May 2006

May 28, 2006

dc443c0a.jpg今月19日と28日に、古い友人でチェロ界のスター、よーちんこと長谷川陽子さんとのコンサートがあった。
長谷川さんとは、昨年7月にあった彼女の後援会「ひまわり広場」の集いでシューベルトのアルぺジョーネソナタを演奏して以来の共演となった。
今回は、通常の演奏会には入場出来ない未就学児のお子さん達が、自由な空気の中でお父さんお母さんと一緒に名曲を楽しむという素晴らしい企画の演奏会。様々なキャラクターの名曲を沢山演奏し、僕にとってもとても楽しい機会だった。
今回の演奏会を企画された方や会場の方、また長谷川さんの担当のマネージャーさん、巧みな譜めくり(笑)を披露してくれたS嬢など、とても温かく細やかにサポートして下さって、とても気持ちよく演奏に集中する事が出来たのも嬉しかった。

長谷川さんは、桐朋高校時代のクラスメート(一年C組・笑)で、入学当時からすでにその力量と才能で輝く存在だったが、昨年のシューベルト、そして今回の共演を経て、その引き出しの豊かさを実感したと共に、高校時代からまったく変わらない、明るく優しい人柄もまた感じる事が出来て、とても嬉しい機会となった。

今日はコンサートの他にチェロ体験コーナーを含むワークショップも行われた。
沢山の子供さん達が積極的にチェロに触れ、優しく長谷川さんが音出しを導いていく。「チェロの振動を身体で感じて欲しい。」という長谷川さんの言葉がとても心に残っている。初めて触れるチェロに興奮した子供達の輝くような笑顔を見て、今日この日で未来のチェリスト人口が増える事を何となく確信してしまった(笑)。
とにかく素晴らしい共演でした。よーちん、ありがとう!次の共演をとても楽しみにしています。

もう一つ、とても嬉しいサプライズがあった。
北海道の中学時代のクラスメートM君との再会!本当に嬉しかった。実に20年振りであった。M君は、一緒に登下校したり、プールに行ったりした、仲の良い友人であった。奥様と4歳になる息子さんと来てくれ、穏やかで優しい昔の面影を残しながらも、会わなかった20年の間にとても充実した時間を過ごしてきた印象を受けた。
実を言うと、ひと月前のこと、僕は突然、彼の夢を見たのだ!!この素敵な偶然は何かの予兆だったのだろうか・・・?
とにかく、今回の演奏会はお客さんとの音楽を通じた出会いに加えて、こんな素晴らしい再会もプレゼントしてくれたのだった。



(23:39)

May 14, 2006

ac034d29.jpg僕はこれまでにレコーディングを何度か経験している。
その中でも最も印象に残るアルバムはアウローラ・クラシカルでの「Liszt-Schubert」と古い友人の権龍模(こんたつのり)の作品を収録した「祈り〜Le Priere〜」の2枚だ。
一枚はそのタイトル通り、SchubertやLisztの作品などクラシックの作品を、後者は基本はクラシックではあるが、その音の響きは時にジャジーであったりポピュラー的なものだったり様々な顔を持つ作品を集めたアルバムだ。

それぞれのレコーディングの方法は大きく違うもので、その経験は非常に鮮烈な記憶として僕の頭の中に残っている。
「Liszt-Schubert」はクラシックジャンルの典型的な方式で録音された。
コンサートホールを貸し切って、マイクを数ヶ所、大切なポイントに立てていく。いわばマイクがコンサートの際の聴衆の「耳」になるわけだ。
クラシックコンサートピアニストとしての立場からすると、これはまったく普段着のつもりでレコーディングに臨めた。聴衆はいないが、演奏する行為そのものとしてはなんら変わりのないもの。楽器から流れ出る音の群が様々な空間に吸い込まれていくのを感じながら、コンサートさながらに集中して通していく。
CDとして商品になった途端に、自分の演奏が長く残ってしまう現実を思うと「脇にひや汗」、ではあったが今自分が出来る精一杯の事を作品を通して構築していく行為は、僕にとってさほど違和感の無いことだった。

一方「祈り」の録音はまるで勝手が違っていた。
最初はヴァイオリンとピアノだけで録音する計画が、最終的にはピアノトリオのベースに生のオーケストラが重なる大プロジェクトとなったこのCDは、実は本当に細かい録音作業が綿密に構築された集大成なのだ。その作業が終わるまで、実に3年近くの月日が流れたのである。
ピアノはV.ホロヴィッツの専属チューナーがオーバーホールしたニューヨーク製のSteinwayが、録音マイクには、日本に2本しか残っていないというドイツ製の「ノイマン」が贅沢に使われた。これをグランドピアノの中に入れ込んでしまうオンマイクという状態でピアノパートを録音した。クラシック録音では見ることのない方式だ。
ポピュラーの録音では常識のこの方法は、それまでこの録り方の経験が無かった僕に大いなる革命をもたらしてくれた。
楽器の鳴らし方や音量の調節など、クラシックの枠の中には存在しない様々なアイディアが僕の中で湧き出した。本当に過酷で苦しい録音だったけれど、同時に本当に楽しかったのも事実。

現在、アウローラ・クラシカルで近いうちに2枚目のアルバムの録音を検討している。この「祈り」のレコーディングを経て、自分の演奏の変化がどのような形で録音に現れるのか、今から楽しみにしているのだ。


(19:42)

May 03, 2006

794e82b4.jpg
僕の生まれて初めての不思議な体験は今から約18年前の事だった。


まだ中学1年生だった僕は、当時オーストリアに滞在していた知り合いに招かれてたった独りの初めての海外への旅に出させて貰った。今から考えると日本国内でさえ独りで旅行した経験も無かった僕がよく決心をしたものだと思うし、何より思い切って独り息子を遠い地球の裏側に夏の2ヶ月だけとはいえ送り出した両親にも感心してしまう。
当時アンカレッジ空港で給油の為に一度飛行機から降りたりして、本当に文字通りの長旅だった。何もかもが初めてな事ばかりのこの旅行は、幼かった僕には全てが新鮮かつ興奮させられるもので最初の目的地の音楽の都ウィーンに着いた時はすっかり疲労していたかもしれない。


予定通り当時ザルツブルグに留学していた女学生Mさんが空港まで迎えに来てくれていた。全ては今まで見たことも無い異国の地、建物、行き交う人々、そんなもの全てが疲れ切っていた僕は、最初はマイナスの力を感じていた。大きなトランクをゴロゴロ引き摺りカフェーに入ってくる東洋人の男の子は珍しかったのだろう。
皆の目が注目してくるその空気は耐え難く、早く宿泊先のホテルに連れて行ってくれと願っていたのを今でも思い出す。

やっと念願のホテルに着いたのはもう空も真っ暗になりかけた頃だった。
ウィーンの一番の繁華街の直ぐ近くに有るホテルペンションで、決して高級ではないが部屋に入れば驚くほどの広さ。大まかに2つの部屋にしっかり区切られていてそれぞれ鍵も掛かる。僕は手前の部屋に、Mさんは奥の部屋を使う事にした。
ひと通り歯を磨いて顔を洗うと疲労と時差ボケでもう耐えられないほどの睡魔が襲ってきた。

明日は朝早くに目的地であるザルツブルグへ移動だ。
Mさんへの挨拶もそこそこにベッドに倒れ込んだのは覚えているが、多分一瞬にして眠りの世界へ入り込んだのだろうと思う。
何時間か経っただろうか、僕は突然眠りから覚めてしまった。
(「ん?ここは何処だっけ? あっ、そうだ、今外国に来たんだ・・・・・。」)
そんな事を考えながら又ウトウトとし始めた時、突然動かなくなる自分の身体に驚いた。全く動けないし身体がどんどんベッドの中に沈んでいく感覚、急激に包まれていく部屋全体の異様な空気にただ怯えるしかなかった。これが金縛りと言われる状態だとは全く知らず、必死に叫ぶ!!「アー!!」

その声に驚いたMさんが奥のドアを開けて走って来てくれ心配して暫く色々お話に付き合ってくれたが、眠気に耐えられなかったのか又自分の部屋に戻ってしまった。
それを引き止めるわけにはいかず、電気を点けて眠ってしまわないように頑張っていたのだが悪い事に小便をもようしてきてしまった。
我々の泊まった部屋には専用のトイレが無く、一旦廊下に出て一番奥の突き当りを更に左に曲がった奥に共同のトイレはあった。もう時間は午前の2時を回っている。
我慢しようかとも思ったが、10近くも年上のお姉様とはいえ初めて会った女学生の前で万が一寝小便の失態を犯した時の事が頭に浮かんで、渋々起き上がる事にした。
廊下は思ったよりも明るくランプが点いていて安心したのを覚えている。
走るようにしてトイレに入って用を足す。とても長い用足しで我ながら妙に感心した。(そういえば暑くて沢山水分を取ったのにトイレに行かずに寝ちゃったもんな・・・・・)

そんな事を思っている内にさっきの恐ろしい金縛りの事も放尿と共にすっかり忘れていた。手を洗ってトイレの外に出たその時である。

私は一瞬何がどうなったのか分からず呆然と立ち竦んでしまった。

何故なら今僕は、さっきまで居た筈のホテルの中とは全く似ても似つかない、
想像もつかないくらいの古い薄暗い建物の中に立っていたからである。
いや、似ても似つかないとは正確な表現ではないかもしれない。
内部の造りは全く同じなのだ。只、その壁、ランプ、古びた重そうな部屋の扉全てが例えようも無く古くそこに満ちている空気もおどろおどろしくも重く圧し掛かって来るようだ。僕は混乱しながらも兎に角自分の部屋に戻る事を考えた。
記憶と全く同じ造りの部屋の配置の建物の中を走って自分の部屋へ戻りドアのノブに手を掛けた、
とその時だった。僕の耳に、部屋の中からあられもない男女の営みに伴う大きな喘ぎ声が飛び込んで来た。


(え?え?何だ、今の?)


純な13才の少年の僕は全くを持ってしてパニクッった。
見上げたドアに書かれるルームナンバーは、見たことも無い位古くいかめしい大きな、錆付いた鉄のような物で造られていたのを見た時、言いようも無い恐怖を感じたのである。 「ここ何処?」
僕は殆ど半べそをかきながら廊下中を歩き回った。
部屋を間違えたのだと自分に言い聞かせ同じ階の部屋の前に何度も立ち止まった。
しかし、聞こえて来るのだ。全ての部屋から、どの部屋からも妖しい喘ぎ声が!!
一体どの位の時間さ迷ったのかは全く覚えてはいない。
しかし本能的に「そうだ、トイレに戻ろう。トイレは記憶のまま新しかったよな。」
と思ったのは何故かはっきりと覚えている。
僕は殆ど泣きながら無我夢中でトイレの有る突き当りまで走った。
その間も聞こえてくる例の妖しい声は、走る僕を追ってくるかのようにどんどん大きくなってくるのだ。
さっきまではドアの前に立って洩れて来る程度の声が、今は部屋という部屋から割れんばかりに廊下中に響き渡っているのだ。
念願のトイレのドアの前に立った瞬間に僕は気を失った。

         ※        ※         ※

気が付いた時、僕はトイレのドアの前で前かがみになってしゃがみこんでいた。
慌てて見回すと、そこは元の見覚えの有るホテルの中だった。
廊下にはそろそろ白みかけた空から青白い光が差している。
「ああ、戻った、戻って来れた!!」
僕は無性に嬉しかった。部屋まで戻る間もあの「声」は勿論聞こえて来ないし部屋の扉もルームナンバーも元のものに戻っている。
部屋に戻ってからは安心感からか再びベッドに倒れこんで寝てしまったが、数時間後にはこんな地獄のような恐怖を味わった僕とは裏腹に、すっかり熟睡したMさんに叩き起こされた。
朝ご飯を食べながら早速この話しをしてみたのだが、意外にもMさんは直ぐ信じてくれた。
そして彼女は

「この辺昔は売春の館が沢山有った所らしいわよ。」

とあっさりと言うのだ。
その時、僕は全てを納得したのだった。
あの古びた建物、重く古い扉、中から聞こえる妖しく激しい声、そうか、そうだったんだ!!
僕はどの位か分からないけど、暫くの間時間を遡ってしまったのだと。


今もこの体験を時々思い出すのだが、その度に僕は思うのだ。
もしあの時ドアを開けてしまったら、何がおこったのだろうか。
そして、果たして僕は戻って来れたのだろうか・・・・・と。

この事が有ってから、今まで起こらなかった様々な不思議な現象が
時々起こるようになったのだが、これは又後日話す事にしたい。



(23:24)

May 01, 2006

11d7e917.jpgこれは僕の公式ホームページの方でも紹介した随分昔に見た、しかしどうしても忘れられない夢の話。少々長いですがお付き合い下さいm(_ _)m

「Herr Beethoven」
時折とても不思議な夢を見る。
それも飛びっ切り奇妙で、驚く程の展開性を伴う劇的なストーリー物だ。 時にはその夢によって、しばらくの間呆然と夢と現実の狭間をさ迷いさすらってしまうのだが、一日中その夢に翻弄され支配されてしまう事も度々だ。 今回は、その中でも最も印象的且つ素晴らしい、ある一つの夢について書いてみたい。

あれは僕が東京の音楽高校に通う為、東府中に有る音大生専用の下宿にて独り暮らしを始めて数ヶ月経ったばかりの頃の事だ。 その夢とは次のようなものだ。
僕は夢の中で、今は記憶に懐かしい、約6畳一間の下宿部屋に寝ている。部屋にはグランドピアノが所狭しと置かれ、その直ぐ足元に布団を敷いて、寝返りを打つ度に自分の足がピアノに当たるのに少々苛立ちながらも、うとうととまどろんでいる・・・。と、その時だ、突然台所と部屋を仕切るドアが勢い良く開き、なんと!眩いばかりのオーラを身から発したルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンさんが、傍若無人とも言える勢いでズカズカノシノシと入り込んで来たのだ。
それまでよく目にして来た、彼を描いた肖像画やスケッチにある、恐ろしい形相をしたベートーヴェンさんとは全く異なる、とても朗らかで優しい顔で微笑みながら、しかし強烈なエネルギーを全身に漲らせながら、上半身を起こしながらも動けずにいる布団の中の僕の方へ近付いて来る。現実にそんな事が起ころうものなら、確実に絶叫して口から泡を吹いて失神している所だが、夢の中の僕は意外に冷静で、むしろ親しみを持って彼を迎えた。 そして彼はおもむろに言うのだ。「実はね、キミぃ。ワタシには10曲目のシンフォニーが有るのだよ。」「え?!本当ですか?!」と私。「そうじゃよ。キミぃ、聴いてみたくはないかね?キミぃ〜。」「ぜ、是非!!」するとベートーヴェンさんはピアノの前にどっかと座り、小脇に抱えていた五線紙の束を譜面台の上に広げ、実に無造作にその交響曲第10番を弾き始めたのである。
"素晴らしい!!"の一言だった。輝かしく美しい音色によって紡ぎ出される活き活きとした第1主題は、めくるめくハーモニーの展開と漲るエネルギーによって、自由自在に変奏を繰り返す。
僕は心の底から感動し、打ち震えた。「す、すいません、ぼ、ぼ、僕にも弾かせて下さい!」 「あ?チッ(舌打ち)今イイ所なのにぃ・・・・・、キミぃ〜、しょうがないなぁ、もう。」と言いながらも彼は結構嬉しそうにピアノを譲ってくれた。目の前に開かれているスコアは非常に読み易く、しかもとても美しい。僕は喜びに全身を任せ、交響曲第10番に没頭して行く。「ああ、なんて素晴らしい曲なのであろうか、なんという幸せなのだろうか!!」今初めて聴き、初めて弾く曲だというのに、指が鍵盤に吸い寄せられていくように自然に動き回り、この神々しいシンフォニーを再現して行く。
時折ベートーヴェンさんの少々だみ声の指示が飛ぶ。「そこはね、キミぃ〜。もっと厳しさとパッションを持ちながら、そうそう、このハーモニーの持続を意識するのだよ、キミぃ〜!」「なるほど!あー、良い感じですねー!こんな感じではどうでしょう?!」「なかなかイイものを持っとるね、キミぃ〜。レッスン代は負けてあげてもいいぞよ!」「エ?!レッスン代取るんですか?月末で仕送りが未だなんですけど・・・・・。」などど言いながらも全楽章を弾き終えたのである。
ベートーヴェンさんは満足そうに僕を見つめ、そしてうなずいた。その目にはうっすらと涙が滲み出ている。僕も又、冷め遣らぬ興奮に彼の顔を見つめ返す。するとだ、彼はこの交響曲第10番について自らの楽曲分析を披露し出した。僕は魔法に掛けられたように聞き惚れた。まるで聞いた事が無い個性的な音楽理論、大胆な和声の展開セオリー、彼の思想が、哲学が目の当たりになった至福の時だった。 その感覚が極地に達し恍惚となったその瞬間、私は突然、現実に目を覚ました・・・・・。

さっきまでの幸せな時間が夢であった事を理解するまで暫く掛かった。あまりにもリアルな感覚に現実との境目が感じられず、そうと判断するのが困難であったのだが、先程までの素晴らしい時間が、自分の頭の中で創り上げた空想の世界であった事を否定したいという、切ない程の本能的欲求が強く作用した為であろう。 部屋中を見回し愛すべきHerr Beethovenを、そして彼がさっきまでピアノの譜面台の上に広げていた筈のスコアを探そうと目を皿のようにして必死になったが、当然の事ながらそんなものは有る筈が無い。がっかりしてしばらくの間ボウっとしていたのだが、先程から強く自分の頭の中を支配し続けているあるものの存在に気が付いた。そう、それはあのシンフォニーの輝かしくも美しい冒頭の部分だったのである。僕は慌てて飛び起きてピアノの前に座り恐る恐るそのメロディーを弾いてみた。
「覚えている、覚えているぞー!!」興奮状態で一番最初から弾き始めてみた。こんな不思議な事はこれまで無かった。まるで何年も掛けて深く付き合ってきた作品のように、又はそれ以上にこの交響曲第10番が、我が手指から紡ぎ出されて来るのだ。僕はあまりの事に恐怖すらも感じて、途中で弾くのを止めてしまった。楽譜に書き留めて置こうかとの一瞬思ったのだが、何故かそうする事が奇妙に躊躇われ、遂にそうしなかった。「そうしてはいけない」という何かの強い力が僕を支配していたのだ。

そしてこの夢は信じ難い方向へとなだれ込む。 その日の夜、何気なくTVをつけガチャガチャとチャンネルをひねっていると、あるニュース番組から、とんでもないアナウンスが僕の耳に飛び込んで来た。「ベートーヴェンの十番目の交響曲のスケッチが発見された」と!!
暫くの間、激しい鳥肌が僕を襲い、呆然と立ち尽くしたまま数十秒が過ぎた。 ハっとして慌ててその交響曲のメロディーを思い出そうと試みたのだが、何という事だ!全く思い出せないのである!!どんなに頑張っても、ただの一つのメロディーも、たった一つの和音すらも全く浮かばない。あの交響曲第10番は、忽然と私の記憶から姿を消してしまったのである。
そのニュースを見るまでは、あんなにそのメロディーに浸り、その光り輝く偉大な世界に支配されていたのに!!

この強烈な夢と不思議な偶然について初めて人に話したのは、何故かそれから数年経ってからだった。

今でもあの夢の中でのベートーヴェンさんとの楽しく幸せな時間を懐かしく思い出す。 それにしても、発見されたという、交響曲第10番のスケッチは、その後どうなったのであろうか?

P.S
この文章を読んで下さったある音楽評論家の方が、僕に一枚のCDを贈ってくれました。それは、発見されたベートーヴェンの交響曲第10番の原稿をもとに録音された第1楽章のCDだった。バリー・クーパー博士の講演も収録されている貴重な一枚。
じっくり記憶を辿りながら聴きましたが、夢の中で出会ったベートーヴェンさんが弾いてくれたものと同じかどうか・・・は残念ながら判りませんでした・・・。
そんなものなのかもしれないですね。。。


(10:02)