tenor sax
2009年02月08日
Live in Italy / Seamus Blake (ts)
振り返ってみると、2008年はSeamus Blakeにとってターニングポイントの年だった。
まず印象に残ったのが、サイドマンとして参加したJoel Haynes(ds)の"Transitions"、Tal Wilkenfeld(b)の"Transformation"の2枚。いずれも08年リリースの作品だ。これらの作品での主役を喰わんばかりの素晴らしいプレイを聴いて、最近のSeamusは一味違うと本格化を感じていたが、それ以上に決定打となったのが08年末に満を持してリリースされたリーダー作"Live in Italy"。
今のSeamusには、音の重みや質感だけで聴く者を魅了するようなエネルギーがある。芯が太くて、ザラザラした質感があって、内側からえぐられるような音色。エアを多く含んでいて柔らかく、ちょっと抑えた雰囲気があった数年前の音色から、完全に一皮剥けた印象だ。ロングトーンで伸ばしたフレーズ一つとっても圧倒的な存在感と説得力がある。
この音色を以て、シリアスでドラマチックな楽曲をスケール大きく歌い上げた本作は、まさに傑作と呼ぶに相応しい出来。とにかくSeamusのプレイが豪快・奔放で、どこまででも行ってしまいそうな勢いがある。時にエフェクターなども大胆に取り入れたりもしているのだが、イロモノっぽくなっておらず、見事に効果を出すことに成功している。
サイドでは名手David Kikoski(p)がSeamusのハイテンションに負けず劣らずの好演を披露し、Rodney Green(ds)、Danton Boller(b)らがリズム煽りまくる。この面子で内容が悪いはずがない。
ちょっとトリッキーな6拍子"Way out of Willy"、モーダルな"Fear Of Roaming "、重厚感溢れるスローチューンの"Ladeirinha"など、どの曲も10分以上の熱演だが、内容も充実しており、何度聴いても飽きることがない。
個人的には今一番注目しているプレイヤー。09年以降のSeamus Blakeの活躍がますます楽しみになる一枚だ。
HMVで購入可能 Live in Italy / Seamus Blake(ts)
Seamusのmyspaceに試聴あります
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まず印象に残ったのが、サイドマンとして参加したJoel Haynes(ds)の"Transitions"、Tal Wilkenfeld(b)の"Transformation"の2枚。いずれも08年リリースの作品だ。これらの作品での主役を喰わんばかりの素晴らしいプレイを聴いて、最近のSeamusは一味違うと本格化を感じていたが、それ以上に決定打となったのが08年末に満を持してリリースされたリーダー作"Live in Italy"。
今のSeamusには、音の重みや質感だけで聴く者を魅了するようなエネルギーがある。芯が太くて、ザラザラした質感があって、内側からえぐられるような音色。エアを多く含んでいて柔らかく、ちょっと抑えた雰囲気があった数年前の音色から、完全に一皮剥けた印象だ。ロングトーンで伸ばしたフレーズ一つとっても圧倒的な存在感と説得力がある。
この音色を以て、シリアスでドラマチックな楽曲をスケール大きく歌い上げた本作は、まさに傑作と呼ぶに相応しい出来。とにかくSeamusのプレイが豪快・奔放で、どこまででも行ってしまいそうな勢いがある。時にエフェクターなども大胆に取り入れたりもしているのだが、イロモノっぽくなっておらず、見事に効果を出すことに成功している。
サイドでは名手David Kikoski(p)がSeamusのハイテンションに負けず劣らずの好演を披露し、Rodney Green(ds)、Danton Boller(b)らがリズム煽りまくる。この面子で内容が悪いはずがない。
ちょっとトリッキーな6拍子"Way out of Willy"、モーダルな"Fear Of Roaming "、重厚感溢れるスローチューンの"Ladeirinha"など、どの曲も10分以上の熱演だが、内容も充実しており、何度聴いても飽きることがない。
個人的には今一番注目しているプレイヤー。09年以降のSeamus Blakeの活躍がますます楽しみになる一枚だ。
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2008年09月08日
Transitions / Joel Haynes(ds)
「おっ、このテナー、なかなか良いな♪」
週末、吉祥寺のdisk union。中古の棚を漁っていた手が思わず止まる。名盤との出会いは、いつも偶然、そして唐突にやってくる。すかさずレジ横まで移動し、Now playingというタグの付いたCDを確認する。まだ何も情報は無いけれど、もうこの段階で購入はほぼ決定。
タイトルは”Transitions”。ジャケット写真のドラマー、Joel Haynesのライブ盤のようだが、残念ながら聞き覚えのないプレイヤーだ。しかしクレジットでメンバーを確認して、思わず納得。テナーは以前から注目していたSeamus Blakeだ。僕のアンテナに引っ掛かるのも頷ける。
ただ、このアルバムでのプレイは、僕の知っている彼の演奏とは一味違う。スタジオ盤では意図的にちょっと抑えたプレイをするところに歯痒さを感じていたのだが、ここでは演奏が一変。スモーキー且つブルージーな渋い持ち味を残しながら、実に豪快で自由度の高い、ライブ盤ならではの突き抜けたプレイをしているのだ。これこそ、僕がSeamus Blakeに求めていたプレイだ。この感覚は、Chris Potterの傑作"Lift"や、Joshua Redmanのライブ盤"Spirit of the morment"を聴いた時と同じ様な爽快感。Seamus Blakeもまた、ライブで聴くべきミュージシャンであることが、よく理解できた。
また、これだけのフロントを迎えて、バックが悪いはずもない。硬質でカッチリしたTilden Webbのピアノを中心としたトリオとしての演奏も素晴らしく、作品の満足度は非常に高い。
あの日、あのタイミングで吉祥寺を訪れなければ、たぶんこの作品に出会う機会は無かっただろう。良い作品に出会うには、敏感にアンテナを張り巡らせること、こまめにレコードショップに通うこと、そしてほんの少しの運の良さが必要なのだろう。偶然が支配する、素晴らしい出会いに感謝したい一枚である。
Joel Haynesのmy spaceにて試聴可。
購入はこちら
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週末、吉祥寺のdisk union。中古の棚を漁っていた手が思わず止まる。名盤との出会いは、いつも偶然、そして唐突にやってくる。すかさずレジ横まで移動し、Now playingというタグの付いたCDを確認する。まだ何も情報は無いけれど、もうこの段階で購入はほぼ決定。
タイトルは”Transitions”。ジャケット写真のドラマー、Joel Haynesのライブ盤のようだが、残念ながら聞き覚えのないプレイヤーだ。しかしクレジットでメンバーを確認して、思わず納得。テナーは以前から注目していたSeamus Blakeだ。僕のアンテナに引っ掛かるのも頷ける。
ただ、このアルバムでのプレイは、僕の知っている彼の演奏とは一味違う。スタジオ盤では意図的にちょっと抑えたプレイをするところに歯痒さを感じていたのだが、ここでは演奏が一変。スモーキー且つブルージーな渋い持ち味を残しながら、実に豪快で自由度の高い、ライブ盤ならではの突き抜けたプレイをしているのだ。これこそ、僕がSeamus Blakeに求めていたプレイだ。この感覚は、Chris Potterの傑作"Lift"や、Joshua Redmanのライブ盤"Spirit of the morment"を聴いた時と同じ様な爽快感。Seamus Blakeもまた、ライブで聴くべきミュージシャンであることが、よく理解できた。
また、これだけのフロントを迎えて、バックが悪いはずもない。硬質でカッチリしたTilden Webbのピアノを中心としたトリオとしての演奏も素晴らしく、作品の満足度は非常に高い。
あの日、あのタイミングで吉祥寺を訪れなければ、たぶんこの作品に出会う機会は無かっただろう。良い作品に出会うには、敏感にアンテナを張り巡らせること、こまめにレコードショップに通うこと、そしてほんの少しの運の良さが必要なのだろう。偶然が支配する、素晴らしい出会いに感謝したい一枚である。
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2008年02月14日
Tortoise and the Hare / Yellow Jackets
何度も繰り返し見てしまう、圧倒的な迫力の映像だ。綿密に計算され尽くした音楽と、狂気にも似た熱い演奏の共存。
Bob Mintzer(ts)とRussell Ferrante(p)による、メカニカルなフレーズのデッドヒート。Marcus Baylorのドラムがビートを煽り、Jimmy Haslipのベースが歌う。JAZZ色の強くなったこの時期のYellow Jacketsが、僕は最も好きだ。
この曲が収録されたCDはこちら
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2007年01月15日
2007年01月06日
Mind over matter / Mark Shim(ts)
Mark Shimは、Joshua Redman世代以降に登場した若手テナープレイヤーの中で、僕が最も期待を寄せていた逸材の一人だった。2000年3月の2ndアルバムリリース以来、全くと言っていいほど音沙汰が無くなってしまったが、彼は一体どうしているのだろう・・・?
Joe Hendersonの浮遊感とJames Carterのワイルドさを兼ね備え、卓越した個性と、伝統と革新を同時に表現できる優れた感覚を持ち合わせているテナープレイヤー、Mark Shim。その存在感は、98年にBlue Noteから発表されたデビュー作である本作から、既に際立っていた。
Geri Allen(p)、David Fiuczynski(g)、Curtis Lundy(b)、Eric Harland(ds)、Ralph Peterson(ds,tp) という大物揃いのメンバーをサイドに迎えた本作。その中に於いてShimは、25歳の新人による初レコーディングとは思えないスケールの大きさと高い完成度を余すところ無く見せつけ、その実力を強烈にアピールしている。
演奏はアコースティックな4beatを基調としているが、コード感覚やサウンドの響きは極めて斬新だ。強固な枠組みを持つピアノトリオに対し、Fiuczynskiの個性的なエレクトリックギターがノイジーな歪みをもたらす。Shimのテナーはそのオープンスペースを自由且つ豪快に往来する。その秀逸なバランス感覚が、独特な空気を作り上げている。JAZZの次に来るべき姿を予見したかのようなその作風は、同じくFiuczynskiの参加した上原ひろみのデビュー作"Another mind"に通じるところがあるようにも思える。
2ndアルバム"Turbulent flow"の内容も良かっただけに、このまま消えてしまうのは惜しい人材。Mark Shimの復活劇を、是非とも期待したいところである。
購入はこちら Mind over matter
試聴有り(輸入盤) Mind over matter
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Joe Hendersonの浮遊感とJames Carterのワイルドさを兼ね備え、卓越した個性と、伝統と革新を同時に表現できる優れた感覚を持ち合わせているテナープレイヤー、Mark Shim。その存在感は、98年にBlue Noteから発表されたデビュー作である本作から、既に際立っていた。
Geri Allen(p)、David Fiuczynski(g)、Curtis Lundy(b)、Eric Harland(ds)、Ralph Peterson(ds,tp) という大物揃いのメンバーをサイドに迎えた本作。その中に於いてShimは、25歳の新人による初レコーディングとは思えないスケールの大きさと高い完成度を余すところ無く見せつけ、その実力を強烈にアピールしている。
演奏はアコースティックな4beatを基調としているが、コード感覚やサウンドの響きは極めて斬新だ。強固な枠組みを持つピアノトリオに対し、Fiuczynskiの個性的なエレクトリックギターがノイジーな歪みをもたらす。Shimのテナーはそのオープンスペースを自由且つ豪快に往来する。その秀逸なバランス感覚が、独特な空気を作り上げている。JAZZの次に来るべき姿を予見したかのようなその作風は、同じくFiuczynskiの参加した上原ひろみのデビュー作"Another mind"に通じるところがあるようにも思える。
2ndアルバム"Turbulent flow"の内容も良かっただけに、このまま消えてしまうのは惜しい人材。Mark Shimの復活劇を、是非とも期待したいところである。
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2006年12月04日
Morning song / Don Menza(ts)
ロッキーのテーマで知られるMaynard Ferguson (tp)のビッグバンドを出発点に、Stan Kenton (p)、Buddy Rich (ds)、Louis Belson (ds)など様々な名門ビッグバンドを渡り歩き、アレンジャーとしての才能も定評があるテナープレイヤー、Don Menza(ドン・メンザ.)。一般のJAZZファンには馴染みの薄い存在かと思うが、ビッグバンド経験者だと、彼のアレンジをやったことがある方も少なからずいるのではないだろうか。
本作はMenzaが65年に発表した、初のリーダーアルバム。オーバーブロウ気味に、艶のある音色で朗々と歌い上げる男性的な演奏スタイルは、Tubby Hayes、Johnny Griffinといった豪快なテナーマンたちを思い起こさせる。適度なスピード感と、若干後ろへもたれながらも澱みなく流れるフレージングが何とも言えず心地良い。
バンドの構成もts+as+tp+tbの4管にリズム隊という編成で重厚感あるサウンド。Menzaのアレンジの妙が十分に堪能できる作りだ。Louis Belson big bandの代表曲でもあるCinderella's waltz、古いアメリカ民謡を見事にアレンジしたWhen Johnny comes marchin' home、哀愁漂うクールなBossaのNew Spanish bootsなど聴き応えのある曲が並ぶ。選曲もメリハリがあって、アルバム全体の流れの中にきちんと起承転結の流れが作られている点も高く評価したい。また、レーベルがMPSと言うこともあり、録音のレベルの高さも秀逸である。
現在国内で流通しているMenzaの作品はそれほど多くはないが、ワンホーンのカルテットからビッグバンドまでバラエティに富んだラインナップで、どれも好演盤だ。豪快なブロウと緻密なアレンジが共存したサウンドを是非ご体験頂きたい。
購入はこちら Morning song
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本作はMenzaが65年に発表した、初のリーダーアルバム。オーバーブロウ気味に、艶のある音色で朗々と歌い上げる男性的な演奏スタイルは、Tubby Hayes、Johnny Griffinといった豪快なテナーマンたちを思い起こさせる。適度なスピード感と、若干後ろへもたれながらも澱みなく流れるフレージングが何とも言えず心地良い。
バンドの構成もts+as+tp+tbの4管にリズム隊という編成で重厚感あるサウンド。Menzaのアレンジの妙が十分に堪能できる作りだ。Louis Belson big bandの代表曲でもあるCinderella's waltz、古いアメリカ民謡を見事にアレンジしたWhen Johnny comes marchin' home、哀愁漂うクールなBossaのNew Spanish bootsなど聴き応えのある曲が並ぶ。選曲もメリハリがあって、アルバム全体の流れの中にきちんと起承転結の流れが作られている点も高く評価したい。また、レーベルがMPSと言うこともあり、録音のレベルの高さも秀逸である。
現在国内で流通しているMenzaの作品はそれほど多くはないが、ワンホーンのカルテットからビッグバンドまでバラエティに富んだラインナップで、どれも好演盤だ。豪快なブロウと緻密なアレンジが共存したサウンドを是非ご体験頂きたい。
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2006年11月27日
OUTRUN / Kasper Villaume(p)
お目当てのミュージシャンのアルバムやライブを聴いた時、期せずしてその共演者の素晴らしい演奏に魅せられる、ということが音楽、特にJAZZの世界ではままある。本作も僕にとってはまさにそんな一枚。購入時の目的は勿論、本blogでも最近何度か話題に取り上げている期待の若手ピアニスト、Kasper Villaume。しかしこの作品ではサイドに入ったデンマーク出身のテナー奏者、Lars Moller(ラース・メラー)のプレイにすっかりヤラれてしまった。
ここでの演奏を聴いた印象からするとLars Mollerは、Coltrane〜Wayne Shorterというモダンテナーの大きな流れを正統的に消化したスタイルのプレイヤーであると言える。フレーズ構築の仕方はかなりメカニカルなのだが、理論を偏重した無機質なサウンドとは完全に一線を画している。内面から絞り出される咆哮とでも言おうか、演奏者の感情が伝わってくるかのような、有機的・人間的なサウンドなのだ。メカニカルな理論をベースにしながら、自由自在にどんどん展開していき、どこまでも切れ目なく続いていくフレーズ連鎖の快感。とにかくフレーズには意外性があって、ちょっと理論からぶっ飛んだプレイを交えながらも、それを超越したところでソロをまとめてくるその構成力は、本当に見事である。Light の曲調やソロパートのキレっぷりを聴いていると、Branford Marsarisの名盤"Requiem"のオープニングを飾ったDoctoneという曲を連想してしまう。実際このアルバムでのLarsのプレイには、"Requiem"で神懸り的なプレイを披露していたBranfordにも通じるような迫力が感じられる。エアを多く含みダークで深みのある音色。重みと説得力を持ったサウンドが、 それぞれの曲で独自の世界観を構築していく。
Larsはこの後、02年のKasperのリーダー作"#2"にも参加しており、こちらもなかなかオススメ。Kasper Villaume自身もマシュマロレコードから10月に発売された新作"Footprints"も大好評のようで、まさに充実の時期を迎えている。デンマークを代表する名手2人の今後の活躍に、今後も是非期待したい。
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ここでの演奏を聴いた印象からするとLars Mollerは、Coltrane〜Wayne Shorterというモダンテナーの大きな流れを正統的に消化したスタイルのプレイヤーであると言える。フレーズ構築の仕方はかなりメカニカルなのだが、理論を偏重した無機質なサウンドとは完全に一線を画している。内面から絞り出される咆哮とでも言おうか、演奏者の感情が伝わってくるかのような、有機的・人間的なサウンドなのだ。メカニカルな理論をベースにしながら、自由自在にどんどん展開していき、どこまでも切れ目なく続いていくフレーズ連鎖の快感。とにかくフレーズには意外性があって、ちょっと理論からぶっ飛んだプレイを交えながらも、それを超越したところでソロをまとめてくるその構成力は、本当に見事である。Light の曲調やソロパートのキレっぷりを聴いていると、Branford Marsarisの名盤"Requiem"のオープニングを飾ったDoctoneという曲を連想してしまう。実際このアルバムでのLarsのプレイには、"Requiem"で神懸り的なプレイを披露していたBranfordにも通じるような迫力が感じられる。エアを多く含みダークで深みのある音色。重みと説得力を持ったサウンドが、 それぞれの曲で独自の世界観を構築していく。
Larsはこの後、02年のKasperのリーダー作"#2"にも参加しており、こちらもなかなかオススメ。Kasper Villaume自身もマシュマロレコードから10月に発売された新作"Footprints"も大好評のようで、まさに充実の時期を迎えている。デンマークを代表する名手2人の今後の活躍に、今後も是非期待したい。
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2006年11月12日
Gentle November / 武田和命(ts)
深まり行く秋、そして訪れつつある冬の気配。11月というのは秋と冬の狭間の、独特な季節感を持った月だ。毎年この時期になると僕は、この"Gentle November"というアルバムをプレイヤーに載せる。
89年に食道癌のため49歳の若さで世を去った孤高のテナーマン、武田和命(たけだ・かずのり)。僕が彼のことを知ったのは5年ほど前のこと。中古CD屋で1000円ほどで投げ売られていた、この作品を手にしたことがきっかけだった。当時、彼のことなど全く知らなかったのだが、シンプルながら独特の雰囲気と迫力を持ったジャケットに、妙に惹かれた。
一聴して分かるのは、本作がColtraneの"Ballads"に対するオマージュであるということ。そして逆説的に伝わってくる、「これはただのColtraneのモノマネではない」という強烈な自己主張である。確かにこの作品での武田のプレイは、Coltraneライクではある。しかし一音一音、噛み締めるように切々と歌い上げるそのバラードの演奏の中には、単なる音色やフレーズの美しさという次元を越えた、何かを訴えかけてくる力がある。多分それは、武田和命と言う人物が内面に抱えていた深遠な世界観の、自然な形での発露なのだろう。溢れ出るリリシズム、優しさ、悲しみ。彼はその音に、何を託したのだろうか?もしそんなことを訊いたとしても、寡黙な人物だったと言う武田は、多分黙ってうなずくばかりなのだろうけれど。
わずかに残された音源やネット上に転がる情報を調べていくと、彼が昔ながらの破天荒で破滅型のJAZZミュージシャンであったこと、しかしその人間臭さ故に、多くの人々から愛され慕われていたことが良くわかる。"Gentle November"というタイトルは、彼の誕生日に因んで、ピアニストの山下洋輔が付けたタイトルだ。11月が来る度に、人々はこの美しいアルバムのこと、そして今は亡き武田和命というテナーマンのことを想う。それは多分表現者にとって、ひとつの幸せの形なのだろう。
商業的な成功に恵まれず、不遇に喘ぎ続けた彼の生涯。しかしこの作品の存在によって、その最後の1ページには、救いのあるエピローグがもたらされたのではないだろうか。
現在購入可能なのは新星堂のみのようです
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89年に食道癌のため49歳の若さで世を去った孤高のテナーマン、武田和命(たけだ・かずのり)。僕が彼のことを知ったのは5年ほど前のこと。中古CD屋で1000円ほどで投げ売られていた、この作品を手にしたことがきっかけだった。当時、彼のことなど全く知らなかったのだが、シンプルながら独特の雰囲気と迫力を持ったジャケットに、妙に惹かれた。
一聴して分かるのは、本作がColtraneの"Ballads"に対するオマージュであるということ。そして逆説的に伝わってくる、「これはただのColtraneのモノマネではない」という強烈な自己主張である。確かにこの作品での武田のプレイは、Coltraneライクではある。しかし一音一音、噛み締めるように切々と歌い上げるそのバラードの演奏の中には、単なる音色やフレーズの美しさという次元を越えた、何かを訴えかけてくる力がある。多分それは、武田和命と言う人物が内面に抱えていた深遠な世界観の、自然な形での発露なのだろう。溢れ出るリリシズム、優しさ、悲しみ。彼はその音に、何を託したのだろうか?もしそんなことを訊いたとしても、寡黙な人物だったと言う武田は、多分黙ってうなずくばかりなのだろうけれど。
わずかに残された音源やネット上に転がる情報を調べていくと、彼が昔ながらの破天荒で破滅型のJAZZミュージシャンであったこと、しかしその人間臭さ故に、多くの人々から愛され慕われていたことが良くわかる。"Gentle November"というタイトルは、彼の誕生日に因んで、ピアニストの山下洋輔が付けたタイトルだ。11月が来る度に、人々はこの美しいアルバムのこと、そして今は亡き武田和命というテナーマンのことを想う。それは多分表現者にとって、ひとつの幸せの形なのだろう。
商業的な成功に恵まれず、不遇に喘ぎ続けた彼の生涯。しかしこの作品の存在によって、その最後の1ページには、救いのあるエピローグがもたらされたのではないだろうか。
現在購入可能なのは新星堂のみのようです
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2006年10月30日
Time changes / Wayne Escoffery (ts)
自分の好みをとことん追いかけて音楽を聴くのも良いけれど、誰かが選んでくれた音楽を聴くことにもまた、新しい発見と驚きがある。そんな体験が楽しくて、僕はJAZZ喫茶に出かけるのだ。本作もそんな「JAZZ喫茶で出会ったお気に入り盤」の中の一枚。出会いは、高田馬場の"Milestones"だった。都内のJAZZ喫茶の中でも老舗の名店ながら、堅苦しくならず居心地の良い店内。マスター自作のプリアンプとJBLのスピーカーが奏でる素晴らしいサウンドと、美味いコーヒーを求めて、時々足を運んでいたお気に入りの店だ。
店内にこのアルバムの一音目が響いた瞬間、まず硬質ながら艶と深みのある音色に耳が行った。最近の主流からは外れたスタイルだが、悪くない。フレージングはメカニカルな組み立て方をベースにしているけれど、時に豪快にアウトする場面もあり、なかなか一筋縄ではいかない様子。これも十分合格点。ちょっと後ろにもたれるような独特のタイム感も、なかなか個性的だ。
結局しばらく聴いているうちにすっかりこのアルバムが気に入ってしまい、カウンターでこの作品をチェックし、店を後にした。後日CDを入手した上、Wayne Escofferyというテナープレイヤーについて詳細をいろいろ調べてみると、師匠がアルトのJackie McLeanとのこと。テナーだからあまり気が付かなかったけれど、確かに彼のスタイルにはMcLeanの影響が色濃く伺える。今時ブルースやバップを、こういった骨っぽいプレイで正攻法に聴かせる事の出来るプレイヤーは貴重だと言えるだろう。また、今や若手No.1の注目株となったピアノのAaron GoldbergやドラムのCarl Allenもサイドで味のある仕事振りを披露していて興味深いところ。
手放しで大絶賛の名盤といった感じではないけれど、地味な演奏の中にも何かキラリと光るものを感じさせる秀作。こういう渋い作品をかけて下さった"Milestones"のマスターの選盤にも感謝したい。
試聴と購入はこちら Time changes
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店内にこのアルバムの一音目が響いた瞬間、まず硬質ながら艶と深みのある音色に耳が行った。最近の主流からは外れたスタイルだが、悪くない。フレージングはメカニカルな組み立て方をベースにしているけれど、時に豪快にアウトする場面もあり、なかなか一筋縄ではいかない様子。これも十分合格点。ちょっと後ろにもたれるような独特のタイム感も、なかなか個性的だ。
結局しばらく聴いているうちにすっかりこのアルバムが気に入ってしまい、カウンターでこの作品をチェックし、店を後にした。後日CDを入手した上、Wayne Escofferyというテナープレイヤーについて詳細をいろいろ調べてみると、師匠がアルトのJackie McLeanとのこと。テナーだからあまり気が付かなかったけれど、確かに彼のスタイルにはMcLeanの影響が色濃く伺える。今時ブルースやバップを、こういった骨っぽいプレイで正攻法に聴かせる事の出来るプレイヤーは貴重だと言えるだろう。また、今や若手No.1の注目株となったピアノのAaron GoldbergやドラムのCarl Allenもサイドで味のある仕事振りを披露していて興味深いところ。
手放しで大絶賛の名盤といった感じではないけれど、地味な演奏の中にも何かキラリと光るものを感じさせる秀作。こういう渋い作品をかけて下さった"Milestones"のマスターの選盤にも感謝したい。
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2006年07月30日
Love eyes / Bob Rockwell (ts)
Kasper Villaume(p)、荒巻茂生(b)、大坂昌彦(ds)という魅力的なメンバーをサイドに迎えた横浜Dolphyでの04年のライブ盤"Black Jack"が好評を博し、ちょっとした話題となっているテナープレイヤー、Bob Rockwell。45年生まれの61歳ということなので、Michael Brecker(49年生まれ)、Steve Grossman(51年生まれ)らとほぼ同年代。もはや大ベテランと呼べる世代のプレイヤーであるが、何故か今迄、日本では殆ど注目されない存在であった。実は僕自身も"Black Jack"で初めて彼の存在を知ったクチである。気になっていた矢先に本作がたまたま中古で出ていたので、迷わず入手!
野太く艶がある音色、ちょっと後ろにモタれるタイム感、スケールが大きく豪快な歌い回し。低音域ではDexter Gordonを髣髴とさせるプレイを展開していくRockwellであるが、時々出てくる高音域のフレーズではColtraneへとプレイスタイルの印象が一変する。DexterとColtrane、一見相反するスタイルの二人であるが、Rockwellは互いの要素を上手く消化・融合させ、使い分けながら自らの歌に仕上げていっている。卓越した技巧やフレーズの斬新さを求めるColtrane-Breckerの系譜が主流となっている現代テナーシーンに於いて、朗々と歌い上げる歌心で勝負できるテナープレイヤーとして、貴重な存在であると言えるだろう。
本作は84年に、日本人プロデューサー上不三雄氏が主催するレーベル、マシュマロレコードに吹き込まれた一枚。オープニングを飾るYou and night and the musicから、疾走感と熱気溢れるプレイで、一気に聴く者を惹き付ける。かなりキレ気味なフレーズを連発しながらも、一方では自らを冷静に制御しているかのような落ち着きと余裕があり、ベテランらしい優れたバランス感覚も秀逸である。また、I see your face befor me、Love eyesでは渋く歌い上げる、見事なバラードのプレイ、Will you still be mineでは明らかにColtraneを意識したプレイを披露。彼の懐の深さを存分に味わえる構成となっている。
アルバム全体はワンホーン・ハードバップの王道と言ったような印象だが、Rockwellなりの歌心とオリジナリティが随所に光っており、古典の焼き直しや、型通りの予定調和なプレイに留まることの無い、実の詰まった一枚。技術云々よりも、熱く、良く歌うテナーをお求めなら、是非一度聴いてみて頂きたいプレイヤーだ。
購入はこちら Love eyes
マシュマロレコードHPにて試聴できます。
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野太く艶がある音色、ちょっと後ろにモタれるタイム感、スケールが大きく豪快な歌い回し。低音域ではDexter Gordonを髣髴とさせるプレイを展開していくRockwellであるが、時々出てくる高音域のフレーズではColtraneへとプレイスタイルの印象が一変する。DexterとColtrane、一見相反するスタイルの二人であるが、Rockwellは互いの要素を上手く消化・融合させ、使い分けながら自らの歌に仕上げていっている。卓越した技巧やフレーズの斬新さを求めるColtrane-Breckerの系譜が主流となっている現代テナーシーンに於いて、朗々と歌い上げる歌心で勝負できるテナープレイヤーとして、貴重な存在であると言えるだろう。
本作は84年に、日本人プロデューサー上不三雄氏が主催するレーベル、マシュマロレコードに吹き込まれた一枚。オープニングを飾るYou and night and the musicから、疾走感と熱気溢れるプレイで、一気に聴く者を惹き付ける。かなりキレ気味なフレーズを連発しながらも、一方では自らを冷静に制御しているかのような落ち着きと余裕があり、ベテランらしい優れたバランス感覚も秀逸である。また、I see your face befor me、Love eyesでは渋く歌い上げる、見事なバラードのプレイ、Will you still be mineでは明らかにColtraneを意識したプレイを披露。彼の懐の深さを存分に味わえる構成となっている。
アルバム全体はワンホーン・ハードバップの王道と言ったような印象だが、Rockwellなりの歌心とオリジナリティが随所に光っており、古典の焼き直しや、型通りの予定調和なプレイに留まることの無い、実の詰まった一枚。技術云々よりも、熱く、良く歌うテナーをお求めなら、是非一度聴いてみて頂きたいプレイヤーだ。
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