ジョーカー (1)

どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。
現在、日本を含め世界中で大ヒット上映中の『ジョーカー』を観て来ましたよ。

先週から全国359スクリーンで公開されている本作は、土日2日間で観客動員数35万6000人、興行収入5億4800万円を記録し、公開3日間では動員49万8000人、興収7億6000万円を稼ぎ出しました(10月11日現時点で早くも10億円を突破!)。

これは19億7000万円を記録した『ダークナイト ライジング』の興収比147.3%に相当し、最終興収50億円以上が期待できる好スタートとなっているようです。

また、10月4日〜10月6日の全米ボックスオフィスランキングでは、興行収入9,620万2,337ドル(約106億円)の大ヒットで初登場1位に輝き、2018年の『ヴェノム』(興収8,025万5,756ドル・約88億円)を大きく上回り、歴代最高のオープニング記録を樹立。R指定映画の歴代興収ランキングでは、『デッドプール』『デッドプール2』『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』に次いで4位となりました。

さらに、DCコミックス作品としても、バットマン、スーパーマン、ワンダーウーマンらヒーローたちを集結させた超大作『ジャスティス・リーグ』のオープニング興収(9,384万2,239ドル・約103億円)を上回るなど、凄まじい勢いで映画界を席巻しています(ちなみに『ジョーカー』の製作費は『ジャスティス・リーグ』の5分の1以下らしい)。

その上、第76回ベネチア国際映画祭では最高の金獅子賞を獲得するという、アメコミ映画として史上初の快挙を成し遂げ、『ジョーカー』の評価はまさに超絶爆上がり状態!

そんな称賛を浴びる一方、リアルすぎる暴力描写が人々に与える影響を不安視する声も上がっている模様。かつて『ダークナイト ライジング』の上映中に銃乱射事件が起きたこともあり、全米では本作の公開に際して陸軍、警察、各劇場が警戒を強めていると報じられました。

実際、カリフォルニア州の映画館に脅迫電話が入り、現地の警官が出動。夕方以降の上映が全て中止されたとか。また別の映画館では「バックパックを背負った不審な男が劇場内を歩き回っている」と通報があり、観客は全員外へ避難し、不審者が警察に拘束されるという事件が勃発。

さらにニューヨーク・タイムズスクエアの映画館「AMC Empire 25」では、殺人の場面が映るたびに大きな拍手を繰り返し、誰も笑ってないシーンで一人だけ大爆笑している男が劇場内にいたため、3分の1の観客が「気持ち悪い」と感じて席を立ったそうです。いや、これはマジで怖いでしょ(笑)。

というわけで、全世界的な規模で大ヒットしている『ジョーカー』ですが、果たしてどんな映画なのか?ざっくり所感を書いてみたいと思います(ほぼネタバレは無いと思いますが、一応、未見の方はご注意ください)。

ジョーカー (4)

あらすじ『精神に問題を抱えているアーサー(ホアキン・フェニックス)は、要介護の母親との2人暮らし。カウンセリングを受けながら、ピエロの仕事で食いつなぎつつ、いつの日かコメディアンとして成功する日を夢見ている。しかし、不幸な出来事が次々と彼を襲い、徐々に稀代の狂人“ジョーカー”へと変貌していくのだった…』


さて、僕がこの作品を観て一番ビックリしたのは「これ本当にアメコミ映画なの?」という点なんですよね。

言うまでもなく、本作の主人公のジョーカーとはバットマンの宿敵であり、ジャンル的にはDCコミックスの悪役キャラクターに焦点を当てた「スピンオフ作品」なのです。

スピンオフといえば、『X-MEN』の人気キャラをフィーチャーした『ウルヴァリン』や『ローガン』や『デッドプール』、あるいは『デアデビル』のエレクトラなど、過去にもいくつか作られていたので「ああいう感じなのかな〜」と思ってたんですよ(事前に予告編も観てなかったし)。

ところが、それらのスピンオフ作品に比べると、『ジョーカー』にはカッコいいアクションやワクワクするようなカーチェイスなどの”派手なシーン”がほとんどなく、ひたすら主人公の不幸な日常が描かれているのです。

精神病に悩まされながら年老いた母親と暮らしているアーサーは、悪ガキたちに看板を盗まれてボコボコにされたり、通っていたカウンセリングの福祉が突然打ち切られたり、いきなり仕事をクビになったり、電車でサラリーマンに絡まれたり、面白いぐらい悲惨な目に逢いまくり。

あらすじだけを見れば、本作は「周りから虐げられ負のスパイラルに陥った哀れな男が、徐々にストレスを蓄積させ、遂には取り返しのつかない凶行に走ってしまい、怪物的な狂人へと変わっていく」という、そういう物語なんですよ。

ただ、こうしたストーリーは過去にも様々な作品で語られてきているし、はっきり言えば『ジョーカー』でなくても成立する話じゃないですか?僕がビックリしたのはまさにその部分で、「ええ〜?こういう内容をアメコミのキャラでやっちゃうの!?」という”意外性”に驚いたんですね。

これに関してはトッド・フィリップス監督自身も意外だったらしく、「大手の会社が権利を所有する有名なキャラクターを使い、まさかここまで自由に作れるなんて、言い出しっぺの私が驚いているぐらいだ。いちばん大胆なのは、むしろワーナーとDCだよ(笑)」とコメントしていました。

たしかに監督が言っているように、制作側の判断がすごいと思います。「よくこんな企画を許可したなあ」と。だって、今までのアメコミ映画とはあまりにもスタイルが違いすぎる=ヒットする保証が何もないわけですから。

つまり本作が画期的なのは、単なる『バットマン』のスピンオフ映画ではなく、”貧困”や”格差”などの現実的な社会問題を取り上げつつも、敢えて”ジョーカー”というアメコミのキャラクターを使ってシリアスなドラマを描いた点なのですよ。

「異質」という意味では過去に作られたDC映画の中でもダントツで異彩を放っており、バットマンやスーパーマンが入り込む余地は全くと言っていいほどありません。いや〜、本当にすごい!

ちなみに、『バットマン』関連の映画としては、マーゴット・ロビーが主演する『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』が来年公開されますが、どう考えても世界観が繋がりそうにないですよねえ(笑)。

ジョーカー (3)

それから、本作がマーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』『キング・オブ・コメディ』から強い影響を受けている点も大きな特徴でしょう。『ジョーカー』の舞台は1981年のゴッサムシティということで、トッド・フィリップス監督は「若い頃に観た1970〜80年代の映画のビジュアルや作風を意識した」と語っています。

中でも『タクシードライバー』は特にお気に入りらしく、ベトナム戦争の後遺症で深刻な不眠症を患っているトラヴィスと、「自分の意志とは関係なく笑ってしまう病気」に悩むアーサーはキャラクター的にとても良く似ていて、抑圧された人間が「個」の力で反乱を起こす過程も両方の主人公に共通しています。

さらに、アーサーが手を頭に当てて拳銃のようなポーズをとるなど、完全に『タクシードライバー』をマネた描写があったり、主人公のアップを撮る際のカメラワークに至るまで強烈なオマージュが感じられました。

また、『キング・オブ・コメディ』でロバート・デ・ニーロが演じていた役は、テレビのトーク番組の司会者に自分を売り込むものの、うまくいかずに司会者を誘拐してしまうコメディアン志望のルパート・パプキンですが、母親と二人暮らしで、自室でトーク番組の司会者になりきる姿など、その境遇はアーサーとそっくりです。

つまり、映画『ジョーカー』の「精神的な病を抱えながらコメディアンを目指している主人公」って、まさにトラヴィスとルパートを融合させたようなキャラクターなんですよね。

孤独や貧困が充満した陰鬱な世界観は『タクシードライバー』だし、マレー(デ・ニーロ)のトーク番組は確信犯的に『キング・オブ・コメディ』の番組と似せてるし、ここまで来るとオマージュという域を超え、もはや「リメイク」と言ってもいいかもしれません(笑)。トッド・フィリップス監督、どんだけマーティン・スコセッシが好きなんだよ(^^;)

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なおマーティン・スコセッシ監督といえば、先日「マーベル映画は映画じゃない」と発言して物議を醸しましたが、2017年にワーナー・ブラザーズが『ジョーカー』の製作を発表した際に、実はスコセッシ監督もプロデューサーとして名を連ねていたんですよね。

その後、スタッフリストから名前は消えましたが、なぜワーナーがスコセッシ監督を『ジョーカー』のプロデューサーに起用したかについては、「ジョーカー役をスコセッシ作品常連のレオナルド・ディカプリオにオファーするつもりだったから」などと噂されています(真偽は不明)。

また、スコセッシ監督が過去にプロデューサーを務めた映画は、自身の監督作候補として企画していた作品も多いため、「もしかするとスコセッシは自分で『ジョーカー』を監督するつもりだったのでは…?」と推測する関係者もいるらしい(新作『アイリッシュマン』が決まったので『ジョーカー』を降板したという説もあり)。

もしそうだとすれば、先日の「マーベル映画は映画じゃない発言」の真意は「どいつもこいつも子供っぽいアメコミ映画ばかり作りやがって!」「俺が撮ったら、もっと現実社会をリアルに描いた高尚な大人のドラマを見せてやるのに!」というスコセッシ監督の”メッセージ”だったのかもしれませんねえ(笑)。

ジョーカー (2)

あと、本作で特筆すべきは何と言ってもホアキン・フェニックスの圧倒的な演技力と存在感でしょう。ジョーカーを象徴する特徴的な「笑い」の演技はもちろん、監督の指示で24キロもの過酷な減量を実行し、骨と皮だけの状態になって魅せるダンスの数々。

そして、痩せ衰えさせた体から発せられるえも言われぬおぞましさや、落ち窪んだ眼窩の奥から光を放つ狂気を帯びた鋭い眼差し、白いメイクが醸し出す不気味な表情など、まさに一挙手一投足のすべてが不穏で禍々しい。

どこを切り取っても目が離せないほど魅力的で、この映画はホアキンがいなければ成立しなかったと言っても過言ではないでしょう。そう、『ジョーカー』は紛うこと無き「ホアキン・フェニックスの映画」なのです。ホアキンすげえよ!

というわけで、本作は色々な意味で必見の映画なんですが、熱心なアメコミファンの中には批判的な声を上げる人も少なくないようで、「ジョーカーというキャラは理由もなく犯罪を犯す”純粋悪”が最大の魅力なのに、病気や貧困が闇堕ちの原因だったなんて、それじゃ普通の人間と変わらないだろ」「ジョーカーの存在を矮小化するな!」と猛反発している模様。

ただ、コミック版の『バットマン:キリングジョーク』に描かれている「ジョーカー誕生秘話」でも「奥さんと生まれてくる子供のためにやむを得ず犯罪に手を染めてしまった」となっているので、”ジョーカーは元々優しい人間だった”という設定もあるんですよね(ジョーカーの起源に関しては諸説あり)。

まあ個人的にはその辺はあまり気にしてないんですけど、『バットマン』のようなアメコミ映画を期待して観に行くと「えええ…」ってなる可能性が高いので、鑑賞の際はくれぐれもご注意くださいませ(^.^)


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