プロメテウス (1)


いよいよ本日からリドリー・スコット監督の最新作『プロメテウス』が公開されますが、皆さんはもう観ましたか?先に公開されたアメリカではかなりの大ヒットを記録したらしく、早くも続編の制作が決定したようですけど、日本での評価は賛否両論、いやむしろ「金返せバカヤロー!」的な厳しい批判も相次いでいる様子。残念なことに、この批判があながち的外れとも言えないんですよね。事実、『エイリアン』好きの僕でさえ「これはちょっといかがなものか?」と困惑するようなシーンが多々ありました。


というわけで、本日は映画『プロメテウス』のネタバレ・レビュー編です。前回(『プロメテウス』映画レビュー)は具体的な内容については書きませんでしたが、今回は「なんでそんなことになるんだよ!」と常識的に考えておかしいシーンに突っ込みを入れつつ、ストーリー内に散りばめられた”数々の謎”について独自に検証していきたいと思います。まだ映画を観ていない方はご注意ください。

さて、『プロメテウス』を観た人は薄々気付いていると思うけど、この映画はとにかくシナリオが雑なんだよね(苦笑)。登場人物が明らかに不自然な行動を取ったり、説明不足で意味不明なシーンがあったり、いわゆる”ツッコミどころ満載映画”になっているのだ。それらのシーンを具体的に指摘してみると以下のような感じに。


●オープニング直後からいきなり謎シーン炸裂
激しい勢いで水が流れる滝壺の側で、筋肉ムキムキの色白な宇宙人が容器に入った黒い液体を飲み干す。上空に停滞していた巨大な円盤がゆっくり動き出すと、液体を飲んだ宇宙人が突然苦しみ出し、そのまま水の中へ落下。濁流に揉まれる宇宙人の体には異変が生じ、DNAが破壊→再構築されていく。このシーンはいったい何を意味しているのか?


場所はどこで時代はいつなのか、説明が一切ないので映画冒頭から全く意味が分からないんだけど、公式HPによると「遥か太古の地球を訪れた宇宙人が、地球の生態系に適した新生命体を生み出すべく、黒い液体を飲むことで自身のDNAを変化させ、これにより人類の起源となる新型遺伝子が誕生した」ということらしい。そんなの、映画を観ただけじゃ分からないよ!つーかキャッチコピーの「人類最大の謎」ってコレのこと?あっさり見せすぎだろ!


●宇宙人に出会ったら、普通はもっと驚くんじゃない?
未知の惑星に到着した一行は知的生命体の痕跡を発見する。しかし「異星人との遭遇」という世紀の一大事件に直面しているのに、皆のリアクションが薄い。まあ、確かに驚いてはいるんだけど、初めて地球人以外の知的生命体に出会ったのだから、もっと大騒ぎになってもいいのでは?


●デヴィッドは何でも知っている
初めて入った宇宙船の中で扉を開けたり機器を操作したり、なぜあんなに詳しいのか?しかも最後は「宇宙船はもう一隻ある。そして私はそれを操縦できる」などととんでもない事を言い出す有様。どうしてそんなことまで知ってるんだよ?と思ったけど、この辺はどうやらワザとやっているらしい(理由は後述)。


●調査隊員達がバカすぎる
「大気の成分が地球と同じだから」という理由だけでヘルメットを脱いでしまうなんて無茶にもほどがある。未知の病原菌を吸いこんだらどうすんだ?「先に帰るぜ」と言いながら道に迷うし、遺跡の中でプカプカとタバコは吸うし、謎の宇宙生物を見つけたら平気で触ろうとするし、本当に科学者なの?


●突然凶暴化
遺跡の中で迷って置き去りにされたアホな二人組は、案の定エイリアン(の幼生体?)に襲われて死亡。ところが、一人はエイリアンが体内へ侵入し、もう一人は酸の血を浴びて死んだはずなのに、なぜか顔面を溶かされた方が生きていて、しかも凶暴化しているのだ。ヘルメット無しで地表をうろつき、とてつもない怪力でクルーを殴り殺すその様は、完全に「人間以外の何か」に成り果てている。過去のエイリアンシリーズを見ても、寄生された人間がこのような状態になる描写は無かったと思うが、ではいったい彼はどうなってしまったのか?


●危険な調査に社長が同行
物語終半、プロメテウス号にピーター・ウェイランド社長がこっそり乗っていたことが判明。しかし、103歳の高齢者がどうしてわざわざ危険な旅に同行したのか?延命方法を知りたいなら、なおさら地球で安静にしているべきだろう。ハイパースリープ技術が実用化されているのだから、方法がわかるまで冷凍保存しておけばいいのに。

●全自動手術台
てっきり外部からの操作で患者を手術する機械かと思いきや、なんと内側に操作パネルが付いていて、自分で自分を手術するという『ブラック・ジャック』以来の超展開に驚愕!しかも、手術直後なのに飛ぶは走るはの人間離れした大活躍を見せ付けるなど、アンビリーバボーすぎて言葉も出ない。アンドロイド並みの不死身ぶりだ。


●実はアンドロイド?
「アンドロイド並み」と言えば、シャーリーズ・セロン演じる女性監督官メレディスも謎だらけのキャラクターである。終始無表情な顔からは感情が読み取れず、動きもなんだかロボットみたいでぎこちない。「実はアンドロイドなんじゃないの?」との疑惑を抱かせるが、なんとシャーリーズ・セロン本人も「どっちなのかわからないまま演じていた」とのこと。脚本を読んでもはっきりと書かれていなかったため、「どちらにも解釈できるような演技をした」らしい。


元々、彼女は「主人公のエリザベス・ショウを演じて欲しい」とオファーされたものの、『マッドマックス』のリメイク版に出演が決まっていたため辞退。ところが、『マッドマックス』の撮影が突如延期されスケジュールが空いてしまった。そこで「やっぱり『プロメテウス』に出たい」と問い合わせると、「メレディスの役なら空いてるよ」と言われ急遽引き受けることになったそうだ。


なので、あまり役作りができないまま撮影に挑むことになったわけだが、監督のリドリー・スコットは「どっちかわからない方が面白いじゃん!」と考え、わざと”メレディスの正体”を曖昧にしたらしい。でも、あまりにも謎すぎて感情移入しにくくなっているのはマイナスなのでは?まあ、『ブレードランナー』でも、デッカードがレプリカントかどうかはっきりさせないまま物語を終わらせてたし、「リドリー・スコットらしい」と言えば確かにそうなんだけどねえ・・・。


●『エイリアン』に繋がらない?
エンジニアが例の座席に座り、”スペースジョッキー”のスタイルになるシーンを見て、「おお!やっぱり1作目に繋がるのか!」と興奮したのも束の間。直後に宇宙船は落下し、中からジョッキーが降りてきて別の場所で死亡してしまう。その後、ヒロインが落ちた宇宙船に入るが、当然スペースジョッキーの姿は無い。ということは、『エイリアン』の1作目に出てきた宇宙船は別の場所にあるのか?良く確認したら、今回主人公達が来た惑星はレクチル座ゼータ第2星系のLV-223。しかし、『エイリアン』で着陸した惑星はLV-426となっている。なんと『エイリアン』で発見されたスペースジョッキーと本作のエンジニアは別人だった!?


●横に逃げろ!
地表に落下してゆっくり倒れてくる宇宙船を避けようとして走り出すメレディス(シャーリーズ・セロン)。しかし、縦に長い建造物に対して縦方向に逃げても全く意味が無いことは子供でもわかる理屈だ(ギャグアニメじゃないんだからさw)。逃げるんなら横に逃げろよ!


●オチが凄い
クライマックス、自分の宇宙船を相手の宇宙船にぶつけて自爆する『さらば宇宙戦艦ヤマト』みたいな展開には度肝を抜かれたが、まさかもう一隻宇宙船があったとは!てっきり「あ〜、このヒロインはここで死んじゃうのか」などと思ってたら、想定外の”助かるモード”に開いた口が塞がらない。しかも、「このままあいつらの惑星へ乗り込むわよ!」とやる気満々で、とても数分前に腹を裂いたばかりとは思えぬほどの熱血キャラに変貌している。オイオイ地球へ帰るんじゃないのかよ!?目的地までどれだけ距離が離れているかも分からないのに、食料とかどうすんの?近年観た映画の中では最も衝撃的なオチだったなあ。


プロメテウス (2)


というわけで、巨匠リドリー・スコットが撮ったとはとても信じられないほどツッコミどころ満載映画に仕上がっている本作だが、これを見て直ちに「ダメ映画」と決め付けてしまうのは早計かもしれない。なぜなら、ツッコミどころは大きく2パターンに分けられるからだ。ひとつは「単純に状況がおかしいパターン」。もうひとつは「製作者が意図的に説明を省いているパターン」。このうち「わざとやっているパターン」に当てはまるのが、デヴィッドの言動全般だろう。


宇宙船の内部構造にやたら精通していたり、黒い液体をメンバーに飲ませたり、挙句の果てには宇宙船の操縦までこなしてしまうなど、どう見ても「デヴィッドは事前に何かを知っていた」としか考えられない。これはつまり、既に制作が決定している続編『プロメテウス2』のための”伏線”ではないかと思われる。以下は、僕の勝手な推測だ(合っているかどうかは知りませんw)。


巨大企業「ウェイランド社」の創始者:チャールズ・ビショップ・ウェイランド(ランス・ヘンリクセン)は、2004年に初めてエイリアンと遭遇するが直後に死亡。しかし、実はその時に”エンジニア”の痕跡を発見していたのである。その後、ビショップの後を継いだ息子のピーター・ウェイランド(ガイ・ピアース)は2016年に地球の温暖化問題を解決する画期的な装置「大気プロセッサー」を開発、これにより会社の株価が急上昇する。しかし、それはエンジニアの痕跡から得られた、地球の科学力を遥かに凌駕する未知のスーパーテクノロジーだった。


以降、ウェイランド社はエンジニアのテクノロジーを研究・解析し、その技術を応用して「反重力デバイス」や「自律式小型探査装置(通称”子犬”)」等の様々なパテントを取得、一大軍需産業として急激な発展を遂げていく。そして2023年にはガンの特効薬を発明し、ノーベル平和賞を受賞。更に2025年には「次世代型アンドロイド:デヴィッド01」を開発、その後バージョンアップを繰り返し、最新型は「デヴィッド08」となる(この時点で”エンジニア”たちの言語や文化なども含め、ほぼ全て解明されていた可能性が高い)。ところが、ウェイランド社の科学者達がどんなに総力を結集しても「DNA変換技術」だけは解明することができなかった。そこで、2073年にピーター・ウェイランドは社運を懸けた巨大プロジェクト「プロメテウス計画」を立ち上げ、”彼ら”との接触を画策するようになる。(以上、公式設定から一部参照)


このように仮定すれば、なぜデヴィッドがエンジニアと会話が出来るのか、そしてなぜ宇宙船を操縦できるのか、などの辻褄が合う。つまり、アンドロイドのデヴィッドにはあらかじめエンジニアに関する全てのデータがインプットされており、惑星到着後は”彼ら”への接触を最優先事項とするようにプログラムされていたのだ。「地球人のDNAは彼らからもたらされたもの」という事実を突き止めたピーター・ウェイランドは自らの”死”を克服すべく、エンジニアからDNAに関する新たな情報提供を試みるものの失敗。怒ったエンジニアに殴り倒され、「結局無駄だった」との空しいセリフを残して絶命する(なぜエンジニアが怒ったのかについては今後解明されるはず)。


尚、宇宙船の操縦方法については、エンジニアが残したホログラフ映像を見て学習するという描写があるが、たったあれだけの情報で巨大宇宙船の操縦方法を理解できるとは到底思えず、やはり何らかのデータを事前に入手していたと考えるのが妥当であろう。

そして続編では、唯一生き残ったエリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)とデヴィッドがエンジニアの母星に辿り着き、今までの謎が全て明らかになる・・・かどうかはまだ分からない。更に、『プロメテウス3』に続くかもしれないからだ。まあ、いずれにしても今回不明なままに終わった疑問点については、今後の展開を待つしかないだろう。尚、次回作について今のところ決定しているのは「ノオミ・ラパスとマイケル・ファスベンダーが引き続いて出演する」、「公開日は2014年〜2015年」ということぐらい。続編のタイトルもまだ正式には決定しておらず、『パラダイス』や『シャングリラ』など、いくつかの候補を検討中らしい(普通に『プロメテウス2』でいいんじゃないの?)。


ちなみに、ピーター・ウェイランドが死去した後の「ウェイランド社」は急速に経営が悪化し始め、2100年頃に日系企業の「ユタニ(湯谷)社」に買収されてしまう。そして合併後は「ウェイランド・ユタニ社」と社名を変更。その後2122年、エレン・リプリーらを乗せた宇宙貨物船:ノストロモ号は、「ウェイランド・ユタニ社」の指令を受けて惑星LV-426に着陸し、スペース・ジョッキーを発見することになるのだ。


気になるのは、「このスペース・ジョッキーとエリザベス・ショウとは、どこかで接点を持つのだろうか?」ということ。しかし、発見当時のスペース・ジョッキーは完全に化石化していた事を考えると、30年やそこらで化石化するのは無理があるから、やはり関係しないのか?また、エリザベス・ショウによると「エンジニア達は地球人を滅ぼそうとしている」らしいが、いったいなぜなのか?この辺の疑問点も、是非続編で解明してもらいたい。

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