2019年11月19日
11月19日 晩
寒い晩になった
本が読みたくて本屋さんに
針と溝、音のかたちが並んでディスプレイされていた。
嬉しくて、つい勢いで泉鏡花の本を贖った


「谷崎潤一郎も川端康成も決して連れて行ってくれない一種澄みきった天上界、そこへ連れて行ってくれるのが泉鏡花の文学だということを、三島さんはしきりに強調していたが、まったく私もその通りだと思う。 いくら鏡花文学の構造を論じ、基層を論じ、文体を論じても、鏡花の幻想の翼に身みずから乗せられて、この天上界の至福に一挙に参入しえないひとは、不幸な読者というほかあるまい。」(澁澤龍彦「天上界の作家」)
「春昼」「蛇くひ」「貝の穴に河童の居る事」「外科室」、
すぐにでも読みたくなる小品が並ぶ。
装丁は小村雪岱。
背表紙と表紙の間に灰色の帯、
細い金の筋二本を置く。
文章をやるせなく包み込む。
「うたゝ寐に恋しき人を見てしより
夢てふものは頼みそめてき」
と読み進めるうち、
ドビュッシィが聞こえてくる。
呼び鈴が和歌山からの蜜柑が届くのを告げた。
箱を開けると甘酸っぱさが広がって鏡花の呪縛を解いた。
さあ寝よか
本が読みたくて本屋さんに
針と溝、音のかたちが並んでディスプレイされていた。
嬉しくて、つい勢いで泉鏡花の本を贖った


「谷崎潤一郎も川端康成も決して連れて行ってくれない一種澄みきった天上界、そこへ連れて行ってくれるのが泉鏡花の文学だということを、三島さんはしきりに強調していたが、まったく私もその通りだと思う。 いくら鏡花文学の構造を論じ、基層を論じ、文体を論じても、鏡花の幻想の翼に身みずから乗せられて、この天上界の至福に一挙に参入しえないひとは、不幸な読者というほかあるまい。」(澁澤龍彦「天上界の作家」)
「春昼」「蛇くひ」「貝の穴に河童の居る事」「外科室」、

装丁は小村雪岱。
背表紙と表紙の間に灰色の帯、
細い金の筋二本を置く。
文章をやるせなく包み込む。
「うたゝ寐に恋しき人を見てしより
夢てふものは頼みそめてき」
と読み進めるうち、
ドビュッシィが聞こえてくる。
呼び鈴が和歌山からの蜜柑が届くのを告げた。
箱を開けると甘酸っぱさが広がって鏡花の呪縛を解いた。
さあ寝よか