運命のボタン

■ストーリー『ある日の明け方、ノーマ(キャメロン・ディアス)とアーサー(ジェームズ・マースデン)夫妻のもとに箱が届く。箱の中には赤いボタンが付いた謎の装置が入っていた。その日の夕方、スチュワート(フランク・ランジェラ)と名乗る謎の人物がノーマを訪ね、驚くべき提案を持ちかける。「このボタンを押せば、あなたは100万ドルを受け取る。ただしこの世界のどこかで、あなたの知らない誰かが死ぬ。提案を受けるかどうか、期限は24時間。他言した場合取引は無効」。ふたりは道徳的ジレンマに迷うが、目の前に100万ドルを見せられ、生活が苦しいこともあり、結局ボタンを押してしまう。だが、それは想像をはるかに超える恐ろしい事態の始まりに過ぎなかった!』



「ボタンを押せば1億円、でも見知らぬ誰かが死ぬ」というシンプルかつ突拍子もない設定を聞いて「コメディか?それともブラックなファンタジーなのかな?」などと想像していたのですが、悪い方向へ裏切られた気分ですよ、トホホ。


以下、ネタバレあり。

要するに『フォース・カインド』や『ノウイング』や『フォーガットン』みたいなタイプの映画で、「ヤツらの正体は人智を超越した存在だった!」ってな感じの展開に「え〜?またこのパターンかよ〜」と激しく落胆させられるハメになってしまいました。


『フォーガットン』と同じく、相手の正体が判明するまでは結構面白いんですが、そこから先がもういけません。あれよあれよと言う間に物語はどんどん支離滅裂に成り果て、何も事態が解決しないまま映画は終了。だいたい、神様とか宇宙人とかを出してくる時点で「真面目に映画を語ろう」っていう姿勢を放棄しているとしか思えない。だって何でもアリになるじゃない?どんなに不思議な事が起こっても、「それは全て神様の力です」で片づけられたんじゃあ、真剣に映画を観る気になれませんよ。


また、登場人物が肉体的な欠損を持っているという設定や図書館でのエピソードなど、思わせぶりな伏線やギミックがあちこちに仕込まれている割にはそれらが有効に機能していないとか、映画的ロジックが完全に破綻している点も辛いなあ。


更にストーリー終盤、主人公達より前にボタンを押した人が現れて、「俺はもうダメだが、君達はまだ間に合う!」みたいに助かる可能性を示唆するものの、結局最後は彼らと同じ運命を辿ってしまう。これはもう、エンターテイメント的なドラマツルギーを否定しているにも等しく、なぜ2時間近くも掛けてこんなラストしか描けなかったのかと空しくなりました。


一部でカルト的な人気を獲得した『ドニー・ダーコ』のリチャード・ケリーらしい不思議な雰囲気が漂う不条理な映画ではありますが、僕は『ドニー・ダーコ』ってどこが面白いのかさっぱり分からなかったので、残念ながら本作にも最後まで感情移入できませんでしたよ、トホホ。