこうした理由があります。 高域の伸びという長所は、ここでも短所をもたらします。 レコードのノイズに過敏に反応するという現象です。 高忠実度再生を狙ったための副産物。 1958年に登場するGARRARD 4HFがこの問題を解決します。 RCシリーズとモータとアームを一新したのです。 もちろんデザインも。 4HFは稀代の名プレイヤです。 ホームユースというオーディオスタイルにあって、洗練されかつ音の良いプレイヤはそれまでの水準を超えています。 4HFの登場により、RC80の機械力と電気信号のかかわり方は激変したのです。 RIMG00914HFはステレオレコードの出現と同時に発売されたプレイヤであり、モータはより静粛性と精確さを備え、アームの初動感度が大幅に向上し、共振周波数も変更されています。 これにより、潜沈していた機械力が浮上し、それによりカートリッヂの音楽力が増し、音楽性が備わった繊細な音の再生が可能になり、結果、音色とニュアンスがあふれるような音でレコードを再生するようになったのです。 そうして50年代も終わりに近づくと、スイスではTHORENS社が革新的なフォノプレイヤを発表します。 TD124の登場です。 つづく
以上T氏   

低音コンプレックスというか、まず低音が出ていないとハイファイではない、と信じ込んでいるオーディオ愛好家は多い。 ここがヨーロッパの愛好家と確実に異なる点だ。 原因のひとつ、わが国には豊かに鳴り渡るポータブル電蓄がなかった。 Lpが登場してからもヨーロッパ製電蓄に比べて圧倒的に貧弱な音しか出ない電蓄とレコードが市場に出回っていた。 豊かな音を再生する電蓄(あるいはラヂオ)を知らないわが国のオーディオ技術者がうまく育たなかった。 おかげで70年代のオーディオはへんな方向にミスリードされてしまった。 原音再生と歪の少なさにこだわる風潮に洗われて、ノイズは少ないけれど音質は?な日本盤をモノサシとするオーディオの世界は現在でも支配的だ。 エレクトリック楽器の再生はそれでよいかもしれないが、クラシックをはじめとするアコースティック再生はハーモニクスがちゃんと整えば高音域はもちろん、低音域も自然に伸びて再生される。 わが国ではグッドリプロダクションがマイノリティとして現在に至るが、若い世代のアナログ愛好家を見ていると、これからは違うと期待が持てる。  


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