2018年09月24日

月の光は

東山の美術館でたくさん掛け軸がかかっているなかに
まん丸に近いおっつきさんが描かれていた。
少し欠けていた真ん丸になり損ねのおつきさん。
フランス人と一緒に月を見た。 
海から顔を出す瞬間、水平線がサーっときらめいて銀色の光が海原を覆う。波も、砂浜も。 
『昔から月にまつわる話や歌がたくさんあってね、
真ん円な月に向かって柏手を打って月の到来を祝ったり、
縁側にお団子(Dumpling) とすすきをお供えする風習もあるし』

『フランスでは月にそんな思いはないね。』 
そっけない。
『ダビュシ(と彼はドビュッシィのことを呼ぶというか、こちらが本来の発音だろうけど)、
ダビュシの月の光にしても、そんなにロマンティークな想いで書いたのではないはずだよ。
いや、悲しみが勝っている。 
もっと突っ込めばシュールの世界だね』

我が国では月の形をまず見て愛でて、それからあたりを見回す。フランスの詩人のように月そのものを見ずに、月の光が映るこころの情景を語るのとは違う。 こちらではお月さん、おっつきさんと親しく呼ぶのに、あちらではオオカミが吠える対象だったりする。 
Lunatic はまさに狂人なんだから。 
外国で星空を見上げると、
あの煌々とした月は、
あの冴え冴えとした月は、不気味だし怖いときもある。

先日古いレコード棚を見ると、レコード屋さんで入れてくれたビニール外袋が化学分解していた。 触るさきからビニールがボロボロと崩れていく。 30年も放置されていたレコードがミイラ化していた。
富田の『月の光』も出てきた。 

盤自体はまったく新品状態のまま、70年代の日本の空気さえもまとって思い切り薄い。
オフィスで聞いてみる、
Garrard 4HF /Shure M44-7/retro50/Varitone + Celestion (1957) 入り
聴いて驚くのは、えっ、音がマイルドなのだ。P9240145 
シンセといえば電気臭い音全開で
耳が感電しそうなはずなのに。
ケミカルなような
ナチュラルなような、
人懐っこいような。
頑張ったんだなあ、
音質的に許せてしまう。
でも10分ほど聞いていると
これは飽きる。 申し訳ないけど

ジャケット解説℗74によるとMoog Synthesizer が開発されて6年経ち、「この『モーグ・ドビュッシー』を日本の音楽界、レコード界より先にアメリカRCAが着目し、評価し、レコード化し、グローヴァルな頒布に踏み切ったという事実は、非常に象徴的である」、とある。
Pierre Henry /Moris Martenot/Karlheinz Stockhausen の現代音楽とは別のベクトルを目指して、既存の曲を新しく作り直すというコンセプト、 ”Switched in Bach" 路線を富田は踏襲する。 ゆるいファンタジーのゆりかごに揺られるような音の世界はYMOとかコンピュータ・ゲームの音楽へと続いていく。P9240153
『私はとくに、シンセサイザーは、もっともっと、伝統楽器が歴史の中で獲得してきた、”沈黙”と”空白“を学びとる必要がある、と考える』と荻昌弘は解説したが、開発から半世紀を経た今、どっこい、そんな心配はふっとんで、『シンセ』と愛され大活躍している。 

富田勲といえば『新日本紀行』という番組の初期のテーマ曲(有名ではないほう)が好きだ。
蒸気機関車が山あいを元気に駆けていくシーン、思い出しては気持ちを良くしている。

今夜は月を見る、曇っていても、雨が降っても。 
 


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