2023年11月09日
管球モノーラルフォノイコライザ 4
シュザンヌ・ダンコを聴きたくなりました。
分厚く重い独DECCA・LXTモノーラル盤金紋章フラット盤、SIde2の始めPie Jesu。これまでffssカーヴで聴いてきましたが、いいんだけれども、どうも重苦しい。そこでTELEFNKENカーヴ。エッヂが利いてダンコの声が迫る、来る、そして芯が太い。声が出た途端こころが動く。彼女の魂が飛び込んでくる。男声合唱団員はヘタだけれど祈りを思い切り込めている。こういうの好き。ヴィクトリアホールの節度ある残響を思い出した。そのまま英SXL(1M/1Mマトリクス)を聴く。RIAAは面白くなく、やはりffssが伸びやかでさわやか、居心地の良いハイフィデリティは大したもんです・・・。モノーラル盤とステレオ盤をM44-7カートリッヂで聴く。同じ土俵とはいえないけれど、どちらを?と聞かれれば断然独DECCAのLXTを棚に置いておきたい。
このままでは収まらず、カンポーリのチャイコフスキーを英DECCAステレオフラット重量盤片面テストプレス米輸出仕様CS6011をRIAAで聴いてみる。これも面白くない。ffssカーヴに切り替えると、あの擦る弦の素肌が音色をまとって飛び出す。音の総天然色。ステレオ盤をモノーラル再生する、それも2つのスピーカで。すかさず英DECCAモノーラルパンケーキ盤に針を入れる。ffssでソロが気持ち滲み、フルートがささぐれる、NABではソロは引っ込む、RIAAに切り替えるとスッキリ。音色ゆたか、録音会場のアク―スティックは空気感となって感じられ何よりも落ち着く。RIAAとジャケットに指定されたCS米国輸出仕様盤がffss、英LXT盤がffssではなくRIAAだったということになりました。今日聞いた感じでは定説と逆になってしまった。
ついでに気になる盤を聴いてみます。ポーランドMuzaステレオ盤です。バクストというピアニストが弾くベートーヴェンのソナタ。ffrrで聴くと奏者の言いたいことがらくらくと前に出てきます。RIAAでは寸詰まりだった音の形が、しなやかに伸びる伸びる。和音の響きにある表情がくっきりと。
ふたたびカンポーリに針を入れる。録音1966年キングレコード第1 スタジオ 英DECCA eclipseレーベルですが、これがオリジナル(1972年初出)このレーベルは再発がほとんどですが、ffrrありNABあり、RIAAあり、とごちゃごちゃです。伴奏の和田則彦がシブい小品の数かず。線の太い音符で始まる『赤とんぼ』がいい。カンポーリが日本の歓待にいかに喜んだか、伝わってきます。ffrrでは表情過多、RIAAで喜怒哀楽がらくらく聴き取れます。
たとえば左のセレクタノブをRIAAポジション、右をffrrに合わせておけば、その下のトグルスイッチで瞬時に切り替えられ、音決めがらくらく判断できます。また右左のセレクタノブには大きなロータリスイッチを採用、ノイズ・トギレなくカチカチ回せるので、集中を切らすことなく遊べます。何しろ、イコライザの選択はほとんど感覚のみの世界ですから。ノイズやトギレは困ります。
不便の向こうに豊かさがある、と陰翳礼讃にあります。古い蝋燭で食事を楽しんだことのある人には、音のかたちに気づくことがあるでしょう。輪郭が刺々しくなくて真中から徐々に色が変化している炎は、液体のように自然に揺れるのです。注意して比べてみると、新しい蝋燭と、五十年前(少なくとも三十年前)の蝋燭では、真空管とトランジスタくらいの違いがあります。贅沢に並べられた古い蝋燭のある食卓で料理をいただくと、食後酒の時間の頃になれば、おしゃべり相手の隠されていた性格まで見えてくるから、ちょっと恐ろしい。ヨーロッパ人の場合顔の彫りが一層深く見えてくる。深々とした音色、込められた濃密な音楽の興。ひとつの音が次の音まで消えていくひと刷毛に、演奏家それぞれの影がある。どうしたら、古い蝋燭を見分けられるかって? それは、簡単。嗅いでみて、滑らかな乳の匂いがすれば、それは、見えないものまで見えてくる不思議な炎を宿した蝋燭です。
音質の良し悪しを、器を調べるように語り合えるのが我が国の人達です。音に沿う影を見つけ、それにより前に出る音が際立ちます。そうして再生音は立体となる。強烈なライトを当てて女優さんのシワを隠すように、RIAAで聴いているとハレイションを感じることがあります。そういうときにフォノイコライザが音のかたちを嗅ぎわけます。
EQ13 次回製作分販売は12月
価格は62,000円(消費税別 仏Philips社製12AT7 / 米GE社製軍用JAN5751 いづれも80年代製未使用管)数量限定
真空管なしは52,000円
ご予約は
greythorens@kind.ocn.ne.jp
0479-25−1140
分厚く重い独DECCA・LXTモノーラル盤金紋章フラット盤、SIde2の始めPie Jesu。これまでffssカーヴで聴いてきましたが、いいんだけれども、どうも重苦しい。そこでTELEFNKENカーヴ。エッヂが利いてダンコの声が迫る、来る、そして芯が太い。声が出た途端こころが動く。彼女の魂が飛び込んでくる。男声合唱団員はヘタだけれど祈りを思い切り込めている。こういうの好き。ヴィクトリアホールの節度ある残響を思い出した。そのまま英SXL(1M/1Mマトリクス)を聴く。RIAAは面白くなく、やはりffssが伸びやかでさわやか、居心地の良いハイフィデリティは大したもんです・・・。モノーラル盤とステレオ盤をM44-7カートリッヂで聴く。同じ土俵とはいえないけれど、どちらを?と聞かれれば断然独DECCAのLXTを棚に置いておきたい。
このままでは収まらず、カンポーリのチャイコフスキーを英DECCAステレオフラット重量盤片面テストプレス米輸出仕様CS6011をRIAAで聴いてみる。これも面白くない。ffssカーヴに切り替えると、あの擦る弦の素肌が音色をまとって飛び出す。音の総天然色。ステレオ盤をモノーラル再生する、それも2つのスピーカで。すかさず英DECCAモノーラルパンケーキ盤に針を入れる。ffssでソロが気持ち滲み、フルートがささぐれる、NABではソロは引っ込む、RIAAに切り替えるとスッキリ。音色ゆたか、録音会場のアク―スティックは空気感となって感じられ何よりも落ち着く。RIAAとジャケットに指定されたCS米国輸出仕様盤がffss、英LXT盤がffssではなくRIAAだったということになりました。今日聞いた感じでは定説と逆になってしまった。
ついでに気になる盤を聴いてみます。ポーランドMuzaステレオ盤です。バクストというピアニストが弾くベートーヴェンのソナタ。ffrrで聴くと奏者の言いたいことがらくらくと前に出てきます。RIAAでは寸詰まりだった音の形が、しなやかに伸びる伸びる。和音の響きにある表情がくっきりと。
ふたたびカンポーリに針を入れる。録音1966年キングレコード第1 スタジオ 英DECCA eclipseレーベルですが、これがオリジナル(1972年初出)このレーベルは再発がほとんどですが、ffrrありNABあり、RIAAあり、とごちゃごちゃです。伴奏の和田則彦がシブい小品の数かず。線の太い音符で始まる『赤とんぼ』がいい。カンポーリが日本の歓待にいかに喜んだか、伝わってきます。ffrrでは表情過多、RIAAで喜怒哀楽がらくらく聴き取れます。
たとえば左のセレクタノブをRIAAポジション、右をffrrに合わせておけば、その下のトグルスイッチで瞬時に切り替えられ、音決めがらくらく判断できます。また右左のセレクタノブには大きなロータリスイッチを採用、ノイズ・トギレなくカチカチ回せるので、集中を切らすことなく遊べます。何しろ、イコライザの選択はほとんど感覚のみの世界ですから。ノイズやトギレは困ります。
不便の向こうに豊かさがある、と陰翳礼讃にあります。古い蝋燭で食事を楽しんだことのある人には、音のかたちに気づくことがあるでしょう。輪郭が刺々しくなくて真中から徐々に色が変化している炎は、液体のように自然に揺れるのです。注意して比べてみると、新しい蝋燭と、五十年前(少なくとも三十年前)の蝋燭では、真空管とトランジスタくらいの違いがあります。贅沢に並べられた古い蝋燭のある食卓で料理をいただくと、食後酒の時間の頃になれば、おしゃべり相手の隠されていた性格まで見えてくるから、ちょっと恐ろしい。ヨーロッパ人の場合顔の彫りが一層深く見えてくる。深々とした音色、込められた濃密な音楽の興。ひとつの音が次の音まで消えていくひと刷毛に、演奏家それぞれの影がある。どうしたら、古い蝋燭を見分けられるかって? それは、簡単。嗅いでみて、滑らかな乳の匂いがすれば、それは、見えないものまで見えてくる不思議な炎を宿した蝋燭です。
音質の良し悪しを、器を調べるように語り合えるのが我が国の人達です。音に沿う影を見つけ、それにより前に出る音が際立ちます。そうして再生音は立体となる。強烈なライトを当てて女優さんのシワを隠すように、RIAAで聴いているとハレイションを感じることがあります。そういうときにフォノイコライザが音のかたちを嗅ぎわけます。
EQ13 次回製作分販売は12月
価格は62,000円(消費税別 仏Philips社製12AT7 / 米GE社製軍用JAN5751 いづれも80年代製未使用管)数量限定
真空管なしは52,000円
ご予約は
greythorens@kind.ocn.ne.jp
0479-25−1140