2022年12月30日
ピーナツを利く 最終回
黄銅その他の粒状金属を焼結したピーナツは脆い金属であるのは事実です。レストアするTD124ではヒビとか割れ、最悪欠けたピーナツに遭遇します。回転音に不規則なノイズが発生するのです。なのでピーナツは慎重に点検してからレストアの段取りを決めます。75,000 hours' run. とあります。oil retaining bearings (含油軸受け)はオイルをたっぷり蓄えたフェルトパッドで支えられている。工場出荷の時点で注油され、通常使用においては75,000時間は十分に保持される。
つまりピーナツを包むフェルトパッドにたっぷり含ませたオイルがピーナツのミクロの穴を通じて給油されていきます。実際はモータ上部の軸受けは渇きやすく、適時オイルを一二滴注すことをお勧めします。いずれにしてもピーナツへの定期的なリュブリケーションは欠かせません。脆い金属であるピーナツですが、軟らかで且つ踏ん張りが利く特性によりTD124の音質が得られるのです。ゴロ・ランブル・音の立体感・中高域の滲みの解消などに作用して再生音に格をもたらします。このデッキを将来も永く愛用できるよう、TD 124の開発者はピーナツを交換可能に設計しています。
ブラックボックスであるベルトドライヴの小型モータとは大きさ役割共に大きく異なるE50型モータはTD124における最も重要な部位です。コンピュータ制御による正確かつ効率的エンジン、一方はキャブレターの念入りな調整で走りが俄然活きてくるエンジン。自動車同様デッキのモータは音質本来に強く繋がっています。どちらにするか、ユーザがアナログ再生に何を求めるかによって決めることです。モータを良く見て、性格を知り、そこからプレイヤ全体の音質を決めていくレストア作業、パズルの世界です。 この項おわり

