2022年11月24日

スタインウェイを聴いて

去年水無月、1920年代製造ニューヨーク・スタインウェイを聞いた。こころ持っていかれる感がなく、ただ音が大きく電気的で、スピーカーから音が出ているような印象を受け、何かが違うと感じていた。同じホール同じピアニストで、昨日はラフマニノフ愛用のスタインウェイピアノ演奏会が開かれた。前半はラフマニノフ、メトレル。今回はすごい。黒薔薇が一斉にホールの空気を埋めつくし始めた。ディグニティを備えた大音量、音の芯が鋳鉄フレームを揺るがして、ほぐれて延びていく震えが見えるほど。メトレルが書いた音の手紙は柔らかな紙の上をさらさらとペン先がなぞる清らかさ。ピアニストの指先が空気を伝わり僕の脛は久しぶりに震える。ホールまわりの紅葉さえ音楽に寄り添う。
後半はスクリャービンとラフマニノフ。えっ? 何で? なんであの響きが消えた? 音ばかり大きくて聞くのが辛い。バリバリ、ドンドン、ガシャン。前半と同じピアノ、ホール、席、体調なのに。ピアニストの曲に対する練度、それに因する打鍵の深さが違うと、古いピアノは途端にへそを曲げる。ピアノの度量をわきまえた調律が為されたのだろう。前半と後半での打鍵の違いをこのピアノは見切っている。
ケンプ、ナット、バックハウス、ルフェビュール、打鍵が深い。50 年代のモノーラル録音を聴くとあらためて感じる。今のピアニストのそれは音色や響きが悪いとは言わないけれど薄い。身体の動きは大きいけれど、音はさらりとしている。現代のスタインウェイは進化?し続けて、大音量と歯切れの良い音が聞ける。毎週催される世界中のコンクールでは派手なパフォーマンスが繰り広げられている。
そう、ピアニストが魂を宿したピアノを鳴らしきるのは本当に大変なんだ。
追伸 明後日のヴィルサラーゼの演奏会は是非聴いてみたい。どんなピアノであろうと、彼女の音楽が響き渡る、予感がする。


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