super 8


■ストーリー『1979年の夏。主人公のジョーはオハイオの小さな町で父親と2人暮らしをしていた。ある夜、親に内緒で家を抜け出し、親友5人と駅舎で8ミリ映画の撮影していた時、列車の脱線事故に遭遇する。混乱の中で偶然にも、8ミリカメラは大破した列車から飛び出してくる“何か”を映し出していた。やがて現場に到着した軍は、何者かに極秘情報が知られてしまったと、大規模な捜索を開始する。現場から逃げ帰ったジョーたちは、誰にも言わないと誓い合うが、その日から町では不可解な事件が次々と起き始めた…。「M:i:III」「スター・トレック」のJ・J・エイブラムス監督が、巨匠スティーヴン・スピルバーグとの夢のコラボで描くSFジュブナイル・アドベンチャー超大作!』




※本日のレビューは結構作品内容に触れていますので、映画を観ていない人はご注意ください。



全国の映画館で絶賛公開中の映画『SUPER 8/スーパーエイト』を観て来ましたよ。J・J・エイブラムスとスティーヴン・スピルバーグがタッグを組み、「『E.T.』を越える愛と感動の歴史的超大作が誕生!」などと大げさに宣伝されてしまっては、観ないわけにはいきません。


で、実際に観てみたら、『E.T.』と『未知との遭遇』と『宇宙戦争』と『ジョーズ』と『グーニーズ』に『スタンド・バイ・ミー』的な要素を盛り込み、『クローバーフィールド』ばりのスペクタクル・シーンを加えた結果、「味が混ざり合い過ぎてなにも特徴が無くなったシチュー」みたいになってましたよ、トホホ。どうしてこうなった?

いや、僕はスピルバーグの映画って結構好きなんです。むしろ「生粋のスピルバーグ好き」と言っても過言ではないでしょう。なんせ、生まれて初めて映画館で観た映画が『未知との遭遇』だったぐらいですから(もちろん『E.T.』も劇場で観ました)。その他、『インディ・ジョーンズ』や『ジュラシック・パーク』など、お気に入り映画を数えたらきりがありません。なので、スピルバーグ・テイストが全開の本作も普通に楽しめることは間違いないんですけどねえ…。


とにかく、J・J・エイブラムスのスピルバーグに対する愛というかリスペクトが尋常じゃないです。照明やカメラアングル、果ては編集のタイミングからレンズフレアに至るまで、全編にわたって往年のスピルバーグ・タッチを完全コピーしているのですよ。物語の時代設定が79年ということも相まって、強烈にノスタルジーを感じさせる映画になっています。


しかし、あまりにもスピルバーグの作風に似ているが故に、「似てない部分」が逆に目について違和感を感じてしまうというか。スピルバーグへのオマージュとしては完璧なんですが、どうせならもっと「中身の部分」も似せる努力をして欲しかったなと。


例えば『E.T.』の場合は、最初に得体の知れない不気味な姿をちょっとづつ見せて観客の恐怖心を煽り、その後実際に本人(E.T)と対面すると友好的なことが判明し、「あれ?意外といいヤツじゃん!」と思わせるという、心理的なギャップを利用して架空のキャラクターに上手く感情移入させていました。


それに対して『スーパー8』の場合は、恐ろしい姿をした宇宙人だと思っていたら、実は本当に恐ろしいヤツだった!という「そのまんまじゃん!」としか言いようがない捻りゼロの展開にションボリ。


しかも、中盤で科学者が宇宙人の生態を研究しているくだりとか、「触れた瞬間に気持ちが伝わってきた」とか、ラストに向けて色々と前フリをしているのに全然オチと伏線が繋がっていません。これで「少年と宇宙人の心の交流が…」みたいなハートフル路線に持って行こうとするのはかなり無理があるんじゃないでしょうか?


おまけに、カメラ屋のにーちゃんのダメ人間ぶりがハンパないです。それだけならまだしも、ストーリー上不必要な行為が多すぎる。特にびっくりしたのは、主人公達と一緒に車で逃げるシーン。突然、「俺、今ラリってるから運転できねえ」などと言い出し、なんと主人公に運転を代わってもらうのですよ。オイオイこのシーン、いるの!?どう考えてもプロット的に何の意味も無いシチュエーションなんですが。普通の感覚のプロデューサーなら真っ先にカットする場面でしょう(なんでスピルバーグはカットしなかったんだ?)。


他にも、「車がぶつかっただけにしては事故の規模が大きすぎる」とか、「あれ程の大事故でどうして死者が出ないんだ」とか、「軍の兵隊が作業している真横で映画を撮影しているのに全く注意されないのはおかしい」とか、不自然なシーンは一杯あるんですが、そういう些細な部分はこの際どうでもいいんです。一番の問題は、「ここまでスピルバーグに似せておきながら結局この程度か?」という、”本物との落差”が激しいことでしょう。


こういう映画を撮れば、必ず『E.T.』と比較されることは作り手側もわかっているハズです。にもかかわらず、内容的にはいたって普通の完成度。これで「『E.T.』を越える愛と感動の歴史的超大作!」と宣伝されても、「その通りです」とはとても言えませんよ。むしろ、『E.T.』っぽいラストシーンで無理矢理ハッピーエンドに持っていこうとする姑息な演出が白々しくてガックリきました。この展開で大団円とは安易すぎます。喰われた人達の立場はどうなるんだと。


これなら『E.T.』をリメイクした方が良かったんじゃない?「映画好きな子供達」と「1979年」という基本設定はそのままで、宇宙人の設定をちょっと変えれば全然イケると思うし。オリジナルの『E.T.』は小さな町の一角で起きた事件だったけど、本作では町全体を巻き込んだ大規模な事件にスケールアップしているので、リメイク物として十分な価値も持っているし。しかも、スピルバーグ本人が製作しているのだから、こんなにいい条件のリメイクは滅多にないぞ。つーか、もういっそのことスピルバーグが『E.T.2』を撮ればいいんだよ!(笑)


まあリメイクの話はともかく、あまりにもイメージ先行に走り過ぎて、全体的に「仏作って魂入れず」みたいな出来映えになっているのがちょっと残念でしたねえ。ただ、出ている役者さん達は皆それぞれ魅力的で、キャラクターにも感情移入しやすいです。特に、主人公を演じたジョエル・コートニーと、アリス役のエル・ファニングの存在が光っていました。というわけで、色々悪口を書いてしまいましたが、スピルバーグと比較しなければ普通に面白い映画なので、観て損はないと思います。


尚、エンドクレジットで、主人公達が劇中で撮っていた8ミリ映画が流れるのですが、これが結構いい感じ。ダイジェスト的に見せるだけかと思ったら、最初から最後まで全部見せているのです。しかも、微妙に面白かったりするので侮れません(実はこれが本編という説もありw)。エンディング曲が一発屋ザ・ナックの『マイ・シャローナ』ってのもなんか笑えます(笑)。