西城秀樹さんといえば、想い出よりも前に多くの方は何を思い浮かべるでしょうか。

私は何といってもカレーのCMと「ヤングマン YMCA」で、子供の頃テレビによく出ていた若く

爽やかで恰好いいお兄さんという感じでした。

 

秀樹さんがカレーのCMに出ていた1980年代初頭といえば、日本全体が豊かになり家庭の食卓に

カレーなど洋食が定着し始めていた頃でもあります。

CMソングで流れていた~リンゴとハチミツとろーりとけてる・・・ヒデキ・カンゲキ!~ という

決めゼリフが記憶に残っていますね。

同時に「わが家のカレーはバーモント!」という宣伝文句もしっかりと記憶に残ってしまったゆえ、

他社のカレーになぜか敵対心じみた変な感情を持ってしまう始末(笑)。

あの当時カレーといえば日本の食卓に進出した洋食の一番手だったためか、食品各社は消費者の心を

つかむべく、原材料にいろんなものを混ぜては味を競っていました。

ご存じの方もおられましょうが、牛乳、ヨーグルト、野菜果物ジュース、チーズ、赤ワインなどなど

これでもかと思うくらい種類が出たものです。

余談ですが、東北の方ではカレーに隠し味として牛乳と味噌を混ぜるところもあるそうです。

それでもやがて時代が下がると多種多様の混ぜ物入りより、やはりカレーは素朴で単純なものに限る

という本物指向に回帰してゆきました。

そして唯一残ったのが、秀樹さんの出ていたリンゴとハチミツでした。

還暦を記念した~ヒデキ・カンレキ!~ とかいう顔写真入りの珍企画?も登場しましたが、なぜか

一般には流通せずの非売品(笑)。

もし販売されていたら、世間やファンの間でちょっとした話題になったもしれませんね。

 

カレーもさることながら、芸能界に次々と新風を吹き込んだことでも有名であり功績も残しました。

それまで余り評価されなかった情熱を込めた絶唱系への挑戦、ヘリコプターに吊られたゴンドラから

ステージに登場するちょっと危険なコンサート演出も。

とにかくこれまで誰も挑戦はもとより、思いもしなかった斬新なパフォーマンスを展開し、芸能界や

音楽関係者はもとより世間をも驚かせました。

「これまで誰もしたことのないことをしてみたい!」という、若く情熱家だった秀樹さん自身の夢や

企画でもあったのでしょう。

まさしく挑戦者であり、開拓者であったと思えてなりません。

先述の「ヤングマン YMCA」を誤解されながらも必ずやヒットさせるべく、個人事務所の相方で

プロデューサーでもあった、あまがいりゅうじさんと二人三脚でレコード会社に乗り込んだ度胸並び

行動力はその源だったのでしょう。

~プライドを捨ててすぐにゆこうぜ~であり、同時に~若いうちはやりたいこと何でもできるのさ~

という曲詩を自らの行動で示したのです。

 

さらにファッションでも他の歌手より優れていたと思います。

一般的に男性歌手の場合、ステージでの服装(衣装)は地味で目立ちにくいものが多く、歌手本人も

そういった他者に気を配り無難なものを好むというのが相場とされています。

そんななか、楽曲の雰囲気や共演者の構成などに合わせ、いろんな衣装でステージに立っていたのが

印象的でした。

一見すれば掟破りの如き行為だったのかもしれませんが、あえて自分のこころのままをやったことは

挑戦であり冒険でもあったと思うのです。

もしかしたら出演者全体、並びステージの雰囲気などのバランスが取れなくて困ると苦言を呈された

こともあったかもしれませんが、それでも己の信念を貫いた勇気には敬意を表します。

何はともあれ、秀樹さんはどんな格好も似合う歌手で、スーツはもとよりタキシード、トレーナー、

ポロシャツ、ジャージー、アロハ、開襟シャツ、海軍士官の制服、有名企業の制服?、競技用水着、

はては体操用レオタード&バンダナ(いかにも80年代!)、などなど。

これほど何を着ても似合う歌手といえば、秀樹さんの他ではジュリー(沢田研二さん)くらいかな。

おまけに二人とも若い頃は色白でスラリとしてハンサム(今でいう甘いマスクのイケメン)。

それに比べて私など、何を着てどんな格好をしていようが全然サマにならず、せいぜいパジャマでも

着て寝ているのが一番お似合いだと周囲から言われるのがオチです(笑)。

その辺にスターと平民の埋め様のない差を感じたりなんかしてね。

 

とはいえ歌手以前に社会人として、大人の男(Gentleman)としてのおおらかさと包容力に

優れた人というのが最高最大の印象でした。

たとえファンでないどころか、アンチでさえ毛嫌いすることなくやさしく包み込んでしまう不思議な

魅力の持ち主ではなかったでしょうか。

加えて礼儀作法がきちんとしていたばかりか、売れて大スターになっても決して驕ることなくむしろ

新人がベテランを敬う様に腰の低い人と思う時もありました。

それにもまして、芸能人なら大なり小なりライバルの悪口を言ったり喧嘩など争いが付き物ですが、

そういったものが皆無だったそうです。

金銭や異性関係のスキャンダルも皆無で、清廉潔白だったといわれています。

子供だった私からすればまさに理想の大人像であり、将来目指したい大人の姿でもありましたね。

さらにコンサートやイベントなどでも、ファンを思いっきり楽しませてくれるサービス精神に溢れ、

楽屋裏で会ったファンの他愛ない話でも気さくに付きあったエピソードも数多くあったそうです。

サインといった形ある当たり前のやりとりではなく、たとえ一言でも話をしたり握手をしてもらった

ことの方が、後々ずっと記憶に残るのではないでしょうか。

普通ならタレントとファンの関係といえば、歌を聴いて応援することやサインをもらうことの他には

ほとんど接触としてありません。

アイドル・グループならファンクラブや親衛隊もありますが、時間的・空間的にもおのずと限られた

小さな関係に過ぎません。

あの頃は芸能界と一般社会との間に容易に越えられない高くて厳しい壁があり、それが良くも悪くも

スターがスターのままであり、私たちが夢と憧れを充分託せる環境を保存していたのかも。

最後は私が行ったコンサート、並び番組や著書などの想い出で締めくくろうと思います。