2019年03月04日
ローコスト・フォノイコライザとプリメインアンプ 最終回
聴感後記
初めにオリジナル盤があり、そこから真のアナログの扉は開かれる。大袈裟ではなく、本当のことだと、今回ローコスト・アンプを試聴して実感します。今回のシステムが成功した原因は良質なレコードによるところ大でした。盤面に刻まれた上質な音楽信号をレコードプレイヤが余すところなく解読して拾い上げる。フォノイコライザはあるがままに保つように信号を変圧増幅して、アンプは素直に受け取り押し付けることなくスピーカに送り込む。最適な電力が送り込まれたスピーカは自然に体が揺れるようにスウィングする・・・。ストレスが無い再生の仕組みはヴィンテージ時代に編み出されたオーディオ電気増幅法に沿ったものです。前にも書いた通りヴィンテージ時代の設計者たちはアンプリファイア出力を無闇に大きくはしなかった。アンプで音をひねり出そうとはしなかったのです。
LW5330 Grieg Piano Concert Hilda Waldeland(Pf) Stig Westerberg
The Danish State Radio Symphony Orchestra
たとえばこの10インチ盤を聴いてみましょう。第二楽章、ひろびろとした音場にゆったりとピアノが水紋のように広がっていく。その先にある闇に音はやはらかいひかりになって進んでいく。ソリストは光の源になって押しもせず引きもせず自然を照らしていく。一音一音に共感してしまう。イマジネイションの宝庫です。演奏家たちの気持ちが邪魔されずに耳にしみてくる。なつかしいあたたかさが伝わります。フォノイコライザのことをもう少し書いてみたくなります。このレコードNABポジションにすると音の芯がしっかりとして響きの先が伸びて、気持ちが晴れていきます。イクォライザカーヴを知る人はなぜDECCAffssカーヴにしないのかと思うかもしれません。DECCAだからDECCAカーヴで再生しなければならないとはDECCAというレコード会社は一度もアナウンスしていません。レコード発売時期に使用された録音機器、エンジニアの思想、演奏家の意見などなどにより、フレキシブルにイコライジングは変更されたはず、発売するレコード会社でさえこのレコードは**カーヴで再生してください、とは明言できなかったというのが本当のところです。当時はごく一部の愛好家以外はポータブル電蓄で再生するのが一般的で、大きく変化できるトーンコントロールで自分の好みの音で聞いていました。実際のところ、イクォライザの選択はフォノカートリッヂの出力の大きさ・コントロールアンプの入力感度と入力インピーダンス、パワーアンプの性格(NFB・ダンピングファクタ・出力など)、スピーカの性格(低音勝ち・高音に偏る・硬い・モニタっぽいなど)により随分と異なります。ユーザはもっと自分の好みの音を、音楽を感じる音、気持ちよくなる音を「自分で」探してほしいのです。DECCA盤だからDECCAカーヴ、CapitolだからAESと教科書どおりに再生していては、いつまでたってもあなたが欲しい音楽(エロス)は聞こえてきません。高価なオーディオファイルのプリアンプにフォノイクォライザのセレクタスイッチはおろかトーンコントロールノブは何故ないのか。そのアンプはレコードをかけてはいけないといっているのか。レコードに限らずアナログが改めて見直される時代です。そのあたりははっきりさせたほうがユーザにとっては有意義なはず。これはプレイヤにもいえることです。どの時代のレコード(初期盤?70年代以降?現行盤?)を一番楽しく再生できるのか、ちゃんと表示してほしいと思いませんか。うちのプレイヤはどの時代のレコードにも対応します、というメーカを信用してはいけません。装置をコーディネイトする時代です。そのあたりの表示ははっきりさせたほうが良い。今日ステレオ誌がLuxmanの技術者に依頼して製作したローコストアンプ。雑誌の付録でなければ登場できなかったという理由は、こういうところにある。なかなか、大したことをしてくれました。
ヴィンテージ時代のスピーカのハンドリングキャパシティはおよそ6Wです。これで部屋の空気を十分に震わせて音楽を楽しんでいました。良質なスピーカであれば動くに足る電力を供給されると自然に鳴るようにできています。鳴らないのは必要以上に出力が大きいアンプがスピーカを抑え込んでいるか、空回りさせているからです。
ご紹介したローコスト・アンプを使用する音楽愛好家のみなさんに言っておきたいことがあります。確かにオーディオ高級品と呼ばれる製品と比較すれば価格も品質も最高の水準とはいえません。しかし、ポジティヴに「これでいい」と納得できる音質と小さなサイズが受け入れられる時代がもう来ています。このシステムをグレードアップするという考えはお勧めしません。それはこの話の最初に述べた「ビルド(構築)」の思想に戻ってしまうからです。グレードアップするよりもコーディネイトするほうが効果的です。選ばれるのはおそらくヴィンテージ時代のアンプリファイアでしょう。ヴィンテージ時代のアンプリファイアは使用しているうちに何度か修理が必要な時がきます。その時役に立つのがこのアンプたちです。そうした使い方もできる重宝なギアです。 この項おわり
初めにオリジナル盤があり、そこから真のアナログの扉は開かれる。大袈裟ではなく、本当のことだと、今回ローコスト・アンプを試聴して実感します。今回のシステムが成功した原因は良質なレコードによるところ大でした。盤面に刻まれた上質な音楽信号をレコードプレイヤが余すところなく解読して拾い上げる。フォノイコライザはあるがままに保つように信号を変圧増幅して、アンプは素直に受け取り押し付けることなくスピーカに送り込む。最適な電力が送り込まれたスピーカは自然に体が揺れるようにスウィングする・・・。ストレスが無い再生の仕組みはヴィンテージ時代に編み出されたオーディオ電気増幅法に沿ったものです。前にも書いた通りヴィンテージ時代の設計者たちはアンプリファイア出力を無闇に大きくはしなかった。アンプで音をひねり出そうとはしなかったのです。
LW5330 Grieg Piano Concert Hilda Waldeland(Pf) Stig Westerberg
The Danish State Radio Symphony Orchestra
たとえばこの10インチ盤を聴いてみましょう。第二楽章、ひろびろとした音場にゆったりとピアノが水紋のように広がっていく。その先にある闇に音はやはらかいひかりになって進んでいく。ソリストは光の源になって押しもせず引きもせず自然を照らしていく。一音一音に共感してしまう。イマジネイションの宝庫です。演奏家たちの気持ちが邪魔されずに耳にしみてくる。なつかしいあたたかさが伝わります。フォノイコライザのことをもう少し書いてみたくなります。このレコードNABポジションにすると音の芯がしっかりとして響きの先が伸びて、気持ちが晴れていきます。イクォライザカーヴを知る人はなぜDECCAffssカーヴにしないのかと思うかもしれません。DECCAだからDECCAカーヴで再生しなければならないとはDECCAというレコード会社は一度もアナウンスしていません。レコード発売時期に使用された録音機器、エンジニアの思想、演奏家の意見などなどにより、フレキシブルにイコライジングは変更されたはず、発売するレコード会社でさえこのレコードは**カーヴで再生してください、とは明言できなかったというのが本当のところです。当時はごく一部の愛好家以外はポータブル電蓄で再生するのが一般的で、大きく変化できるトーンコントロールで自分の好みの音で聞いていました。実際のところ、イクォライザの選択はフォノカートリッヂの出力の大きさ・コントロールアンプの入力感度と入力インピーダンス、パワーアンプの性格(NFB・ダンピングファクタ・出力など)、スピーカの性格(低音勝ち・高音に偏る・硬い・モニタっぽいなど)により随分と異なります。ユーザはもっと自分の好みの音を、音楽を感じる音、気持ちよくなる音を「自分で」探してほしいのです。DECCA盤だからDECCAカーヴ、CapitolだからAESと教科書どおりに再生していては、いつまでたってもあなたが欲しい音楽(エロス)は聞こえてきません。高価なオーディオファイルのプリアンプにフォノイクォライザのセレクタスイッチはおろかトーンコントロールノブは何故ないのか。そのアンプはレコードをかけてはいけないといっているのか。レコードに限らずアナログが改めて見直される時代です。そのあたりははっきりさせたほうがユーザにとっては有意義なはず。これはプレイヤにもいえることです。どの時代のレコード(初期盤?70年代以降?現行盤?)を一番楽しく再生できるのか、ちゃんと表示してほしいと思いませんか。うちのプレイヤはどの時代のレコードにも対応します、というメーカを信用してはいけません。装置をコーディネイトする時代です。そのあたりの表示ははっきりさせたほうが良い。今日ステレオ誌がLuxmanの技術者に依頼して製作したローコストアンプ。雑誌の付録でなければ登場できなかったという理由は、こういうところにある。なかなか、大したことをしてくれました。
ヴィンテージ時代のスピーカのハンドリングキャパシティはおよそ6Wです。これで部屋の空気を十分に震わせて音楽を楽しんでいました。良質なスピーカであれば動くに足る電力を供給されると自然に鳴るようにできています。鳴らないのは必要以上に出力が大きいアンプがスピーカを抑え込んでいるか、空回りさせているからです。
ご紹介したローコスト・アンプを使用する音楽愛好家のみなさんに言っておきたいことがあります。確かにオーディオ高級品と呼ばれる製品と比較すれば価格も品質も最高の水準とはいえません。しかし、ポジティヴに「これでいい」と納得できる音質と小さなサイズが受け入れられる時代がもう来ています。このシステムをグレードアップするという考えはお勧めしません。それはこの話の最初に述べた「ビルド(構築)」の思想に戻ってしまうからです。グレードアップするよりもコーディネイトするほうが効果的です。選ばれるのはおそらくヴィンテージ時代のアンプリファイアでしょう。ヴィンテージ時代のアンプリファイアは使用しているうちに何度か修理が必要な時がきます。その時役に立つのがこのアンプたちです。そうした使い方もできる重宝なギアです。 この項おわり