2017年09月17日

TD124 とノイズ 4

TD124にアームを取り付けてみると、アームの軸受け基部は0ポイントにすぐ近くに位置しているのがわかります。 アームの振動・共振はアームボードと固定用ボルト、そしてバルコン部のフレームを経て0ポイントに流れていくようにデザインされているからです。 カートリッヂが音溝をトレースして発電するときに生じる共振・振動がノイズエネルギーとしては⊕的性格を帯びているので、⊖的性格を持つ0ポイントに誘導されていきます。 RIMG0111もう一つ重要なノイズの要素を忘れてはいけません。 レコード自体の振動です。 レコードをカートリッヂがトレースすると、振動はアーム本体に伝わるだけでなく、レコードの盤自体も振動します。 ですからトレースによる共振共鳴は刻刻と変化し、常に混合・混濁がアーム本体に伝わっていることになります。 この混濁のカオスはそのままにしておけば当然ノイズと化して再生音にカブリます。 つまりキレイに響かなくなる。 この現象から逃れるには振動をすみやかに流すことです。 流れれば混濁は生じにくくなります。 アームボードが重要になります。 トーンアームの振動アースとして働くからです。 ですから材質・塗装は、重く硬い材質のように振動がたまるものよりも振動が早く流れていくものを選び、試聴テストを重ねてそれぞれのTD124に合わせて選択するのがベストです。 グレイではレストアしていただいた方に、実際に数種類のアームボードのなかから最適なものを試聴したうえでお頒けしています。 なぜならグレイのアームボードはレストアを施されたTD124に取り付けることを前提にして製作しているからです。 アームボードひとつにも多くのノウハウが詰まっています。 次にアームボードをバルコン部位に固定する3本のネジの締め具合は良質な再生音を得るために重要です。 シャシの振動を引き込む力をネジの締め具合により調整が可能だからです。 特に一番奥の0ポイントに近いネジはダンピング力・リズム・音色・ハーモニクス・カブリなどを変えることができます。 この調整は9インチくらいのショートアームに有効であり、12インチ以上のロングアームはバルコン部の枠外にアームボードがはみ出しているために、プレイヤとの反応可能の域外になり、有効な調整はあまり期待できません。 TD124をロングアームで聴くと服の上から掻いているもどかしさを覚えるのをしばしば経験します。 また、TD124を大型キャビネットに載せ、複数のアームを組み込む方もいらっしゃるが、大概は本来の良好な音質が得られないというのも至極当然なのです。 シャシの枠外にアーム基部が位置するのはTD124にとっては良いことではないのが現象として表れています。 キャビネットは本体の振動を逃がすためのアース体として働いているので、振動が充満している。 そこにトーンアームを設置すれば共振と共鳴は流れるどころか逆流してしまうからです。 以上のことを踏まえてみると、TD124のシャシを見ると、アームボードを取り付けるバルコン部が細いフレーム構造なのが理解できます。 頑丈な形をとれば、ここに振動が溜まってしまい、0ポイントへの速やかな振動の流れが滞ることになります。 このようにTD124はレコード自体の振動も含め、ノイズの要素である機械的振動ノイズがきれいに流れるように設計されています。 Thorens社設計部門が如何に振動・ノイズという機械力のはたらきを上手にやりくりしていたか、パズルを解くように解決していく過程は想像に難くありません。 彼らは実にうまくやってのけたのです。 つづく
以上T氏

70年代後半以降の薄いLPレコードはお椀のように湾曲してしまうことがあり、それをプラッタに載せると滑ってしまって再生できない。 そこでスタビライザが登場した。 しかし、反ったレコードに錘に載せ、無理やり平らにして再生しても、よおく聴いてみると音は伸びていないし筋張ってしまっている。 クラシックの再生ではハーモニクスまでいびつになっているのがわかる。 その後50年代60年代のレコード、そして反っていない盤にまで当然のようにスタビライザを乗せて再生する風潮まで出てきた。 レコードはそうしたストレスをかけて再生するようには製造されていない。 再生中に生ずるレコード自体の振動まで考慮してレコードプレイヤは作られている。 レコードを固定するという名目でターンテーブルのゴムシートに錘や吸引で押し付けるとレコード自体の共振はなくなるけれど、再生音は隈取の濃い、倍音は減って一音一音がくっきりと再生される。 EMTなどのスタジオ機器はこうしたスタイルで再生される。 あくまで音そのものの検査には重宝される再生方式である。 音と音が絡み合ったり、音色の移り変わり、楽器のまわりの空気感、演奏家の気配などという、自然な再生音は期待できない、スタジオ再生は家庭で聴く音楽再生とは違う。 RIMG0117生理的に受け入れられる再生音というより分析的な再生音だからだ。 スタビライザはそうした再生スタイルから生まれた産物であるから、反った盤は平らに修正してから針を下すことが、自然な再生につながると確信している。 レコードに罪はないのだから錘を乗せてわざわざストレスを加えることはないのであって、拷問に等しい。 レコード自体の振動ノイズ自体がケミカルなものか、自然なものか、実際に聴き手がスタビライザを着脱して比較して判断していただきたい。 アクセサリに頼るより、自身が選んだ機器を信じて、より本来の性能に戻すことを目指すほうが、今日でもレコードを聴きたいと思う愛好家らしい。 回転するもの、動くものはすべて振動共鳴が伴う。 振動を味方にすると音楽は思いのほか楽しい方向に向かう。 
  


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